デリヘルやソープ、ヘルスなどの性産業は、「風営法」という法律で開業や運営の際の細かなルールが定められています。風俗業と聞くと、性産業を中心としたお店をイメージするかもしれませんが、風営法では性産業も含めたさまざまな業種を風俗業と位置付けています。
今回は、性産業に関わる方は知っておきたい風営法について詳しく解説します。
風営法の歴史と性産業
風営法の正式名称は「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」です。
風営法は1948年に「風俗営業取締法」として、制定されました。その後、数回にわたる法改正を経て、1984年に多様化する性産業の営業形態に合わせる形に大幅な改正が行われ、現在の名称である風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に名称も変更されました。この改正により性産業を含む風俗業を規定する風営法は「取締」から「規制」を行う法律と用いられる法律が変わりました。しかしながら、法改正によって風俗業の取り締まりがなくなったわけではありません。風営法に違反した場合には、罰則も用意されています。
また、1998年の風営法の改正では性産業に関わる営業形態が見直され、店舗を構えて営業する性産業を「店舗型性風俗特殊営業」、店舗を持たない営業形態の性産業を「無店舗型性風俗特殊営業」、インターネットによる映像を用いた性産業を「映像送信型性風俗特殊営業」と区分されました。
2001年の風営法の改正では性風俗特殊営業の名称が「性風俗関連特殊営業」に変更され、新たにテレクラやツーショットダイヤル等の電話を利用した性産業が「店舗型電話異性紹介営業」、「無店舗型電話異性紹介営業」として規制の対象に加えられました。
さらに2016年には、ダンスクラブ等の営業を規定する「特定遊興飲食店営業」が対象に加えられています。
風営法の概要
風営法では以下の業種を風俗業と規定しており、デリヘルやソープ、ヘルスなどの性産業は「性風俗関連特殊営業」に区分されます。性風俗関連特殊営業は、その営業スタイルの違いによってさらに細かく分けられています。
風営法において風俗業と規定される業種
風営法では、キャバクラやホストクラブ、喫茶店、パチンコ店、ゲームセンターなども規制の対象となっています。
<風俗営業>
1号営業:キャバクラ、ホストクラブなど
2号営業:喫茶店、バーなど
3号営業:カップル喫茶など
4号営業:パチンコ屋、マージャン店など
5号営業:ゲームセンターなど
<性風俗等特殊営業>
〇店舗型性風俗等特殊営業(店舗を構えて営業するもの)
1号営業:ソープなど
2号営業:ヘルスなど
3号営業:ストリップ劇場、個室ビデオなど
4号営業:ラブホテル、モーテルなど
5号営業:アダルトショップなど
6号営業:出会い喫茶、ハプニングバーなど
〇無店舗型性風俗特殊営業
1号営業:デリヘルなど
2号営業:アダルトビデオの通信販売など
〇映像送信型性風俗特殊営業
アダルトサイトなど
〇電話異性紹介営業
店舗型電話異性紹介営業:入店型のテレクラなど
無店舗型電話異性紹介営業:ツーショットダイヤル、携帯電話を利用したテレクラなど
デリヘル、ソープなど性産業の店を開業するためには
デリヘルやソープ、ヘルスなどの性風俗関連特殊営業に該当する店を開業する際には、店を開業する場所の公安委員会への「営業開始届出書」と決められた添付書類の提出が必要になります。営業開始届出書に記載する内容や添付すべき書類は、どの営業に該当するかによって異なります。書類によっては店舗の測量が必要になるものもあり、個人で書類を作成することは難しいのが現状です。
性風俗関連特殊営業に規定される店を開業したいと考えている場合には、行政書士に書類の作成を依頼することをおすすめします。税理士は行政書士と提携していることが多く、財務や会計面を担当する税理士に行政書士の紹介を依頼すれば、性産業の開業手続きについて詳しい行政書士を紹介してもらえるはずです。
性産業の店が風営法に違反したら?
性産業の店が風営法に違反した場合には、違反内容に合わせて以下のような処罰が与えられます。
・禁止区域内で店舗型性風俗特殊営業等を営んだ場合
店舗型性風俗特殊営業の営業禁止区域内でヘルスやソープなどの店舗型性風俗特殊営業を営業した場合には、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、または懲役と罰金の両方が科せられます。さらに届出を行っていた場合には届出が取り消され、その後5年間は風俗業の新たな届出を行うことができなくなります。
・無届営業をした場合
性風俗関連特殊営業を行う際には、公安委員会への営業開始届出書の提出が必要です。しかし、この届出を行わずに性産業の店を営業していた場合には、6か月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、または懲役と罰金の両方が科せられます。
・名義貸しをした場合
性風俗関連特殊営業の営業開始届出書を申請した人が自分名義で届出を行っただけで、実際には別の人物が経営を行っていた場合には、名義貸しをしたと判断されます。この場合は、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、または懲役と罰金の両方が科せられます。
さらに届出を行っていた場合には届出が取り消され、その後5年間は風俗業の新たな届出を行うことができなくなります。
・18歳未満の者を客に接する業務に従事させた場合
ソープやヘルスなどの店舗型性風俗特殊営業において、18歳未満の年少者を客に接する業務に従事させた場合は、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、または懲役と罰金の両方が科せられます。
さらに届出を行っていた場合には届出が取り消され、その後5年間は風俗業の新たな届出を行うことができなくなります。
まとめ
風営法は、風俗営業を適正に運営するためのルールや規制を定めた法律です。風営法では性風俗産業だけでなく、キャバクラやホストクラブ、パチンコ屋、ゲームセンターなど幅広い業種を風俗営業として規定しています。その中で、性産業は性風俗特殊営業に分類されています。
性風俗特殊営業を営む際には都道府県の公安委員会に開業届出書と必要書類の提出が義務付けられており、風営法のルールに則った営業を行う必要があります。万が一、風営法に違反することがあれば、重い処罰が下されます。知らずに風営法に違反し、処罰を受ける前に性産業に詳しい税理士に相談して専門の行政書士を紹介してもらうとよいでしょう。届出書の書き方から経営時の注意点など、細かいアドバイスを受けられるはずです。