ガールズバーを個人事業主から法人化するときの大きな違いとして、「税金の種類」があります。法人にかかる基本的な税金は、法人税・法人住民税・法人事業税・消費税・源泉所得税・住民税(特別徴収)・印紙税・登録免許税・固定資産税・自動車税(軽自動車税)の種類があります。法人になると、個人事業主に比べて経費として計上できる範囲が広くなることもあり、所得によっては法人の方が節税効果が高いと言われています。
今回は、法人にかかる税金を種類別に解説していきます。所得が増えて法人化を検討している個人事業主の方や、はじめて会社設立をした方はぜひ参考にしてください。



法人にかかる税金の基礎知識

まずは、個人事業主と違い、法人になったらかかる税金は多くあります。何から理解していけばわからないなどと不安に思われてしまうかもしれません。
これらを1つ1つ覚えていくのは難しいですよね。そんな時は、税金のプロである税理士に依頼することも1つの手段でしょう。税理士に任せるからと言っても、税金の納税をするのは経営者です。経営者としてそれぞれの税金の納税時期だけは覚えておくようにしましょう。

納税時期 税金
事業終了日から2ヶ月以内 ・法人税
・法人住民税
・法人事業税
・消費税
半年ごと ・源泉所得税(納期特例利用の場合)
毎月 ・源泉所得税
・住民税(特別徴収)
その都度 ・印紙税
・登録免許税
・固定資産税
・自動車税(軽自動車税)

事業終了日から2ヶ月以内に納税する税金

法人には決算月というものが設定されています。1年に1度だけ支払う税金には、法人税を代表に、以下の4種類が挙げられます。

・法人税
法人税とは、会社の所得に対して課される税金です。所得とは、会社が事業年度において稼いだ税金上の利益のことです。簡単に説明すると、売上高から経費を差し引いた金額です。

・法人住民税
法人住民税とは、地方税の一つです。法人住民税の種類としては、都道府県民税と市町村民税とに分かれています。国税である法人税とは別に申告書を作成し、それぞれ都道府県税事務所、市町村の税務担当課に提出することとなっています。
また、会社に複数の都道府県・市町村にまたがって支店が設置されている場合は、それぞれの支店所在地の都道府県・市町村に税務申告をする必要があります。
ただし、東京都の特別区にだけ所在する法人については、区の分と合わせて法人都民税のみがかかります。

・法人事業税
法人事業税とは、国内に事務所・事業所を置く法人が、事業を行うことで課税される地方税の一種で、都道府県が徴税します。これは、事業を行う上で、事務所・事業所を置く都道府県から行政サービスを受けることから、そのサービスの経費 の一部を負担するという意味合いの税金です。

・消費税
消費税は、商品の販売やサービスの提供等を受けた場合に課され、消費者が負担するものです。法人税や法人住民税等と異なり、税金を負担する人と税金を納める人が異なる間接税になります。

半年ごとまたは毎月納税する税金

・源泉所得税
源泉徴収した所得税及び復興特別所得税は、原則として、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに国に納めなければなりません。しかし、給与の支給人員が常時9人以下の源泉徴収義務者は、源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税を、半年分まとめて納めることができる特例があります。これを納期の特例といいます。
この特例を受けていると、その年の1月から6月までに源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税は 7月10日、7月から12月までに源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税は翌年1月20日がそれぞれ納付期限になります。
この特例を受けるためには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を給与支払事務所等の所在地の所轄税務署に提出することが必要です。

参考:国税庁(源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請)

・住民税
個人住民税とは、その地域に住む個人に課する地方税をいい、道府県民税と市町村民税があります。個人住民税には、所得に応じた負担を求める「所得割」と、所得にかかわらず定額の負担を求める「均等割」があります。

その都度納税する税金

・印紙税
印紙税とは、取引などの経済活動にかかわる契約書や領収書などの文書を作成した場合に、印紙税法に基づきその文書に課税される税金です。

・登録免許税
不動産や船舶、航空機を取得したり、会社を設立したりして、登記や登録・免許・認可に対してかかる税金です。

・固定資産税
固定資産税は、1月1日現在の土地、家屋及び償却資産の所有者に対し、その固定資産の価格をもとに算定される税額をその固定資産の所在する市町村が課税する税金です。

