
キャバクラやホストクラブ、ラウンジなどで水商売といわれる夜職で働いている人の中には、自分で確定申告を行う必要がある人もいます。どのようなケースに該当する場合、確定申告が必要になるのでしょうか。
今回は、夜職で働いている人の中で確定申告が必要・不要な人の特徴と確定申告を行わなかった場合のリスク、確定申告を行うことによって得られるメリットについてご紹介します。
さらに、夜職で確定申告しないとバレるケースや確定申告のやり方も幅広く解説しているので、ぜひ参考にしてください。
これから確定申告が必要な方は税理士法人松本までお気軽にご相談ください。
確定申告とは
確定申告とは、1月から12月までの1年間に得た所得を税務署に申告し、所得に応じて定められた税金を支払う行為のことです。源泉徴収や予定納税によって納めた税額が実際の税額より多く支払い過ぎた場合は、確定申告することで差額が還付されます。一方で、納めた税額が少なかった場合は、不足分を追加で納税する必要があります。
また、年末調整で受けられない控除を受けるためにも、確定申告が必要です。例えば、住宅ローン控除を受けるためには、初年度に限り確定申告で控除の適用手続きが必要です。
夜職が本業で確定申告が必要な人の特徴
・業務委託として夜職をしている
・業務委託で、必要経費を収入から差し引いても年間所得が48万円を超える
・お店と雇用契約を結んで給与を受け取っており、その年間給与が2,000万円を超える
お店と雇用契約を結ばず、業務委託として働いている場合は、収入額や経費、そのほかお金に関するすべての管理を自分でする必要があります。そして、1年間で必要経費を差し引いてもなお48万円を超える所得がある場合は、確定申告が必要です。
また、お店と雇用契約を結んでいる場合でも、給与が年間2,000万円を超えたら年末調整では対応できないため、確定申告が必要になります。
夜職が本業で確定申告が不要な人の特徴
・給与を受け取っており、お店が年末調整をしてくれる
・業務委託で、必要経費を収入から差し引くと年間所得が48万円以下
・夜職の収入から必要経費を差し引いたらマイナスになる
昼職の会社員と同じように、お店の従業員として働いている夜職の人は、店側が1年間に支払った給与の額を計算し、年末調整を行っています。そのため、個人が所得額を申告するために確定申告を行う必要はありません。
また、業務委託で夜職をしており、収入から必要経費を差し引くと年間所得が48万円以下または赤字になってしまう場合は確定申告が不要です。
夜職で副業で確定申告が必要な人と不要な人
最近では本業を別に持ち、副業としてキャバクラやホストクラブ、スナックなどの夜職で働いている方も増えています。本業で得た給与に関しては、会社側が年末調整を行っているため個人が確定申告をする必要はありません。しかし、副業としての所得がある場合、副業で得た所得についての確定申告が必要なケースと不要なケースがあります。
夜職の副業で確定申告が必要なケース
副業としての年間所得が20万円を超えた場合には、副業の所得について確定申告を行う必要があります。
夜職の副業で確定申告が不要なケース
副業としての年間所得が20万円以下であった場合には、副業の所得について確定申告を行う必要はありません。
ただし、副業で1円でも所得が発生する場合は、住民税の申告は必要となるので、忘れずに申告しましょう。
夜職で確定申告するメリット
確定申告と聞くと、なんとなく難しそうなイメージや手間がかかりそうなイメージがあり、手続きに躊躇してしまう方もいるかもしれません。しかし、夜職で働く方は確定申告によってメリットを得られる可能性もあるのです。
確定申告を行う前に、まずは相談してみたいという方は税理士法人松本までお気軽にご相談ください。
税金が還付される可能性がある
お店から支払われる報酬から所得税が源泉徴収されている場合、毎月10.21%が所得税として天引きされています。しかし、年間の所得金額が確定したときに、本来納めるべき税金よりも多く支払い過ぎている場合に確定申告を行うと、払い過ぎていた税金が返金(還付)されます。
経費として計上できる費用がある
確定申告では、仕事に必要な出費を経費として計上できます。水商売の場合は、以下のような出費が経費として認められています。
・仕事用の衣装代
・ヘアメイク代
・仕事専用に使っている携帯電話の料金
・仕事帰りに公共交通機関がない場合のタクシー代
経費として計上できる金額は収入から差し引くことができるため、所得額が下がり、所得税も少なくなる可能性があります。
青色申告または白色申告の控除が利用できる
個人事業主として夜職をしている場合は、確定申告することで「青色申告」または「白色申告」の控除が利用できます。
それぞれの控除額や特徴は以下のとおりです。
青色申告 | 白色申告 | |
