キャバクラやクラブなど、いわゆる水商売に従事している場合、税務調査や納税についてわからない点が多く、不安に感じる人も多いのではないでしょうか。
そもそも水商売に税務調査がくることはあるのか、どのような点を指摘されやすいのかなども気になるところです。
ここでは、キャバクラやクラブといった水商売で税務調査の対象になりやすい特徴や、税務調査となった場合にチェックされるポイントなどについて解説しています。
すでに税務署から連絡が入っており、税務調査となっている方は、水商売の税務調査に強い税理士法人松本まで気軽にご連絡ください。
キャバクラでも税務調査は来るの?
キャバクラのような水商売であっても税務調査の対象となる可能性は充分にあります。
反対に、水商売は他業種に比べて、税務調査の対象になりやすいといわれています。
ここでは、水商売が税務調査の対象になりやすい理由や流れなどを解説します。
水商売に税務調査が入りやすい理由
キャバクラのような水商売は、申告漏れが多い職種として知られており、税務調査の対象となるケースが非常に多く見受けられます。
とくに次のような特徴があるため、税務署から注目されやすい傾向にあります。
・申告・納税に関する知識が不足している:水商売に従事している人のなかには、申告や帳簿管理に不慣れな人が多く、適切に納税されていないことが多い。
・キャバ嬢や従業員の入れ替わりが激しい:体験入店や短期勤務、副業などで働く人が多いため、名簿管理や支払い記録が曖昧になりやすい
・店舗の移転や閉店が頻繁:移転や閉店までのサイクルが短く、短期間で営業形態が変わることが多い。そのため、継続的な帳簿管理や申告が困難になる。
・第三者調査からの波及:仕入れ先や顧客の会社へ税務調査が入り、店の伝票などから調査対象となる。
参照元:国税庁|令和5年事務年度 所得税及び消費税調査等の状況
税務調査の流れ
税務調査は悪質性が高くない限り、基本的に穏やかに行われます。税務調査員も1~2人くらいで行われるのが一般的です。
【一般的な税務調査の流れ】
1. 事前通知:調査の連絡が入る
2. 日程調整:調査日を相談
3. 準備:必要書類の準備・想定質問への準備
4. 税務調査実施日:帳簿や請求書など各種資料の確認
5. 追加対応:資料提出・修正依頼など
6. 調査結果通知:申告是認・修正申告・更生
通常、税務調査は1週間程度の猶予を持って事前に伝えられるのが一般的ですが、水商売の場合は事前告知なしで行われることが多い傾向にあります。
【水商売で事前告知なしが多い理由】
・現金取引が多く、数字の改ざんリスクが高い
・売り上げや帳簿の操作を防ぐため、事前に知らせないケースがある
・その場で帳簿やレジの状況を確認することで、実態把握がしやすい
事前通知なしで税務調査が行われる場合は、突然店舗に調査官が来訪し、質疑応答や書類の確認を始めることになるでしょう。
そのため、キャバクラや水商売のオーナーはオープン時から顧問税理士と契約をしておき、税務調査が入った際にすぐ対応できる体制を整えておく必要があります。
事前通知があった場合は、税務調査実施日までに必要書類を用意し、税務調査官からよく聞かれる質問への回答を事前に練習しておきましょう。このときに顧問税理士がいる場合は、アドバイスを受けながら準備を進めることで、当日も安心して調査に臨むことができます。
税務調査にかかる日数は、1~2日程度であることが多く、日中に会計データや請求書、納品書などの書類をチェックされます。税理士が立ち会うことも可能なので、同席をお願いしましょう。
税務調査終了後に、追加の対応が必要な場合、税務調査に立ち会った税理士に連絡が入り、対応してもらえます。
しかし、顧問税理士がいない場合は、すべてオーナーひとりで対応しなければならず、時間的にも心理的にも負担が大きくなります。
そのため、税務調査が決まった時点で、早めに税理士を探すようにしましょう。
キャバクラやクラブで働く従業員に税務調査が来るケース
キャバクラやクラブなどの水商売のオーナーはもちろん税務調査の対象ですが、ホステスとして水商売に従事している人にも、税務調査が入る場合があります。
ホステスとして働いて得た給与や報酬について確定申告していない場合、無申告状態として、税務署からマークされることがあるからです。
無申告の場合、延滞税や無申告加算税などの「追徴課税」が課されることになり、本来納める税金以上の支払いが必要になります。
また、追徴課税は原則一括払いとなっており、支払いが決定した場合には、自己破産してもなお支払いが残り続けるため、1日でも早い自己申告が大切です。
税務調査が入る前に自己申告することで、課される税率が軽減されるため、心当たりがあるキャバ嬢や従業員は、
できるだけ早く税理士に相談することをおすすめします。
関連記事:税務調査で追徴課税が払えない!どうなるのか対処法を解説
キャバクラオーナーなら知っておこう!税務調査の基礎知識
税務調査の基礎知識をお伝えします。
税務調査とは?
