個人事業税は、個人事業主に課される税金の一つで、所得税や住民税とは別に発生します。対象となるのは、法律で「法定業種」として定められた事業を営むケースで、税率や税額の算出方法・申告の流れなどを事前に把握しておくことが重要です。
本記事では、個人事業税とは何かについて紹介します。他にも「風俗業は個人事業税がかかるケースが多い理由」や「風俗業の個人事業税の計算方法」についても解説していきます。ぜひこの記事を参考にして、個人事業税について理解を深めてください。
目次
個人事業税とは何か?

個人事業税は、住民税や固定資産税と同様に地方税に位置づけられる税金で、個人が事業を営む場合に課される「事業税」の一つです。課税・徴収を行うのは市区町村ではなく都道府県で、事業を行っている地域に応じて納付先が決まります。また、所得税や消費税のように国へ納める国税とは別枠なので、手続きや相談の窓口も税務署ではなく、基本的には都道府県税事務所が中心になります。
個人事業税が設けられている理由として、個人で事業を行う人は、道路などの公共インフラの利用をはじめ、各種手続きや案内、公共施設の利用など事業活動の中で行政サービスの恩恵を受けていると考えられるため、その運営にかかる費用の一部を負担する趣旨が挙げられます。会社など法人に課される事業税は法人事業税と呼ばれ、個人事業税とは対象や税率の考え方が異なるため、同じ「事業税」でも制度としては別の扱いになります。
参考:個人事業税|主税局
風俗業は個人事業税がかかるケースが多い

風俗業は、業種によって個人事業税(都道府県税)が課税されるケースが多い点に注意が必要です。個人事業税は、事業として一定の所得が出た場合にかかる税金で、所得税や住民税とは別に課税されます。風俗関連の仕事は、自治体側で「法定業種に該当する」と判断されやすい分野が含まれており、個人で営んでいても事業として扱われると個人事業税の対象になります。
特に、継続して収入を得ていたり、店舗や事務所に所属して働いていたりするケース、広告・集客を行っているなど事業性がはっきりしている場合は課税の可能性が高まります。しかし、すべての風俗業が一律で課税対象になるわけではなく、仕事内容や契約形態、実態によって判断が分かれることもあります。
個人事業税が課税対象外になるケース

個人事業税は、すべての個人事業主に一律で課される税金ではありません。事業内容が法定業種に当たるかどうか、また一定の所得要件を満たすかによって、課税されるかが決まります。具体的に、個人事業税が課税対象外になるケースは、以下の3つが挙げられます。
- ・所得が290万円以下
- ・法定業種以外の業種
- ・減免制度を受ける
それぞれのケースについて解説していきます。
所得が290万円以下
事業所得が年290万円以下なら、事業主控除によって個人事業税は原則かかりません。事業主控除は、個人事業税の計算で差し引ける控除で、年額290万円が基本です。1年間を通して事業を行っている場合は、原則として一律で290万円を控除できます。
一方、開業した年などで営業期間が1年に満たない場合は、控除額は月割りになります。たとえば営業期間が6か月なら、290万円 × 6/12 で 145万円が控除額です。そのため、事業所得がこの事業主控除の範囲内に収まる場合は、課税所得金額がゼロとなり、個人事業税は発生しません。
法定業種以外の業種
個人事業税の課税対象となるのは、原則として地方税法で定められた「法定業種」に該当する事業を営む個人事業主です。法定業種は全部で70種類あり、幅広い事業が含まれるので、思っている以上に対象になるケースは多いと言えます。一般的に法定業種に当てはまりにくい例としては、次のような職種が挙げられます。
- ・漫画家
- ・画家
- ・農業・林業
- ・ライター
- ・プログラマー
- ・スポーツ選手
- ・芸能人
- ・作詞・作曲家
- ・通訳・翻訳家
しかし、同じ肩書きでも実態によって判断が変わる点には注意が必要です。たとえば、受託開発や運用・制作の請負として業務を継続的に行っている場合、あるいは継続的なコンサルティングの色合いが強い場合などは、法定業種として扱われ、課税対象になるケースがあります。
減免制度を受ける
個人事業税にも、ほかの税金と同様に一定の要件を満たす場合に税負担を軽くできる減免制度があります。内容や手続きは都道府県ごとに異なりますが、代表的な対象例は次のとおりです。
- ・災害などで資産に大きな損害を受けたとき
- ・生活保護法にもとづく生活扶助を受けているとき
- ・納税者本人、または扶養親族が障害者に該当するとき
- ・そのほか、各自治体が定める要件に当てはまる場合
申請は各都道府県の定める手続きに沿って行います。
風俗業の個人事業税の計算方法

