スナック経営において「失敗したくない」と考える人は多いでしょう。
スナックは小規模で始めやすいため、他の飲食業態と比較して初期投資を抑えやすい傾向があります。
また、酒類の提供が売上の多くを占めるため、運営がうまくいけば比較的高い利益率を目指すことも可能です。
しかし、「経営が厳しい」と悩んでいるスナックママも多く、客足が遠のいたり経費がかさんだりして失敗するリスクもあるため、事前に対策を取る必要があるのです。
本記事では、潰れるスナックの特徴やスナック経営を成功させるポイントについて解説します。
また、スナック開業に利用できる資金調達方法についてもご紹介しますので、ぜひこの記事を参考に、スナック経営を成功させましょう。
スナックとは?他の飲食店経営との違い

そもそもスナックとは、店舗責任者である「ママ」や従業員との会話を楽しみながら飲食ができるバーの一形態を指します。
一般的な飲食店と比較すると、お酒や軽食をメインにしているため、設備にかかる費用を比較的抑えやすく、小規模な店舗であればママ1人でも開業可能です。
また、食品の調達や管理の手間も少なく、小規模展開するなら人件費も抑えられることから、初めて飲食店を開業する方にとっても始めやすく、お酒の売り上げが多くを占めているため、飲食業界の中でも利益率が高い業態です。
スナック開業に必要な資格や届出
スナックを開業するにあたって必要な資格や届出は、以下のとおりです。
|
許可・資格名 |
概要・対象業種 | 目安費用 |
備考 |
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食品衛生責任者 |
飲食店・食品販売業に必要な資格 | 10,000円前後 | 地域により異なる。講習受講が必須。 |
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飲食店営業許可 |
飲食店を開業する際に必要な許可 | 16,000円~ |
地域や営業形態による。 |
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防火管理者 |
従業員を含め収容人数30人以上の飲食店に必要 | 5,000円~ |
地域により異なる。 |
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深夜酒類提供飲食店営業届出 |
午前0時以降に酒類を提供する飲食店 | 不要 |
警察署に提出。風俗営業許可が必要な場合あり。 |
| 風俗営業許可(1号) | 特定の営業形態に必要 | 24,000円 |
地域により異なる。警察署への申請が必要。 |
接待行為を伴うスナックを営業する場合には、「風俗営業許可(1号営業)」が必要です。ただし、この許可を取得すると、接待行為を伴う営業は深夜0時以降できません。
一方、深夜0時以降に酒類を提供したい場合は、「深夜酒類提供飲食店営業届出」が必要になります。しかしこの届出では接待行為は禁止されています。
つまり、
・接待をしたい場合は深夜営業できない
・深夜に営業したい場合は接待ができない
ということになります。このため、接待を伴う深夜営業は、原則として認められていないため、両方の営業形態を同時に行うことは困難です。
なお、具体的な営業形態によっては判断が分かれるため、所轄の警察署など行政機関への事前確認を強くおすすめします。
参考リンク集:
・食品衛生責任者について|一般社団法人東京都食品衛生協会
・風俗営業、特定遊興飲食店営業許可申請(欠格事由・必要書類)
・防火管理者について|一般財団法人日本防火・防災協会
・深夜酒類提供飲食店営業(様式一覧)
・風俗営業等業種一覧|警視庁
スナックによくあるシステム
スナックには、以下のような料金体系やシステムが導入されており、客単価向上に繋げています。
・ボトルキープ(お酒をボトルごと購入してもらい、飲み切らなかったボトルを店に保管しておく)
・チャージ料金(席料)
・セット料金(水や氷、お酒、軽食等の料金をセットにする)
・カラオケ料金(お客様がカラオケを利用する際の利用料金)
スナックの開業資金は?利用できる資金調達方法

