近年、学生の方がアルバイトとして、比較的時給が高いとされるキャバクラやホストなど、いわゆる夜職を選択する学生も見られます。
学生がアルバイト収入を得る場合、親御さんの扶養控除の適用や、ご自身の税金負担について理解しておくことが重要です。2025年度の税制においても、収入と税金の関係は学生の働き方に影響を与える可能性があります。
本記事では、夜職で働く学生が知っておきたい扶養の考え方、年収の壁、および注意点について解説します。
学生は親の扶養に入っている
税法上の扶養とは、経済的に自立していない親族を養う場合に、所得税や住民税の計算において扶養者の税負担を軽減する制度です。一般的に、学生など自身で生計を維持することが難しいと認められる親族は、親御さんの扶養に入ることができます。
扶養に入っている場合、一定の所得金額以下であれば、所得税や住民税が課税されない、または軽減されるというメリットがあります。しかし、収入が増え、一定の基準を超えると扶養から外れ、ご自身で納税義務が生じることになります。
年収の壁が2025年度から引き上げられる
参照：年収の壁ガイド
「年収の壁」という言葉を知っていますか？
「年収の壁」とは、収入が一定額を超えると税金や社会保険料の負担が発生し、手取り収入が減少する現象を指します。この年収の壁が2025年度から引き上げられるようになりました。
2025年から、所得税が課税される年収の壁は「103万円」から「123万円」、さらに「160万円」まで段階的に引き上げられることが決定しています。ただし、住民税や社会保険の非課税ラインは別に設定されており、すべての「壁」が一律に引き上げられるわけではありません。
年収の壁引き上げの背景
年収の壁が引き上げられた理由には、人手不足の中、年収の壁があるために働き控えをする人が増えたという背景があります。
いかに扶養内で働き、世帯として税の負担を軽くするかは、年代を問わず深刻な課題です。
そこで年収の壁を引き上げ、労働力を確保し、社会として多くの人が能力を発揮して働けるよう期待されています。
親の扶養に入っているメリット
学生は親の扶養に入っているケースが多く、以下のようなメリットがあります。
- 親は控除が受けられる
- 自分で国民健康保険に加入しなくてよい
親は控除が受けられる
親が会社員で健康保険に加入している場合、一定の年収以下であれば学生も扶養に入ることができ、保険料の自己負担が発生しません。
親も扶養家族がいれば、その人数に応じて住民税や所得税の控除が受けられます。
子供が自力で稼げるようになり扶養を外れるとなると、親の税金の負担が増えてしまう可能性が高いです。
自分で国民健康保険に加入しなくてよい
親が会社員で健康保険に加入している場合、親の会社の健康保険に入っている方が多いでしょう。
親が健康保険料を支払ってくれているという状態となりますが、扶養を外れると保険料を自分で払わなければいけません。
夜職であっても勤務先に健康保険制度があれば加入可能ですが、多くの場合は個人事業主として国民健康保険に加入することになります。
保険料は納付書が自宅に郵送で届くので、年収に応じた額を支払います。
扶養を外れるほどの収入があると親バレする!?
結論、扶養を外れるからといって夜職であると即バレするわけではありません。
扶養を外れるとなると、一定以上の収入があるとわかりますが、職業まではわからないからです。
例えば、「アルバイトによる収入が増えた」と説明することも可能です。
ただ、収入が多いと働き方について質問を受けることもあり、職種まで推察される可能性もあります。
学生が扶養内で夜職を続ける方法
「扶養は外れたくないけど、夜職も辞めたくない」という場合は、扶養内で働くようにしましょう。
以下のような方法がありますので、確認しておきましょう。
- 勤労学生控除を利用する
- 短時間勤務の扶養内で働く
- 収入と経費を管理する
勤労学生控除を利用する
勤労学生控除とは、働きながら学校に通う学生の税負担を軽減するための制度です。
高校や大学といった特定の学校の生徒である人が対象です。
一定の控除を受けられますので、所得税や住民税の税額を抑えられるようになります。
あくまでも学生本人のための制度であり、親の控除が適用されるものではありません。
詳しくは国税庁のホームページを参考になさってください。
参考：国税庁｜勤労学生控除
勤労学生控除の申請方法
この控除を受けるためには、給与所得者の場合は、「扶養控除等（異動）申告書」に勤労学生控除に関する事項を記載して勤務先に提出してください。確定申告を行う場合は、確定申告書に勤労学生控除に関する事項を記載して提出してください。
引用：国税庁｜勤労学生控除
勤労学生控除は申告が必要で、自動適用されないため、対象者は必ず勤務先や税務署へ申請手続きを行いましょう。
短時間勤務の扶養内で働く
勤務時間を少なくし、扶養内の収入で抑えるように調整しながら働く方法です。
収入を抑えながら働くことで時間に余裕ができ、本業である学業と夜職を両立しやすくなるでしょう。
「稼ぐために夜職を選んだ」という場合は、「もっと働きたい」という欲求が出てくるかもしれません。
「効率よく稼いで時間を有効に使いたい」という場合は、時短という考え方で割り切って働くのもいいでしょう。
収入と経費を管理する
ここまでお伝えしてきた「所得」とは、お店から受け取っている報酬全てを指すものではありません。
お店から受け取る報酬全てを「収入」と呼び、そこから経費を引いた金額を「所得」といいます。
正しく所得を把握するためには、経費の計算が欠かせません。