概要 | 複式簿記による記帳が条件。最大65万円の控除が受けられる申告方法 | 簡易簿記による申告方法で、控除額は10万円 |
メリット | ・最大65万円の所得控除
・赤字の繰越が最大3年可能 ・家族への給与を必要経費にできる |
・記帳や申告手続きが比較的簡単
・事前申請が不要(開業届のみで可) |
デメリット | ・複式簿記による記帳が必要で手間がかかる
・事前に「青色申告承認申請書」の提出が必要 |
・控除額が10万円と少ない
・赤字の繰越や特典がない |
申請書提出期限 | ・業務を開始した日から2か月以内(※1)
または ・青色申告の承認を受けようとする年の3月15日まで |
なし(開業届のみで可) |
※1 その年の1月16日以後に新規に業務を開始した場合
青色申告控除のほうが控除額が多いものの、記帳が複雑で提出書類の作成に手間がかかります。一方で、白色申告控除は家計簿のような記帳で問題ないため、手続きが比較的簡単です。しかし青色申告ほどの控除額はありません。そのため、ライフスタイルや収入状況に応じて、どちらが合っているか決めると良いでしょう。
ただし、この控除を利用するには、「開業届」の提出が必要です。特に青色申告を行う場合は、開業届と同時に「青色申告承認申請書」も税務署に提出する必要があります。青色申告を受けるためには、毎年申請の期限が定められているため、計画的に「青色申告承認申請書」を提出するようにしましょう。
夜職で確定申告するデメリット
確定申告は、一定の所得を得ている人であれば行わなければならない手続きですが、夜職で働いている人が確定申告をすることで、勤務環境に影響するデメリットが生じることもあります。
昼職の会社に副業の夜職がバレる可能性がある
夜職で得た所得を確定申告すると、その情報をもとに住民税の計算がされます。住民税は所得税と同じように給与から天引き(特別徴収)されるため、勤めている昼職の会社に「住民税額の決定通知書」が送付されるのが一般的です。その際、会社が把握している給与額に対して、住民税の金額が明らかに多い場合、「ほかに収入があるのでは?」と、副業が疑われる可能性があります。
ただし、住民税決定通知書に副業の具体的な内容(職種や収入の内訳)は記載されていません。そのため、仮に収入のことを聞かれた場合でも、「仮想通貨やFXで利益が出た」など、ある程度の説明でごまかすことは可能です。
確定申告書を作成する手間がかかる
夜職の人に限らず、個人事業主や対象者であれば、確定申告を行うために確定申告書を自分で作成するという手間がかかります。国税庁のウェブサイトには、「確定申告書作成コーナー」が用意されており、パソコンやスマートフォンを利用してインターネット上で申告書類を作成できます。確定申告に慣れている人であれば、戸惑うことなく書類を作成できる場合もありますが、初めての確定申告の場合は、「どこまで経費が認められるのか」、「書き方は正しいのか」などの判断に迷うケースも出てくるでしょう。
確定申告に不安を感じているようであれば、税理士に相談することをおすすめします。経費として計上できる支出についてのアドバイスを受けることもできるため、節税につながる可能性もあります。
夜職で確定申告しないとバレる?
夜職の場合、昼職と異なり、お店側と正式な雇用契約を交わしていない人や、給与が手渡しであることが多いため、「確定申告をしなくてもバレにくい」といわれることがあります。
しかし、実際には税務署の調査能力は非常に高く、さまざまな手段を用いて所得の有無を確認します。たとえ雇用契約書や銀行口座に取引の記録が残っていなくても、SNSの投稿内容や日常的に身につけている高価な装飾品、所有している家や車などの生活水準から、収入との不一致が見抜かれることも少なくありません。
また、知人や関係者による税務署への「密告(情報提供)」で発覚するケースもあります。ほかにも、夜職の場合は、常連客からマンションや車などの高額なプレゼントを受け取ることもあるでしょう。しかし、これらは「贈与税」といって課税対象になり、申告と納税が必要になります。自分で申告していなくても、プレゼントしてくれた常連客から情報が漏れる可能性が高く、「確定申告」と「贈与税」の2つの無申告が問題になる恐れがあるため、注意が必要です。
このように、夜職で確定申告をしていないことは、思わぬところからバレる可能性があります。リスクを避け、安心して働き続けるためにも、期限内にきちんと申告を行うことをおすすめします。
夜職で確定申告を行わなかった場合のリスク
日本国憲法において納税は国民の義務と定められており、正しく所得を申告して納税を行わなかった場合は、「無申告」という扱いになります。無申告の場合、ペナルティとして「無申告加算税」や「延滞税」が追徴課税されることとなります。
・無申告加算税:確定申告などを申告期限内に申告しなかった際に課される加算税。税務調査前に自主的に期限後申告した場合と、税務調査の事前通知が届いてから期限後申告した場合で課税割合が異なる。