そもそも税務調査とは、これまでの申告・納税された内容があっているかを確認する制度です。
税務調査の種類
税務調査には、事前通知される「任意調査」と、事前通知なしで突然調査が行われる「強制調査」の2種類あります。
・任意調査:多くの調査は基本的に任意調査。事前通知があり、調査日程と場所を決めたうえで調査が実施される。ただし、任意だからといって断ることはできない。正当な理由なく断る場合は、法律により1年以下の懲役または50万円以下の罰則を受けることになる。
・強制調査:事前通知がなく、国税庁の査察官が「捜索差押許可状」に基づき、突然店舗に訪れ、すべての書類や帳簿、パソコンやスマートフォンなどの電子機器を押収する。
税務調査で調査される期間
税務調査では過去3期分を対象とするのが一般的です。ただし、ケースによっては5~7期分を調査されることもあるため、最低でも5期分の書類を用意したほうが良いでしょう。
とくに、法人で水商売を経営している場合、帳簿と書類の保管期限が法律で決められているため、注意が必要です。
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区分 |
例 |
保存期間 |
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帳簿 |
総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳など |
7年間 |
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書類 |
棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書など |
7年間 |
このように、「過去5期分なんてない」という言い訳は通用しません。そのため、日頃から適切に帳簿や書類の保管をしておくことが重要です。
税務調査されやすいキャバクラの特徴3選

税務調査の対象となりやすいキャバクラの特徴を3つ紹介します。
1. 同規模の店舗と比べて売り上げが少ない
キャバクラは店舗の規模によって、売り上げが大きく変わることはよくあることです。
しかし、同規模の店舗と比べて、極端に売り上げが少ない場合は、経費の水増しや売り上げの改ざんなどが疑われ、税務調査の対象となる可能性が高くなります。
2. 売上額が不自然で、数年赤字が続いている
赤字経営が何年も続いている店舗は、通常の経営状況から考えて不自然です。
本来計上されるべき売り上げが「なかったこと」にされているのではないかと、税務署が疑念を抱き、税務調査に発展することがあります。
3. 申告自体をしていない
キャバクラを開業するときは、開業届や各種届出・許可を得ているはずです。これらを提出していながらも税務申告を行っていなければ、税務調査の対象になります。
ただしこのようなケースでは、すぐに税務調査が入るとは限らず、あえて数年間様子を見ることで悪質性を判断する場合もあります。
そのため、開店してからこれまで一度も申告したことがなく、税務調査もまだ入っていない場合は、1日でも早く自主的に申告を行いましょう。
その際は、税理士のアドバイスを受けながら進めることで、安心して対応できます。
キャバクラの税務調査でチェックされやすいポイント

キャバクラやクラブなどの水商売で税務調査を受けた場合、以下のようなポイントがチェックされやすいでしょう。
健全な営業ができているか
雑居ビルの地下や上階などで深夜に営業している店舗の場合、いつ開店していていつ休業しているのかが把握しにくくなります。
現金による精算で手書きの伝票などの場合、金額を操作していないか疑われるケースもあるでしょう。
実際は営業していて売り上げがあるにもかかわらず、休業しているように見せかけたり、伝票を改ざんして売り上げを低く計上していたりといった事実がないか、税務調査では確認されます。
場合によっては税務署の調査員が客の振りをして来店し、営業実態を調べる潜入調査が実施されることもあるでしょう。
潜入調査では税務署の職員であるとは名乗らず、一般企業に勤める会社員として接客を受けつつ、不審な点がないかをチェックされます。
このように事前に証拠を掴んだうえで、税務調査が実施される場合は、隠し立てはできないと考えたほうが良いでしょう。
人件費などの経費計上が正しくできているか
現金などで従業員に給与を支払っている場合、実際に支払った額よりも多く人件費を計上していないか、個人的に購入したものを必要経費としていないかなどもチェックされます。
税務調査では、3期分までさかのぼって調査が実施されます。
単純な計上漏れや、科目の振替ミスなども、何年も積み重なればそれなりの額になってしまうでしょう。
すでに申告が済んでいる期間の帳簿や書類であってもきちんと保管し、過去の申告内容に間違いがないか点検することをおすすめします。
書類の整理や過去の帳簿管理は、水商売以外の業種であっても面倒なものです。税務調査がやって来てから慌てることのないように、日頃からこまめに管理することが大切です。
在庫管理をしっかりしているか
税務調査では、帳簿と実際の在庫数が一致しているか、仕入れ費と売り上げのバランスに不自然な点がないかといった点が重点的にチェックされます。
