ホステスの収入が「報酬」なのか「給与」なのか、その違いがわからずに「大きな差はないのでは?」と考え、曖昧なままにしている方も少なくありません。
しかし実際には、「報酬」と「給与」では法律上・税務上の取り扱いが大きく異なり、将来的なリスクに直結する可能性があります。
本記事では、ホステスの収入における「報酬」と「給与」の違い、収入の仕組み、注意すべきポイントについてわかりやすく解説します。
思わぬトラブルや税務上の不利益を避けたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
ホステスは「報酬」扱いか「給与」扱いか
ホステスの収入は、働き方や契約形態によって「報酬」または「給与」に分かれます。
キャバクラや会員制ラウンジで歩合制で働く場合
店舗に雇用されるのではなく、業務委託契約に近い形で働く場合には「報酬」として支払われることが一般的です。
指名料や同伴料などのバックを含む歩合制が中心で、支払い時には10.21%の源泉徴収が行われます。
これは事業所得になるため、自身で確定申告を行う必要があります。
高級クラブなどで雇用契約を結んでいる場合
店舗と正式に雇用契約を締結し、時給や月給が支払われているケースでは「給与」として扱われます。
この場合、給与所得となり、源泉徴収や年末調整の対象です。
事業主側の注意点
ホステスに報酬を支払う事業者側にとっても、契約形態や支払い方法によって税務上の取り扱いが異なるため、適切な処理が求められます。
特に注意すべきポイントは以下の2点です。
【源泉徴収の種類】
ホステスへの支払いは、「給与所得」か「雑所得・事業所得」かで源泉徴収の取り扱いが変わります。
・給与所得に該当する場合:店舗との雇用契約に基づく支払いは「給与」として扱われ、給与所得に係る源泉徴収の方法で税額を計算する
・給与所得に該当しない場合:業務委託契約や歩合制で支払われるものは「報酬」として扱われ、報酬に係る源泉徴収(通常10.21%)を行う
【消費税の仕入税額控除の対象かどうか】
ホステスへの支払いが、消費税の課税対象になるかどうかも、契約形態によって異なります。
・給与所得に該当する場合:消費税の課税対象外であり、仕入税額控除の対象にもなりません
・給与所得に該当しない場合:報酬(事業所得に該当)として支払う場合は消費税の課税対象となり、支払う側は仕入税額控除の対象にできます
水商売関連の業種は人件費割合が高く、支払いの区分が消費税計算に大きな影響を与えます。
さらに、令和5年10月からのインボイス制度では、インボイス発行事業者に登録していないホステスへの支払いは、原則として仕入税額控除の対象にできないため、注意が必要です(2029年9月までの経過措置あり)。
「報酬」と「給与」の定義と違い
そもそも「報酬」と「給与」自体の違いがよくわかっていない方も多いでしょう。
報酬とは、業務委託や請負契約に基づき、歩合制や出来高払いで支払われるものです。こちらは「給与所得」ではなく、「事業所得」または「雑所得」に分類されることが多く、支払いの際には報酬としての源泉徴収(通常10.21%)が行われます。労働基準法の適用対象外であり、契約上は個人事業主と同じ立場です。
一方で給与とは、店舗との雇用契約に基づき、固定給や時給として支払われるものです。法律上は「給与所得」に分類され、所得税は給与所得として源泉徴収の対象となります。雇用関係があるため、労働基準法の保護も受けられます。
つまり、「報酬」は業務委託契約に基づく成果の対価、「給与」は雇用契約に基づく労働の対価という点が大きな違いです。
この区分が、税金や社会保険の取り扱いに直結します。
ホステスの収入の仕組み
ホステスの収入は、単純な時給制だけでなく、さまざまな要素で構成されています。
主な内訳は以下のとおりです。
・基本給(時給制・日給制など):出勤時間や日数に応じて支払われる固定的な部分。高級クラブなどでは「日給制」、キャバクラでは「時給制」が一般的
・同伴、ドリンク、指名などのバック:同伴・ドリンク・指名などには追加報酬(バック)がある
・歩合給やインセンティブ:売上や指名数に応じて支払われる出来高報酬。一定の売上ノルマを超えた際に支給される「ボーナス」的な性質を持つ場合もある