通勤交通費（公共交通機関利用の場合は定期代等）、業務に必要な小物、化粧品、衣装代などは経費として計上可能ですが、私的利用分は除きます。
収入だけでなく経費を正しく計算すると、勤務時間の上限が変わってくるかもしれません。
上限なく稼ぐなら扶養を外れるのもアリ！
ここまで学生が親の扶養内で夜職を続ける方法について考えてきましたが、扶養を外れるという選択肢ももちろんあります。
お伝えしたとおり、住民税や所得税などの納税の負担が増えますが、それを理解した上で扶養を外れるという選択をしたっていいのです。
「上限を気にしながら働きたくない」「夜職でどこまでいけるかチャレンジしたい」という方は、年収の壁を意識すると足枷になってしまうかもしれません。
年収の壁を少し超えた場合は税負担が増大しますが、壁を大幅に超える高収入を得られれば、税負担を差し引いても手取りが増えるケースが多いです。
具体的なボーダーラインについて気になる方は、税理士にご相談ください。
学生が夜職をするメリットを考える
ナイトワークに従事することに対して、家族への配慮から不安を感じる学生もいるかもしれません。
でも夜職を選んだのにはきっと理由があるはずです。
- 効率良く稼げるから時間を作れる
- コミュ力・営業力・接客力が伸びる
- セルフマネジメント能力が身につく
- 美容・ファッションに詳しくなる
ナイトワークでは、接客スキルや自己管理能力が求められるため、社会人としての基礎的な能力が鍛えられる側面もあります。（ただし、学業や健康への影響にも十分注意し、無理のない働き方を心がけましょう。）
効率良く稼げるから時間を作れる
夜職は一般的なアルバイトに比べると時給が高く、短時間で効率よく収入を得られる傾向にあります。
将来の夢があり、「夢のための勉強をする時間がほしい」「夢の勉強をするためのお金がほしい」という人もいるでしょう。
夢のための手段であり、期間限定のアルバイトであると割り切っていれば、親も応援してくれるようになるかもしれません。
コミュ力・営業力・接客力が伸びる
ナイトワークに分類される接客業では、さまざまな年代や職業のお客様と接する機会が多く、柔軟な対応力やコミュニケーションスキルが求められます。相手に合わせた聞き方や話題の選び方、適切なリアクションなど、状況に応じた対応が身につく可能性があります。
また、継続的にお客様に来店していただくためには、礼儀やマナー、相手への配慮なども重要となり、自然と社会人基礎力を養うことにつながるでしょう。
こうした経験は、将来的にどのような職種においても役立つ力となることがあります。
セルフマネジメント能力が身につく
ナイトワークは一見華やかに見える一方で、自己管理能力が求められる側面もあります。特に学生の場合は、学業との両立が前提となるため、時間管理や体調管理を含むセルフマネジメントが欠かせません。
また、業務上、幅広いお客様と接する中で、すべての対話が円滑に進むとは限らず、時には対応に配慮が必要な場面もあります。こうした中で、自身のモチベーションを維持し、精神的なバランスを保つ力も身につけることが求められます。
このような経験は、将来的なキャリア形成においても活かせるスキルの一部となる可能性があります。
美容・ファッションに詳しくなる
夜間の接客業においては、対人対応の一環として外見や身だしなみに配慮することが求められる場面もあります。第一印象が重視される職種であることから、美容やファッションに関する知識や意識が高まる傾向にあります。
こうしたスキルは、ナイトワークに限らず、将来的に一般企業などで働く際にも、TPOを踏まえた適切な装いとして役立つ場面があります。状況に応じた身だしなみの整え方や対人印象の管理能力は、広く社会人としての基礎的なビジネスマナーの一つともいえるでしょう。
夜職と扶養に関するよくある質問
夜職と扶養に関するよくある質問をまとめました。
- 夜職で源泉徴収されたら親にバレますか？
- 夜職が親にバレる原因は何ですか？
- 一度扶養から外れると戻れないのですか？
夜職で源泉徴収されたら親にバレますか？
夜職で源泉徴収を受けても職種が親に直接分かるわけではありませんが、収入増減は扶養者に伝わる可能性があります。
夜職が親にバレる原因は何ですか？
収入の変化による、生活環境の変化が親バレの大きな原因になると考えられます。
「帰宅時間が遅くなる」「持ち物にブランド品が増える」などのちょっとした変化から、夜職を疑われる可能性があります。
また親と同居している場合は、お店で使用する衣装や派手なメイク道具などが見つかると、用途を聞かれて困るケースもあります。
一度扶養から外れると戻れないのですか？
扶養から外れても、収入が基準以下に戻れば再度扶養に入ることも可能ですが、各種手続きが必要です。
扶養に関するご相談は税理士へ
夜職で働いていると効率良く稼げてしまうので、扶養を外れるべきか悩む人が少なくありません。
学生で親の扶養に入っている人であれば、自分だけの問題ではなく、親の税金にも関わってきます。
「扶養を外れると自身で税金の支払いが発生する」「親と話合いが必要になるケースが多い」という理由から、扶養内で働くという方法を選ぶ人がいます。
2025年からは、所得税が課税される年収の壁が大幅に引き上げられますが、住民税や社会保険の非課税ラインは別基準であり、すべての「壁」が同時に引き上げられるわけではありません。
最新の詳細や個別の状況については税理士にご相談ください。
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