とくに、意図的に伝票を処分していないかという視点で調査官が確認するケースが多いため、帳簿の正確な記録と保管が非常に重要です。
調査対象となる品目としては、フード類やおしぼりなどの消耗品が代表的です。
おしぼりは来店客数に比例して消費される傾向にあるため、仕入れ数と使用量、売り上げとの整合性が取れていない場合には、「売り上げの一部が申告されていないのでは?」と疑われる可能性があります。
税務調査ではこうした間接的なデータから申告漏れを推測することがあるため、日頃から帳簿・在庫管理を適切に行うことが、税務リスクを避けるうえで重要です。
キャバ嬢や従業員から源泉徴収しているか
キャバクラなどの水商売では、体験入店や派遣キャストのような短期勤務であっても、報酬を支払う際には源泉所得税の徴収義務があります。
源泉所得税とは、キャバクラの店舗側がキャストの報酬から所得税を天引きし、キャストに代わって国に納める税金のことです。
勤務期間が1日だけであっても税務上は「報酬の支払い」とみなされ、源泉徴収を行わなければなりません。
これを怠ると、店舗側が脱税とみなされる可能性があり、税務調査の際に指摘されるリスクがあります。
税務署はキャストの在籍状況や報酬の支払い履歴を細かく確認するため、源泉徴収をしていない体入キャストの報酬が見つかれば、追徴課税や加算税が発生するおそれがあります。
短期勤務だからといって油断せず、すべてのキャストに対して適切な税務処理を行うことが重要です。
キャバクラに税務調査が入ったときの対処法
キャバクラに税務調査が入った場合の対応は、「事前通知あり」か「事前通知なし」かで大きく異なります。
事前通知ありの場合
事前通知ありの場合は、すぐに顧問税理士に連絡しましょう。
もし、顧問税理士がいない場合は、通知を受けた段階で、できるだけ早く税理士を探し、調査日までにサポートを受けられる体制を整えることが大切です。
事前通知なしの場合
事前通知なしの場合は、税務署の調査官が突然店舗に来て調査を始めるため、即時対応が求められます。
顧問税理士がいる場合は、すぐに連絡して店舗に来られるか確認しましょう。スケジュールの都合で立ち会えない場合でも、電話やメッセージなどでその場の対応方法についてアドバイスをもらうと安心です。
顧問税理士がいない場合は、自分が確実にわかることだけを答え、曖昧な内容は後日回答するようにしてください。
その間、緊急で対応してくれる税理士を探す必要があります。
関連記事:キャバクラオーナー必見!税務調査をスムーズに終える対策法
キャバクラで税務調査の対象とならないための対策
税務調査の対象になりたいと思うオーナーは、ほとんどいないでしょう。
調査が入ると数日間業務に支障が出るだけでなく、精神的なプレッシャーや追徴課税などのリスクも伴います。
そこでここでは、税務調査の対象にならないための対策方法を2つ紹介します。
きちんと申告・納税する
申告期日までに、正しい内容で申告し納税することが、税務調査の対象となる確率を大きく下げる基本的な方法です。
税務署は、過去の申告内容や納税状況をもとに調査対象を選定しているため、期限内に適正な申告を行っている店舗は優先順位が下がります。
逆に、申告が遅れていたり、内容が毎年バラバラだったりすると「申告内容に不備があるのでは」と疑われ、調査対象に選ばれやすくなります。
とくにキャバクラのような水商売は、現金収入が多く不透明になりがちな業種のため、税務署から常にチェックされている業種の一つです。
そのため、正確な納税が、もっとも効果的な防衛策となります。
顧問税理士をつける
顧問税理士をつけることで、正しい経費計上や売上管理が可能になり、税務署に対して不自然な申告とみなされるリスクを減らせるようになります。
また、合法的な節税対策も教えてもらえるため、納める税金を抑えられることも多くあります。
毎年しっかりと税務申告を行っている場合でも、経費の項目分類のミスや、実は計上できない支出を経費に含めてしまっているなど、見落としがあるケースも珍しくありません。
このような申告ミスを防ぐためにも、税理士によるチェックは非常に効果的です。
税務署にマークされやすい水商売だからこそ、税務の専門家である税理士にチェックしてもらい、適切な申告内容で提出すると税務調査の対象になりにくくなるでしょう。
水商売の税務調査が不安な場合は税理士法人松本へご相談を!
キャバクラやクラブなどの水商売の経営者はもちろん、ホステスとして働いている場合でも、納税や確定申告は必ずしなければなりません。
税理士事務所のなかでも、水商売の税務調査や税務管理を対応できる事務所は、それほど多くありません。キャバクラやクラブなど、業種特有の会計処理やリスクに精通した知識と経験が必要になるためです。
そのため、水商売に特化したサポートができる税理士事務所をお探しの場合は、税理士法人松本まで気軽にご相談ください。
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まとめ
キャバクラやクラブといった水商売は税務調査の対象となりやすく、実際に計上漏れや申告ミスが目立つことも多いため、税務調査が行われやすい業種であるのが実状です。
税務調査で指摘されやすいポイントを理解し、必要に応じて税理士のサポートも受けながら、こまめに帳簿を管理するようにしましょう。
税理士法人松本は、水商売専門の税理士事務所なので、気軽に全国からお問い合わせください。