・引かれもの:ドレスやヘアセットなどの必要経費、源泉徴収など
このように、「基本給+バック+インセンティブ-引かれもの=手取り」という仕組みになっています。
税金や社会保険の違い
報酬か給与かによって、税金や社会保険の扱いには大きな違いがあります。
ここでは、それぞれの場合における税金の取り扱いと、社会保険制度上の違いについて解説します。
報酬の場合
ホステスの収入が「報酬」として扱われる場合、給与所得とは異なる税務処理が必要です。
報酬は、所得税法に基づいて支払う側が10.21%の源泉徴収を行います。
たとえば10万円の報酬を受け取る場合、実際の手取りは約9万円となり、残りの1万円強が源泉徴収税として差し引かれます。
ただし、これはあくまで概算の前払いにすぎず、最終的な納税額はホステス本人が確定申告を行って確定させなければなりません。
年間の所得額や必要経費を計算したうえで、差額があれば追加納付や還付が行われます。
この仕組みにより、報酬として働くホステスは「自分で帳簿をつけ、毎年必ず確定申告を行う必要がある」という点が大きな特徴です。
給与所得に比べて手間はかかりますが、経費を計上できるため節税の余地がある点はメリットといえるでしょう。
給与所得の場合
ホステスの収入が「給与所得」として扱われる場合、税務処理の基本はほかの一般的な会社員と同じです。
給与は支払う店舗側が源泉徴収を行い、毎月の給与から所得税を差し引きます。
そのため、ホステス本人が毎月自分で税金を計算する必要はありません。
また、1年間の収入や控除額をまとめて精算する「年末調整」も店舗側が行うのが基本です。
したがって、給与所得者の場合、原則として自ら確定申告を行う必要はなく、税金面での手間が少ないというメリットがあります。
ただし、給与以外に副収入がある場合や医療費控除などを受けたい場合は、別途確定申告を行う必要があります。
また、給与所得の場合は必要経費を計上できず、給与所得控除しか適用されません。
社会保険については、雇用契約に基づいて働いている場合には加入義務があり、厚生年金や健康保険に加入できる点は安心材料といえるでしょう。
社会保険の加入有無
社会保険についても、収入が「給与」か「報酬」かで大きく扱いが変わります。
給与所得として働く場合、事業主には従業員を社会保険に加入させる義務があるため、健康保険や厚生年金に加入でき、将来的な年金や医療制度の面で保障が手厚くなります。
一方、報酬として働く場合は、個人事業主的な立場となるため、原則として社会保険に加入する義務はありません。
この場合、自ら国民健康保険や国民年金に加入する必要があります。
そのため、給与扱いの場合に比べると社会保障面が手薄になり、不安を感じる人も少なくありません。
特に水商売業界では歩合制・報酬扱いで働くケースが多いため、将来の年金受給額や病気・ケガの際の保障に影響する可能性は高いでしょう。
自身で計画的に貯金をしたり、NISAやiDeCoで老後の資産を増やしたり、民間の保険を上手に活用するなどして対策をしなければいけません。
収入の多さだけでなく、長期的な生活設計を考慮して働き方を選ぶことが重要といえるでしょう。
ホステスが注意すべきポイント4つ
ホステスが収入で注意すべきポイントを大きく4つに分けて紹介します。
給与か報酬かによって確定申告の必要性が変わる
ホステスの収入は、契約形態によって「給与」か「報酬」かに分かれ、それにより確定申告の必要性が変わってきます。
給与として受け取っている場合、原則として店舗側が源泉徴収や年末調整を行うため、ホステス本人が確定申告をする必要はありません。
ただし、副業収入が20万円を超える場合や医療費控除、住宅ローン控除を受けたい場合などは、給与所得者であっても申告が必要になります。
一方で、報酬として受け取っている場合は必ず確定申告が必要です。
支払い時に10.21%が源泉徴収されますが、これはあくまで仮の税額であり、実際の所得に応じて税額を再計算しなければなりません。
そのため、報酬を受け取っているホステスは、毎年の確定申告を怠ると脱税扱いとなり、延滞税や加算税などのペナルティが科されるリスクがあります。