・自動車税(軽自動車税)
4月1日時点での車検証に記載されている自動車の所有者に対してかかる税金です。

ガールズバーを法人化するメリット

ガールズバーを個人事業から法人化するメリットはどのようなものがあるか見ていきましょう。

①個人事業主では認められない費用を経費にすることができる
②家族に給料を支払うことで節税になる
③社会的信用が増す
④個人資産を守ることができる
⑤事業年度を自ら設定できる

①個人事業主では認められない費用を経費にすることができる

個人事業主の場合、支払った費用を経費にできる範囲は法人より狭いです。 個人事業主の場合、個人的な支出なのか、本当に事業に関連した支出なのか、実際のところ判別が難しいため、明確に事業用だと判別できる費用のみを事業上の経費にするこ とができます。
一方、法人の場合は、法人が支払った費用であれば、個人的な支出と認められるもの以外は、原則として経費にすることができます。
この違いは、税金の計算上かなり大きく、同じ費用であっても、経費にできるかどうかで、税金の金額が大きく変わってくる場合があります。

②家族に給料を支払うことで節税になる

個人事業主の場合、原則として家族に支払った給料を経費にすることはできません。家族に給料を支払いたい場合は、「青色事業専従者給与に関する届出書」という書類を税務署に提出し、事前に支払給与額を設定する必要があります。
一方、法人の場合は、会社で働いてくれた人には誰でも給料を支払うことができますから、例えば、開業してから家族に手伝ってもらう場合でも、届出書の提出をすることなく、給料を支払うことで経費にすることができます。

③社会的信用が増す

すでに説明した通り、個人で事業をするより、法人で事業をした方が、社会的信用は高くなります。
これは、事務所を借りる場合のみならず、銀行からの借入れをする場合なども同じで、 事業を拡大するのであれば、社会的信用が高い法人の方が有利といえます。

④個人資産を守ることができる

個人事業主が借入れをしたり、取引先に支払いをする場合、あくまでも個人の義務に帰属することになります。
一方、法人の場合は、法人格があり、法人名義での権利・義務となりますので、法人格と個人が切り離されている以上、法人に何かあっても、個人資産を守ることができます。

⑤事業年度を自ら設定できる

個人事業主の場合、1月1日から12月31日までに得た収入と、かかった経費から税金を計算することになりますが、法人は決算日を自由に設定することができますから、例えば、 売上が集中する時期がある場合などは、税金の計算上有利な事業年度を設定することができます。

ガールズバーを法人化するデメリット

さて、ここまでは「法人とは」「法人設立のメリット」を書いてきましたが、法人にするデメリットがあることもまた事実です。
メリットとデメリットを比較しながら、新規開業することが非常に大事になります。

①登記や税務申告など、手続きが煩雑
②事業の運営コストが高くなる
③法人のお金を個人で自由に使うことができない

①登記や税務申告など、手続きが煩雑

法人を設立するには、登記が必要なのですが、登記費用がかかりますし、登記手続きはなかなか難しく、通常は司法書士に依頼することになります。
また、毎年法人の税務申告が必要になりますが、個人事業主のように「自分でやってしまおう」「税務署に開けばわかる」というものではなく、こちらは通常、税理士に依頼す ることになります。

②事業の運営コストが高くなる

法人を運営していくには、自分一人ですべてを賄いきれるわけではなく、専門家の手助けが必要になることから、個人事業主で事業をするより、事業運営コス トは高くなる傾向にあります。

③法人のお金を個人で自由に使うことができない

個人事業主であれば、事業で得られた儲けに関して、個人のお金ですから自由に使うことができます。
一方、法人は事業主であっても、毎月定額の給与 (役員報酬)を支払うことになります から、個人的なお金はあくまでも給与の中から支出することになります。つまり、法人の 場合は、個人と法人の切り分けが必要になるということです。

まとめ

ガールズバーを経営したらかかる税金の種類や法人化した場合のメリットデメリットについてご紹介しました。
税金の種類がたくさんあり、すべて覚えるのは難しいことでしょう。しかし、納税するにあたっていつお金が出ていくのかを把握しておかなければ、経営が立ち行かなくなることもある可能性があります。納付期日については経営者としてしっかり把握するようにしましょう。
また、個人事業から法人化するにあたり、メリット・デメリットについても把握し、ガールズバーの経営に役立てていきましょう。
現在の状況で法人化するか判断に迷われているのであれば、ガールズバーに強い税理士法人松本までお気軽にご相談ください。