・延滞税:納付期限を過ぎた場合に発生する「利息」。そのため、加算税と加えて延滞税もかかるため、本来納める税金よりも多くなる。
また、意図的に申告を行わなかった場合など悪質性が高く、無申告の金額が大きい場合には、脱税の罪で刑事裁判に発展するケースもあります。確定申告が必要なケースに該当する場合は、必ず確定申告を行うようにしましょう。
夜職の確定申告のやり方
確定申告は1年間の所得を税務署に提出するため、1月1日~12月31日までの情報が必要になります。
確定申告の主な申告期限は2月中旬~3月中旬です。2025年の場合は2月17日~3月17日でした。
主な確定申告のやり方は以下のとおりです。
1. 必要な書類を用意する
2. 確定申告書に記入する
3. 確定申告書を管轄の税務署に提出する
それぞれ順を追って解説します。
1. 確定申告に必要な書類を用意する
以下の5つの項目で自身に必要と思われる書類を事前に用意しましょう。事前に用意することで、確定申告書への記入がスムーズに進みます。
・収入に関する書類:売上請求書、支払い通知書や明細書、源泉徴収票、通帳の入金記録、現金受け取りの場合は領収書の控えなど
・経費に関する書類:領収書(衣装代、ヘアセット代、交通費、接待費など)、クレジットカードの利用明細書、請求書、契約書など
・所得に関する書類:生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書、社会保険料の納付証明書、医療費控除の明細書など
・そのほかの所得に関する書類:不動産所得がある場合の賃貸契約書や入金記録など
・本人確認書類:マイナンバー、運転免許証、パスポートなど
2. 確定申告書に記入する
確定申告に必要な申告書類は、次の方法で入手できます。
・税務署で直接受け取る
・国税庁のウェブサイトからダウンロードする
・国税庁の「確定申告書等作成コーナー」でオンライン作成する
この「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば、必要な情報を入力するだけで申告書の自動作成・印刷やe-Taxでの電子申告も可能です。e-Taxを利用するにはマイナンバーカードが必要になるので、まだ持っていない方は作成しておきましょう。
確定申告書の書き方は以下のとおりに記入していくのが一般的です。
1. 青色申告決算書または収支内訳書を作成:1年間の所得金額を確定できる
2. 所得税及び復興特別所得税の確定申告書(第二表)を記入:各種所得の内訳や控除の内容などを記載
3. 所得税及び復興特別所得税の確定申告書(第一表)を記入:年間の所得・税額・還付金額などの最終的な集計を記載
青色申告決算書や収支内訳書を作成することで所得金額が確定できるので、最初に記入する必要があります。
また、所得税及び復興特別所得税の確定申告書は第二表から記入を始めるので間違えないようにしましょう。
3. 確定申告書を管轄の税務署に提出する
確定申告書は主に3つの方法で税務署に提出できます。
1. 確定申告書を管轄の税務署に直接持参する
2. 確定申告書を管轄の税務署に郵送する
3. e-Taxを利用して電子申告する
確定申告書を郵送で提出する場合は、「郵便物(第一種郵便物)」または「信書便物」として送る必要があります。また、電子申請する場合は、最初からサイト上で入力できる国税庁の「確定申告書等作成コーナー」の利用がおすすめです。
確定申告は何度経験しても、「経費の分類や書き方が難しい」と感じる方が多いものです。そのため、税理士のアドバイスを受けながら、申告書を作成することで、正確で安心な申告につながります。
また、確定申告に税理士の署名があるだけで、税務署から信頼性が高いと判断され、税務調査の対象となりにくい傾向にあります。
不安や疑問がある方は、ぜひ気軽に夜職専門税理士の税理士法人松本まで相談してください。
参照:国税庁|【申告書の提出】|Q19 作成した申告書は税務署に郵送して提出することもできるのですか。
まとめ
キャバクラやホストクラブ、ラウンジなど夜職のお店で働く人の中には、確定申告が必要な人、確定申告が不要な人がいます。たとえ源泉徴収をされている場合でも、本業としてお店と雇用契約を結んで夜職をしていない場合は、年末調整をしてくれないお店は多くあります。そのため、自分が年末調整の対象となっているかどうかを、事前に確認することが大切です。お店側が年末調整をしてくれない場合は、自分で確定申告を行う必要があります。
ご自身が確定申告の必要な人に該当している場合、無申告のままでいると、より多くの税金の納付が必要になり、場合によっては刑事告発されるなどのリスクが生じます。
確定申告が必要なケースに当てはまっているようであれば、必ず確定申告を行うようにしましょう。