手取り額だけで判断せず、源泉徴収や控除も考慮する
ホステスの中には、「月々の手取り額」だけを基準に収入を判断してしまう人も少なくありません。
しかし、税金の仕組みを理解せずにいると、実際の負担額を見誤ることになります。
たとえば、給与として働く場合は収入から源泉徴収や社会保険料などの天引きがあるため、想定より手取りが少なく感じることがあるでしょう。
一方、報酬として働く場合は、受け取った金額から10.21%が源泉徴収されます。
しかし、確定申告で追加納税が必要になるケースがあるうえ、その手取りから国民健康保険や国民年金などの社会保険料を支払う必要があるため、実際の手取り額はさらに低くなるのが一般的です。
そのため、報酬として受け取る側は、各種控除を正しく理解し、税負担を軽減することが重要です。
基礎控除や配偶者控除、医療費控除などの代表的な控除制度で申告することで、税額を減らすことができます。
さらに、青色申告特別控除を活用すれば最大65万円の控除を受けられ、実質的な手取り額を増やせる可能性もあります。
このように、目先の手取り額だけに注目するのではなく、税金・社会保険料・控除を総合的に考えて実質的な収入を把握することが大切です。
必要経費を計上できるのは事業所得のみ
報酬として働く場合の大きな特徴は、必要経費を計上できる点です。
事業所得や雑所得に分類される報酬収入は、収入から経費を差し引いて課税所得を計算することができます。
ホステスの場合、ドレスやヘアメイク代、名刺代、営業で使った交通費、さらには顧客との同伴で使った飲食代などが経費として認められるケースが一般的です。
これにより、課税所得を少なくでき、結果的に税金を抑える効果があります。
一方、給与所得者の場合は原則として経費を計上できず、給与所得控除のみが適用されます。
そのため、同じ金額を稼いでいても、報酬扱いで働くほうが節税の余地は大きいでしょう。
ただし、経費は何でも認められるわけではなく、業務に直接必要と認められる範囲に限られます。
領収書や明細は5〜7年間保管する必要があるため、普段から記録を残す習慣を持つことが重要です。
関連記事:ホステスの経費はいくらまで認められる?確定申告の疑問を解決!
税務署から指摘されやすい点
水商売業界におけるホステスの収入は、税務署からチェックされやすい分野の一つです。
特に「給与と報酬の区分が曖昧なケース」や「確定申告をしていないケース」は、指摘の対象になりやすいといわれています。
たとえば、名目上は報酬扱いでも、実態が雇用契約に近い場合は「給与」と判断されることがあります。
このような場合、過去分までさかのぼって修正申告や追加納税を求められる可能性が高いでしょう。
また、報酬を受け取っているにもかかわらず確定申告をしていなかった場合には、無申告加算税や延滞税といったペナルティが科されることがあります。
さらに、必要経費を過大に計上している場合や、私的な支出を経費に混ぜている場合は、最悪の場合、最も重い重加算税が科される可能性があります。
水商売関連は、申告漏れが多い業種として税務署から厳しく調査をされる傾向にあるため、ホステスとして働く人は「形式と実態を一致させること」「正確な記録を残すこと」を徹底する必要があります。
まとめ
「報酬」と「給与」は、法律上も税務上も取り扱いが大きく異なります。
確定申告の要否、経費を計上できるかどうか、社会保険への加入義務の有無など、区分によってホステスの実際の負担は大きく変わります。
どちらに該当するかは、働き方や契約内容によって決まるため、自分の立場がはっきりしない場合は、まず店舗側に確認するとよいでしょう。
また、不安がある場合には水商売に精通した税理士へ相談するのがおすすめです。
夜職や水商売には特有のルールや慣習があり、それらを理解している専門家に依頼することで、余計なトラブルや税務上のリスクを避けられます。
税理士法人松本は、水商売・夜職に特化した豊富な知識と経験を持つ事務所です。
ホステスやキャバクラ勤務など、特殊な働き方に伴う税務や法律に精通しているため、安心してご相談いただけます。
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