プレイヤーを卒業して、自身でホストクラブを開業したいと考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。ホスト業界は業界のルールや暗黙の了解が多い世界で、ホスト経験のある経営者が多いのが実情です。
ここでは、ホストクラブを開業するうえで必要な資金や会社設立の流れなどをご紹介しますので、開業をするうえでの参考にしてください。



ホストクラブ開業に必要な資金

ホストクラブを開業するにあたり、開店準備のための「設備資金」と当面の「運転資金」が必要になります。
設備資金は、店舗を開店させるうえで必要な設備を購入するための資金です。家賃や敷金・礼金、内装工事費、ホームページ制作費用など、開業準備にかかるお金を総称して「設備資金」と呼びます。ホストクラブは内装の雰囲気によっては売上にも影響するため、内装にこだわり費用をかけるケースが多いのが特徴です。自身がどんなホストクラブにしたいのか内装業者に伝え、しっかり打ち合わせを行うようにしましょう。
運転資金は、日々の事業を続けていくために必要となる資金です。開業直後は売上が安定しないことが多いため、最低でも3~4ヶ月分の運転資金を準備しておくことをおすすめします。
お店が続けられるかどうかは、日々の運転資金が確保できるかどうかにかかっています。

ホストクラブの経営をするため会社を設立

ホストクラブを開業するために最初から会社を設立したいという方も多いのではないでしょうか。まずは、会社を設立する流れを見ていきましょう。

【会社設立の手順】
1.会社の概要を決める
2.法人用の実印を作成する
3.定款を作成し、認証を受ける
4.出資金(資本金)を払い込む
5.登記申請書類を作成し、法務局で申請する

1.会社の概要を決める

会社を設立するにあたっては、まず会社の基本事項を決めなければなりません。会社の概要として主に必要な項目は、以下になります。今後作成する定款にも記載する内容なので、しっかり確認しておきましょう。

【最初に決めるべきこと】
・目的(どのような事業を行うのか)
・商号(会社の名前)
・本店の所在地
・資本金の出資額
・出資者(発起人)の氏名又は名称及び住所
・各発起人の出資額
・発行可能株式の総数
・設立時に発行する株式の枚数
・株式譲渡制限を設けるか否か
・事業年度
・公告を行う方法
・会社設立時の代表取締役
・会社設立時の取締役

2.法人用の実印を作成する

会社設立の際に用意しておくべき印鑑は会社実印・銀行印・会社印・ゴム印の4種類です。 厳密には会社実印だけあれば手続き上の問題はありませんが、他の3種類も作成しておくことをおすすめします。

3.定款を作成し、認証を受ける

1.で定めた会社の概要をまとめ定款を作成していきます。定款の認証は、会社の本店の所在地を管轄する法務局または地方法務局に所属する公証人しかできません。定款は会社の基本原則をまとめたもので、会社と公証役場に1部ずつ保管されるのが原則です。以前は紙の定款が基本でしたが、近年は収入印紙代がかからない電子定款も増えています。

4.出資金(資本金)を払い込む

定款の作成が終わったら次は資本金の払い込みです。資本金の額は発起人の全員の同意で定め、その出資の履行は発起人の定めた銀行等の口座において実施します。

5.登記申請書類を作成し、法務局で申請する

【窓口の場合】
管轄の法務局へ行き、窓口で登記申請書と添付書類を提出してください。問題がなく管轄の法務局が混み合っていなければ、1週間から10日ほどで手続きが完了します。

【郵送の場合】
必要書類を一式揃え、管轄法務局に郵送して申請できます。書類の紛失や受け取りが不明とならないように特定記録郵便や簡易書留を利用するのがおすすめです。

【オンラインの場合】
法務局のオンラインシステム「登記・供託オンライン申請システム」からの申請も可能です。専用のソフトをダウンロードしたり、電子証明書が必要となります。

ホストクラブを営業するために必要な手続き

風俗営業法1号営業許可

ホストクラブは風営法での「風俗営業法1号営業」に該当します。
風俗営業を行うには風俗営業許可を受けるのはもちろんのこと、許可を受けた後も様々な規定を守って営業していく必要があります。

