キャバ嬢やホステスなどの水商売をしている方の中には、給与所得者ではなく個人事業主として事業所得を得ているケースも少なくありません。その場合、原則として 税務署へ「開業届出書」を提出する必要があります。
開業届には開業日を記入する必要がありますが、開業日とは、本人が事業を開始したと認識する日を指します。ただし、故意に事実と異なる開業日を記載することは税務署への虚偽申告と見なされるリスクがあるため、避けるべきです。
なぜなら、事実と異なる日付を記載すると、税務署に対して不誠実な態度とみなされて税務調査で不利となったり、場合によっては節税効果の高い青色申告の承認が取り消されたりする可能性があるからです。
本記事では、水商売における開業届の必要性や開業日に嘘の日付を記入するリスクについて解説します。
ぜひこの記事を参考に、開業届について正しく理解し、水商売としての事業を継続させましょう。
水商売を始めるのに開業届は必要?

個人事業主が事業を開始する際には開業届の提出が必要となりますが、個人事業主として働くキャバ嬢やホステスも開業届の提出が必要なのでしょうか。
結論として、店側から受け取る収入が「事業所得」に該当する場合、開業届の提出が必要です。
ここからは、水商売をはじめる際の開業届について詳しく説明します。
そもそも開業届とは
そもそも開業届とは、個人事業主が事業を始めたことを税務署に届け出る書類を指し、正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。
一般的な会社に勤めている場合、給与から所得税が天引きされますが、個人事業主の場合は自分で所得税を計算し、確定申告を行う必要があります。
開業届の提出により、「個人事業主として所得税を納める」と税務署に知らせることになるのです。
開業届は、原則として開業日(事業を開始した日)から1ヶ月以内に、個人事業主本人が管轄の税務署へ提出する必要があります。なお、提出期限を過ぎても受理はしてもらえますが、なるべく早めの提出が推奨されます。
本業で水商売をはじめるなら開業届が必要
水商売を本業として始める場合、開業届の提出が必要となるケースが多いです。
開業届の提出は、所得税法および関連規則に基づき「事業所得」などが生じる場合に必要とされます。水商売であれば、雇用契約がなく、独立した形で収入を得る場合には「事業所得」に該当する可能性が高く、開業届の提出が求められます。
開業届は、原則として開業から1か月以内に提出することが望ましいとされています。
なお、店と雇用契約を結んでおり、給与所得を得ている場合や、副業で雑所得を得ている場合には開業届の提出が不要です。
水商売の開業届の書き方
開業届は、指定された様式に必要事項を記入し、税務署に提出しますが、開業届には、以下の項目を記入する必要があります。
- 提出先・提出日
- 納税地・住所
- 氏名・生年月日・個人番号
- 職業・屋号
- 届出の区分・所得の種類
- 事務所等を新設した日
- 開業に伴う届出書の提出の有無
- 事業の概要
- 給与等の支払の状況
水商売における開業届の書き方は以下を参考にしてください。
|
項目 |
内容 |
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提出先・提出日 |
・管轄の税務署名を記入 |
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納税地・住所 |
・納税地は、自宅住所、居所地、事業所等のいずれかを選択 |
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氏名・生年月日・個人番号 |
・氏名、生年月日、マイナンバーを記入 |
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職業・屋号 |
・職業欄に職種名を記入(ホステス、接客係 など) |
|
届出の区分・所得の種類 |
・「開業」にチェックする |
|
事務所等を新設した日 |
開業日を記入 |
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開業に伴う届出書の提出の有無 |
・青色申告を希望する場合、「青色申告承認申請書」を提出するため、「有」にチェック |
|
事業の概要 |
・実際の仕事内容や事業内容を詳しく記載し、事業の具体的な内容を明確にする |
|
給与等の支払の状況 |
ひとりで開業し、給与を支給する必要がない場合は記載の必要なし |
参考:国税庁|個人事業の開業・廃業等届出書 記載例
開業届を出し忘れたらどうする?
個人事業主の事業を開始した時期が曖昧で、開業届の提出を忘れてしまうこともあるでしょう。
開業届の提出が遅れてしまった場合でも、特にペナルティはありません。そのため、1ヶ月を過ぎていても後から申告をすれば受け付けてもらえます。
開業届を提出しなかったとしても罰則はありませんが、開業届を提出することで、青色申告承認申請を行えるようになり、青色申告特別控除などのメリットを受けられる可能性があります。
また、たとえ開業届を提出していなかったとしても、会社に属さず個人で事業を行う場合には自分で確定申告を行わなければなりません。
個人事業主の開業日の決め方
個人事業主の開業日は、「事業を開始した日」ですが、開業日の決め方に特に明確なルールはなく、一般的には以下を開業日とするケースが多いです。
- ・初めての売上を計上した日
- ・事務所を借りた日
- ・サービス提供を開始した日
- ・縁起の良い日
- ・開業届の提出日
- ・副業から本業へ移行するタイミング など
具体的にどのタイミングを事業を始めた日と判断するかは、事業主の捉え方によりますが、ある程度常識の範囲内で決定する必要があります。
開業日は税務上の手続きや、個人事業税の計算にも影響するため、実際に事業活動を開始した日よりも不自然に遅い日を記載することは避けましょう。
水商売で開業届を提出するメリット