個人事業税は、基本的に「課税所得金額」に税率を掛けて税額を求めます。算出の考え方は次のとおりです。
- ・個人事業税の額 = 課税所得金額(所得金額 ± 事業専従者給与額 + 青色申告特別控除額 - 各種控除額) × 税率
実際の税額計算は都道府県側で行われるので、個人事業主が自分で厳密に計算する必要はありません。しかし、計算方法を理解しておくことで、納税通知書が届く前でもおおよその納税額を見積もることができます。具体的な風俗業の個人事業税の計算方法については、以下の5つが挙げられます。
- ・STEP1:所得金額の算出
- ・STEP2:事業専従者給与の加減算
- ・STEP3:青色申告特別控除額の加算
- ・STEP4:各種控除の額を差し引く
- ・STEP5:税率をかける
それぞれの項目について解説していきます。
STEP1:所得金額の算出
個人事業税の計算対象となる所得は、原則として1月1日〜12月31日までの事業所得と不動産所得です。具体的には、事業の総収入から必要経費を差し引き、さらに所得税の青色申告特別控除などを反映して所得金額を算出します。なお、個人事業税の課税対象外となる業種から得た所得は計算に含めません。
STEP2:事業専従者給与の加減算
所得金額を出したら、次に事業専従者給与の調整を行います。具体的には、所得税の計算で控除(必要経費算入)した事業専従者給与を加算し、個人事業税のルールで認められる事業専従者給与を改めて差し引くという流れです。ここでいう事業専従者とは、事業主と生計を同一にする親族で、かつその事業に専ら従事している人を指します。専従者がいる場合に所得から差し引ける金額は、以下のように青色申告か白色申告かで扱いが異なります。
| 項目 | 内容 |
| 青色申告 | 青色事業専従者に実際に支払った給与額 |
| 白色申告 | 控除できる上限が決まっている •配偶者:86万円まで •その他の親族:1人あたり50万円まで |
青色申告については、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を所轄税務署へ提出していることが前提になるので注意が必要です。
STEP3:青色申告特別控除額の加算
事業専従者給与の調整が終わったら、次に青色申告特別控除額を加算します。個人事業税の計算では所得税と違って青色申告特別控除が適用されません。そのため、所得金額を算出する段階でいったん差し引いていた青色申告特別控除額は、個人事業税の課税所得金額を求める際に戻し入れする必要があります。
STEP4:各種控除の額を差し引く
青色申告特別控除額の加算が完了したら、最後に各種控除額を差し引いて課税所得金額を確定させます。個人事業税の控除は大きく分けて、以下の2つが挙げられます。
| 項目 | 内容 |
| 繰越控除 | 一定の要件を満たす場合に適用できる控除 |
| 事業主控除 | 原則としてすべての個人事業主に適用される控除 (年290万円 ※営業期間が1年未満なら月割り) |
上記2つの控除を差し引いた後に残る金額が、個人事業税の課税所得金額となります。
STEP5:税率をかける
各種控除を差し引いて課税所得金額が確定したら、最後にその金額へ税率を掛けて個人事業税の税額を求めます。個人事業税の税率は地方税法で定められており、業種ごとに税率が異なるのが特徴です。
参考:個人事業税|石川県
個人事業税を年間290万円以下に抑えるポイント

課税対象となるかどうかの境目にいる場合は、所得を年290万円以下に収める工夫をしておくと負担を回避できる可能性があります。そのため、まずは自分の「個人事業税の課税所得金額」を正しく把握しておくことが前提となります。具体的に、個人事業税を年間290万円以下に抑えるポイントは、以下の3つが挙げられます。
- ・経費を漏らさずに計上する
- ・損失控除を適用する
- ・減免制度を活用する
それぞれのポイントについて解説していきます。
経費を漏らさずに計上する
事業に関わる支出は漏れなく整理し、該当するものはきちんと経費計上するようにしましょう。例えば、以下のような支出を経費計上することが可能です。
- ・家賃・光熱費
- ・事業専従者控除
- ・個人事業税・固定資産税などの租税公課
- ・通信費
- ・仕入費・材料費
- ・交通費
- ・消耗品費
経費を計上する際は、証憑として領収書やレシート・明細書を必ず保管しておきましょう。証憑が残っていないと、内容によっては経費として認められない可能性があります。また、家族が事業に専ら従事している場合は、条件を満たせば専従者に支払う給与を経費扱いにできます。専従者とは、事業主と生計を同一にする親族のうち、事業に専従している家族従業員を指します。
損失控除を適用する
個人事業税では、赤字や損失が出た年でも、一定の要件を満たせば次の3つの控除を活用できます。
| 控除 | 内容 |
| 損失の繰越控除(青色申告者のみ) | 事業の所得が赤字になった場合、その赤字を翌年以降3年間にわたって繰り越し、将来の黒字と相殺できます。 |
| 被災事業用資産の損失の繰越控除(白色申告者のみ) | 災害などで事業用資産に損失が生じた場合、その損失を翌年以降3年間繰り越して控除できます。 |
| 譲渡損失の控除・繰越控除 | 機械や車両などの事業用資産を売却して損失が出た場合、その損失を所得から差し引けます。 |
これらの損失がある場合は、所得金額から該当する損失額を差し引くことで、課税所得金額を圧縮できます。ここでいう「繰越控除」とは、ある年に発生した赤字・損失を翌年以降の利益と相殺し、将来の税負担を軽くする仕組みを指します。
参考:個人事業税:北海道
減免制度を活用する
都道府県によっては、要件を満たす個人事業主に対して、個人事業税の減免制度が設けられていることがあります。たとえば東京都では、一定の条件に該当する場合に事前申請を行うことで、減免が認められるケースがあります。代表的な例は次のとおりです。
- ・本人または家族の医療費負担が高額になった
- ・本人または扶養家族が障害者に該当する
- ・省エネ設備を導入し、「地球温暖化対策報告書」等を環境局へ提出している
- ・災害等により被害を受けた
- ・生活保護を受給している
個人事業税は都道府県が所管する税金なので、自治体ごとに運用や要件・必要書類が異なる点に注意が必要です。該当するか判断が難しい場合は、制度に詳しい税理士に確認すると、手続き漏れや見落としを防ぎやすくなります。
個人事業税を期限までに納めないことのペナルティ

