住民税非課税世帯とは、住民税の所得割と均等割の両方が課税されない世帯のことを指します。住民税非課税世帯に該当すれば、住民税がかからない、国民健康保険料などの支払いが免除されるといった優遇措置が受けられるため、経済的負担が軽くなります。
この記事では個人事業主が住民税非課税世帯の対象になる場合の要件や優遇措置について解説します。



住民税とは?

簡単に説明すると、ご自身が住んでいる町に納める税金のことを言います。納められた税金は、教育や福祉、上下水道やごみ回収処理といった私たちの生活を支える行政サービスに利用されています。
住民税は、1月1日時点で住所のある自治体に納める必要があります。
住民税の税率は、地方税法で定められており、全国一律で10%(道府県民税・都民税4%+区市町村民税6%の合計10%)とされています。
住民税は、所得金額にかかわらず定額を負担する「均等割」と、所得金額に応じて負担する「所得割」の2段階構成になっています。

地方税法 第三十五条(道府県民税の所得割の税率)
所得割の額は、課税総所得金額、課税退職所得金額及び課税山林所得金額の合計額に、百分の四の標準税率によつて定める率を乗じて得た金額とする。この場合において、当該定める率は、一の率でなければならない。

地方税法 第三百十四条の三(市町村民税の所得割の税率)
所得割の額は、課税総所得金額、課税退職所得金額及び課税山林所得金額の合計額に、百分の六の標準税率によつて定める率を乗じて得た金額とする。この場合において、当該定める率は、一の率でなければならない。

地方税法上、道府県民税(都民税)と市町村民税(特別区民税)は別の条文として記載されています。道府県民税(都民税)は4%、市町村民税(特別区民税)は6%、よって、合計10%が住民税の税率となります。

住民税の均等割と所得割について

住民税は「均等割」と「所得割」の2段階構成となっています。それぞれについて解説していきます。

均等割とは

均等割は収入・所得の額に関係なく、ある一定の所得がある人全員が負担する住民税です。
均等割の額は自治体によって異なりますが、5,000円(道府県民税が1,500円、市町村民税が3,500円)と決められております。
東日本大震災を受けて、都道府県や市町村が実施する防災費用等を確保するため、2014年度から2023年度までの10年間、道府県民税・市町村民税ともに500円ずつ引き上げられています。
また、2024年度からは均等割に年1,000円の森林環境税を加算して徴収することが決定しています。

所得割とは

所得割は、前年の所得金額に応じて税率をかけて算出される住民税です。

(前年の所得金額-所得控除額)× 税率-税額控除額-調整控除額 = 所得割額(※1,000円未満は切捨)

住民税はどういう場合に非課税になるの?

住民税は、所得額や扶養親族の有無、または本人が未成年者、障害者、ひとり親、寡婦であるなどの条件によって課税・非課税が決定することになっています。

●非課税は次の人が該当します。
(1)その年の1月1日現在で、生活保護法による生活扶助を受けている人。
(2)障害者、未成年者、ひとり親、寡婦(夫)の人で、前年の合計所得が135万円以下(給与収入なら204万4千円未満)、(令和2年度までは125万円以下)の人。
(3)前年の合計所得が一定の所得以下の人。
35万円×(本人+被扶養者の人数)+21万円(21万円は被扶養者がいる場合に加算)+10万円(令和3年度から加算)
なお、所得割の非課税の場合は、次の所得以下の人。
35万円×(本人+被扶養者の人数)+32万円(32万円は被扶養者がいる場合に加算)+10万円(令和3年度から加算)

●前年の収入が以下より少ない人(合計所得が45万円以下)
(1)アルバイトやパートの給与収入が100万円以下
(2)65歳以上で年金受給のみの人は、年金収入が155万円以下
(3)65歳未満で年金受給のみの人は、年金収入が105万円以下
(4)不動産収入等所得がある人は、収入から必要経費を引き、合計所得が45万円以下

参考:港区

所得割と均等割が非課税になる要件のうち、前年の合計所得金額に関する要件では基準額が自治体によって異なる場合があり、住民税非課税世帯になる年収の目安は、住んでいる自治体がどこなのかによって変わる場合があります。

住民税非課税かどうかは前年の所得判定

住民税非課税世帯かどうかは、1月1日現在住所のある市区町村において、前年の所得を基準に判定されます。昨年から所得が減り、現在の所得が少ないから住民税非課税世帯になるのではありません。
扶養や所得控除などが何もない状況で、給与収入であれば、給与収入100万円以下になり、事業所得であれば、所得金額45万円以下となります。
また、今年は仕事を辞めて収入がない場合でも、前年に所得があれば、住民税の納付が必要になる場合がありますので、覚えておきましょう。

まとめ

住民税を非課税にしたいというお問い合わせをいただくことが多くあります。
住民税が非課税になるということは、稼ぐお金も減ることになります。お金は稼いだけど、親や旦那様にバレたくないからどうにかしたいということは難しいのが現状です。
バレたくないからと無申告のままでいると、税務調査が入ったとき、何の仕事をしていたかなどすべての内容を洗いざらい話をしなければならなくなる危険性があります。
稼いでしまった場合は適正に確定申告を行い、納税を行うようにしましょう。
確定申告の方法についてご相談がございましたら、税理士法人松本までお気軽にご相談ください。