風俗営業法1号営業であるホストクラブの営業時間は原則として深夜0時までとなります。
例外として、特別な事情のある地域として条例で指定し、午前1時までの延長営業を認めているところもあります。
そのため、ホストクラブの営業時間は、上記の時間に接触しない夕方から深夜0時頃までの1部営業と、日の出からお昼頃までの2部営業をとっているお店もあります。
もっと遅い時間まで営業したいとお考えの方もいらっしゃることでしょう。その場合、接待行為のない「深夜酒類提供飲食店」を取得し営業することは可能ですが、「風俗営業法1号営業」と「深夜酒類提供飲食店」の両方を取得することはできません。
ホストクラブを経営するのであれば「風俗営業法1号営業」を取得し、深夜0時までの営業とするかたちになるでしょう。

飲食店営業許可

飲食店営業許可は、飲食店を開業するうえで必要になります。保健所で飲食店営業許可証を取得することで、店舗で調理した料理や、午前0時までの酒類の提供が可能となります。飲食店営業許可証は、店舗ごとの申請が必要になります。
飲食店営業許可時に食品衛生責任者の資格が必要
営業許可申請時に「食品衛生責任者」の資格が必要です。ホストクラブ(飲食店)の開業にあたっては自主的な衛生管理が必須であるため、店舗に食品衛生責任者を置くことが義務付けられているためです。
食品衛生責任者は、以下のいずれかを満たしている必要があります。
・調理師、製菓衛生師、栄養士、食品衛生管理者などの資格保有者
・食品衛生責任者養成講習会を受講した者
・その他、知事などが適正と認めた講習会を受講した者

税務署等への届出

ホストクラブを開業したら税務署へ提出しておくとよい4つの届出についてご紹介します。

1.法人設立届出書

会社を設立した場合は、設立の日以後2ヶ月以内に「法人設立届出書」を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。この法人設立届出書には定款等の写しの添付書類が必要です。
都道府県税事務所や地方自治体に対する「法人設立届出書」は定款等の写しに加え、登記事項証明書の添付が必要です。

2.青色申告の承認申請書

法人税の申告には、白色申告と青色申告の2種類があります。青色申告を選ぶと、税務上のメリットを受けることができます。
最初の事業年度終了の日または設立の日から3ヶ月を経過した日のいずれか早い方の日の前日までに「青色申告の承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

3.給与支払事務所等の開設届出書

ホストクラブで内勤の方を雇用するなど給与の支払いが発生する場合は届出をします。会社は、支払う給与の中から所得税を一旦預かり、給与の支払いを受ける人の代わりに、支払月の翌月10日までに給与支払事務所等の所在地の所轄税務署に納付することになります。
そのような事務手続きを行う事務所開設を通知するために「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署へ提出します。

4.源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

源泉徴収した所得税及び復興特別所得税は、原則として、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに納税しなければなりません。
しかし、給与の支給人員が常時9人以下の源泉徴収義務者(会社)は、源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税を、半年分まとめて納めることができる特例があります。これを納期の特例といいます。
この特例を受けていると、その年の1月から6月までに源泉徴収した所得税及び復興特別所得税は7月10日、7月から12月までに源泉徴収した所得税及び復興特別所得税は翌年1月20日が、それぞれ納付期限となります。
この特例を受けるためには「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出することが必要です。

まとめ

ホストクラブを開業し、経営していくためには「設備資金」と「運転資金」といわれる資金が必要になります。
プレイヤー時代は自分が稼げば自分の収入になりましたが、経営者になると周りが稼げるように環境や資金を整える経営力が必要になります。
また、ホストクラブを運営する会社を設立するには多くの法律が絡みます。許可や届出にも提出期限がありますので、期限を超えて営業できなかったということがないように専門家に相談してみることをおすすめします。
税理士法人松本はホストクラブに特化した税理士事務所です。開業から税務、労務までトータルサポートしております。LINEまたはお電話でお気軽にご相談ください。