個人事業税を期限までに納めないことのペナルティについては、以下の4つが挙げられます。
- ・延滞金
- ・無申告加算金
- ・重加算金
- ・強制徴収
それぞれのペナルティについて解説していきます。
延滞金
法定納期限を過ぎてから納付した場合は、遅れた日数に応じて延滞金が発生します。延滞金は、納期限の翌日から完納した日までの期間に対して課され、税率は次の2段階です。
| 項目 | 内容 |
| 納期限の翌日から1か月以内 | 年7.3% と延滞金特例基準割合+1%のいずれか低い割合 |
| 1か月経過後(翌日以降) | 年14.6%と延滞金特例基準割合+7.3% のいずれか低い割合 |
具体的な税率は年によって異なり、2026年(令和8年) では、1か月以内が年2.8%、1か月経過後が年9.1%となっています。 このように、延滞金は納付が完了するまで日割りで増えていくので、期限を過ぎたことに気づいたら、できるだけ早く納めるのが負担を抑えるうえで重要です。。
無申告加算金
無申告加算金は、法定申告期限までに申告しなかった場合に課される加算金です。税務調査を受けた後に期限後申告をした場合は、納付すべき税額のうち50万円までの部分は15%、50万円を超える部分は20%の割合で計算されます。
一方、税務署の調査を受ける前に自主的に期限後申告をした場合は、無申告加算金が軽減されることがあります。例えば、原則として自主申告なら5%に軽減され、さらに「期限後1か月以内の自主申告」など一定の要件を満たすと無申告加算金が課されないケースもあります。 そのため、ペナルティを最小限にするためにも、申告漏れに気づいた時点で、できるだけ早く期限後申告と納付まで済ませることが重要です。
参考:加算金・延滞金|愛知県
重加算金
重加算金は、売上の除外や架空経費の計上など事実の隠ぺいがあったと判断される場合に課される、重い加算金です。通常の過少申告加算金・無申告加算金に代わって適用され、税率も高く設定されており、一般に申告はしていたが内容をごまかしていたケースでは35%、申告自体をしていなかったケースでは40%が目安となります。
さらに、意図的に申告をしないなど納税を免れる目的が認められる場合には、刑事事件として扱われ、地方税法等の規定により刑事罰の対象になるので、あらかじめ注意が必要です。
強制徴収
督促状が発送されてから10日を過ぎても納付されない場合、自治体は法令にもとづき、滞納処分に着手できる段階に入ります。差押えの対象は、不動産や給与・預貯金などのほか、換価できる資産全般で、金銭的価値があるものが対象になります。
実際に、差押えまで進むと、預貯金が押さえられて急に生活費のやりくりが苦しくなるなど日常生活への影響が一気に大きくなります。このような事態を避けるためにも、督促状が届いた時点で先送りせず、状況を把握したうえで早めに納付・分納相談などの対応を取ることが重要です。
風俗業の確定申告なら税理士に依頼しよう!

今回は、個人事業税とは何かについて紹介しました。雇用契約を結ばずに風俗業で働いている場合、報酬の受け取り方によっては「給与」ではなく事業所得として扱われ、一定の条件を満たすと確定申告が必要になります。風俗業は申告漏れが起きやすい分、税務署のチェックも厳しくなっているので、「申告しなくても見つからない」と考えるのは避けましょう。
申告漏れが判明すると、追徴課税に加えて加算金や延滞金など負担が大きくなる可能性があります。万が一、不安がある場合は、税理士に相談して、収入や経費の整理をしたうえで、適切に申告・納税を進めるのが安心と言えます。ぜひこの記事を参考にして、個人事業税を事前に把握しておきましょう。
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