キャバクラやクラブ、スナックなどのいわゆる水商売を本業として継続して行う場合、所得税法上の個人事業主に該当するため、原則として「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を税務署へ提出する必要があります。
前述したように、個人事業主が開業届を出さなくても大きなペナルティはありませんが、水商売の開業届を提出することで、以下のメリットがあります。
- ・青色申告による節税ができる
- ・屋号入りの銀行口座が開設できる
それぞれ詳しく説明しますので、開業届提出の必要性を考えてみましょう。
青色申告による節税ができる
水商売に限らず、個人事業としてお店を経営されている方は確定申告をする必要がありますが、確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2つの方法があり、開業届を提出する場合には青色申告の選択が可能です。青色申告を利用するには開業届に加えて「青色申告承認申請書」を所定の期限内に提出する必要があります。
青色申告を選択することで、次のようなメリットがあります。
- ・最大65万円の青色申告特別控除がある(複式簿記による帳簿付けが条件)
- ・赤字を最長3年間繰り越せる
- ・家族への給与を適切に経費計上できる
- ・30万円未満の少額減価償却資産を一括経費計上できる
最大の利点として、青色申告者の場合は青色申告特別控除と呼ばれる最大65万円の控除を受けられる点です。この控除によって所得金額を減らせるため、結果的に大きな節税効果が期待できます。
なお、最大65万円の控除を受けるには「複式簿記」と呼ばれる、白色申告よりも複雑な帳簿付けが必要です。
屋号入りの銀行口座が開設できる
個人事業主の場合、たとえお店の名前や事務所名があったとしても、事業用に使用する銀行口座は原則として個人名義です。しかし、開業届の提出時に屋号を登録すれば、「屋号+個人名」で口座開設できる場合があります。
屋号は、個人事業者が使用する商業上の名であり、屋号入りの銀行口座を持つことにより、経理作業の効率化にも繋がります。
ただし、銀行によっては屋号入りの口座に対応していないケースもあるので事前に金融機関へ確認すると安心です。
開業届に嘘の開業日を記入するリスク

開業届は、税務署に対して事業開始を知らせる大切な書類です。その内容を事実と異なる形で申請することは、信頼性を損ない、さまざまな不利益につながる可能性があります。
特に「開業日」を正しく申告しない場合には、以下のようなリスクが考えられます。
- ・青色申告の承認取消の可能性
- ・税務調査で不利になる可能性
- ・金融機関や取引先との信用問題
最悪の場合、事業を続けるのが困難になることがあるため、開業日は正しい日付を記載する必要があります。
ここでは、開業届に嘘の開業日を記入するリスクについて詳しく説明します。
青色申告の承認取消の可能性
青色申告は、正しい帳簿付けや期限内申告を行うことを前提に、税務上の優遇措置が受けられる制度です。白色申告に比べて手間が掛かりますが、さまざまな節税メリットがあります。
しかし、開業届の開業日を偽っていたことが発覚した場合、税務署から「適正な申告が行われていない」とみなされて青色申告の承認の取消や是正指導等の対象となる可能性があります。
また、一度取消となると、その後数年間青色申告の承認を得られないケースもあります。
税務調査で不利になる可能性
開業届に実際と異なる日付を記載すると、「無申告期間を隠そうとしたのではないか」と疑われることがあります。
その結果、税務調査で厳しく確認され、過少申告加算税や無申告加算税といったペナルティの対象となるリスクがあるのです。
また、悪質と判断されると重加算税が課されることもあるため、正確な日付を申告することが安心につながります。
参考:財務省|加算税制度の概要
金融機関や取引先との信用問題
開業日の虚偽申告は、金融金や取引先との信用問題に悪影響を及ぼす恐れもあります。
金融機関は融資審査の際に、開業届や確定申告書を基に事業の信頼性を確認します。その際に開業日に関する虚偽の情報も発覚する可能性があり、それによって金融機関からの融資審査で不利になるリスクがあるのです。
また、開業日を偽り、後に指摘を受けて訂正するようなことがあれば、取引先からの信用を損ない、事業関係に悪影響を及ぼす恐れもあるので注意が必要です。
一度「無責任」という印象がついてしまえば、信頼を取り戻すのは難しく、大きなビジネスチャンスを逃してしまうことにも繋がります。
開業日を間違えたらどうすれば良い?

開業日を事実と異なる日付で開業届に記載してしまった場合など、提出後に開業日を変更したいと思う人もいるでしょう。
結論として、開業届に記載した開業日については、一定の事情がある場合に、再提出や取り下げを通じて修正が認められることがあります。
ここからは、開業日の変更方法や注意点について説明します。
開業届の取り下げや再提出で変更可能
開業日の変更方法は以下の2通りです。
- ・開業届の再提出
- ・開業届の取り下げ(1ヶ月以内)
開業届は再提出が認められるため、開業日を訂正したい場合は、同じ内容で日付だけを変えて再提出すれば変更できます。
また、開業から1ヶ月以内の期限内であれば、一度提出した開業届の取り下げが認められるケースがあります。取り下げ後、開業日を新しく記載した開業届を提出しましょう。
ただし、開業届を繰り返し出し直すと、税務署から事情を確認される可能性があるため、開業日は慎重に検討したうえで届け出るようにしてください。なお、取り下げの可否は税務署判断となります。
開業日の変更には正当な理由が必要
合理的な理由がないまま開業日を変更すると、税務署から事情を確認される可能性があり、税務調査のリスクを高める恐れがあります。
そのため、「開業日を誤って認識してしまった」「事業内容の変更に伴い、開業日を再設定する必要がある」などのように、開業日の変更が認められる正当な理由で変更するようにしましょう。
また、青色申告の承認を得る目的だけで開業日を意図的に修正することは、税務署に認められないケースが多いため注意が必要です。
青色申告の承認申請期限を過ぎた場合は、その年は白色申告を選択する必要があります。
青色申告の場合は事業開始から2ヶ月以内の提出が必須
先述した通り、開業届を再提出することで開業日の訂正が可能となりますが、青色申告承認申請書の提出期限は、原則として事業開始から2ヶ月以内と定められています。
開業日を遡って変更すると、この期限に影響する可能性があるため注意しましょう。
青色申告の恩恵を受けたい方で、開業届の提出し忘れに気付いた場合は、早めに税理士などに相談するのがおすすめです。
参考:国税庁|青色申告制度
開業届の開業日は嘘偽りなく記入しよう

キャバ嬢やホステスが個人事業主として水商売をはじめる際に、開業届の提出が求められています。
開業届には「開業日」を記入する欄がありますが、実際と異なる日付を記載すると、税務署に対して虚偽の申告となり、青色申告の承認を受けられない、税務署から指摘を受けるなどのリスクにつながります。
特に、無申告期間を隠して税負担を回避しようと虚偽の日付を記載した場合には、悪質と判断される可能性もあるため、必ず実際の開業日を正直に記入しましょう。
ぜひ、この記事を参考に開業届の必要性や開業日の決定方法について考えていただけたら幸いです。
また、開業日を失念してしまった場合や記入に不安がある場合、あるいは青色申告による節税メリットを確実に受けたい場合は、信頼できる税理士へ相談することをおすすめします。
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