スナックの開業資金は、事業規模や立地、店舗の内装などによっても異なりますが、目安として500万円から1,000万円程度が相場といわれています。
スナックの開業にかかる費用の内訳としては以下のとおりです。
・物件取得費・・・150万円〜300万円
・内装・外装工事費・・・100万円〜200万円
・厨房設備費・・・50万円〜200万円
・食器・備品・・・30万円〜100万円
・広告宣伝費・・・5万円〜30万円
このようにさまざまな費用がかかり、自己資金が足りない場合は資金調達が必要となりますが、スナックは業態上「水商売」と見なされることもあり、金融機関によっては慎重な判断をされる場合があります。
特に、風俗営業に該当する場合は融資対象外とされることもあるため、事前に金融機関や専門家に確認することが大切です。
ここでは、スナック開業に利用できる主な資金調達方法をご紹介します。
日本政策金融公庫
スナックの開業資金の資金調達として、日本政策金融公庫の融資制度が利用可能です。
日本政策金融公庫の融資は、風俗営業に該当しない飲食店とみなされる場合に利用可能です。
そして、はじめて事業をする方が使える融資の制度として、「新規開業・スタートアップ支援資金」があり、無担保・無保証で最大7,200万円までの借入が可能となります。
そのため、スナック開業で融資を検討している場合はまず、日本政策金融公庫を検討してみると良いでしょう。
ただし、審査は個別の運営形態により異なるため、詳細は事前確認が必要です。
補助金・助成金
地方自治体、経済団体などが提供する補助金や、厚生労働省や地方自治体の助成金を利用するのも方法の一つです。
各自治体によっては助成金や補助金を出している所も多くあり、基本的には返済不要で、開業後の融資返済に充てたり、運転資金として活用することができます。
スナック開業時に利用できる助成金・補助金の例として、以下5つが挙げられます。
・小規模事業者持続化補助金(経済産業省)
・キャリアアップ助成金(厚生労働省)
・IT導入補助金(経産省)
・創業助成金(地方自治体等)
・インバウンド対応力強化支援補助金(地方自治体等) など
ただし、助成金や補助金は基本的に事業実施後に支給されるため、開業直前の資金調達には向かないケースが多い点に注意が必要です。
参考リンク集:
・小規模事業者持続化補助金について | 中小企業庁
・キャリアアップ助成金|厚生労働省
・IT導入補助金(複数社連携IT導入枠) | 中小企業庁
・創業助成金(東京都中小企業振興公社)|融資・助成制度
・インバウンド対応力強化支援補助金|Tokyo支援ナビ
クラウドファンディング
クラウドファンディングは、近年増えているインターネットを活用した資金調達手段で、インターネット上で事業や商品の魅力を伝え、共感してくれた人から資金を募ります。
支援のリターンとして物品やサービスを提供するものもあれば、リターンがない寄付型もあります。
スナックの開業資金調達としても利用でき、うまくアピールすることができれば、開業前から店のファンになってもらえ、新規顧客獲得にも繋がります。
ただし、資金調達が達成できないリスクや手数料発生もあるため、利用計画は慎重に行いましょう。
潰れるスナックとは?失敗しやすい店の特徴

開業資金の調達が無事にできたとしても、開業後に事業がうまく行くとは限りません。
スナックは比較的小規模で始められるため参入障壁は低い一方、集客や経営面で課題を感じる経営者も少なくありません。
ここからは、失敗しやすいスナックの特徴をお伝えしますので、開業時の参考にしてください。
立地選びに失敗
あまり深く検討せずに立地を選んでしまうと集客に苦労する可能性が高いです。
特に、以下のような立地には注意しましょう。
・交通量が少ない
・駅から遠い
・視認性が低い地下店舗
・店舗が分かりづらい2階以上の店舗
たとえスナックの知名度がなくても、繁華街や駅近であれば、ある程度の集客が見込めるでしょう。
家賃が安いからといってターゲット層が少ない場所に開業するのはリスクが伴います。
適切な資金計画ができていない
スナックに限らず、飲食店を経営するにあたって、綿密な資金計画なしに成功は望めません。開業に必要な資金を正確に把握し、適切な計画をしないまま開業すると、経営状況の変化や急な支出があった際に資金不足に直面する危険性があり、事業の継続が難しくなる場合があります。
特に、原材料費や人件費の見積もりを見誤ると、開業後に思わぬ支出がかさみ、経営を圧迫することになります。
そのため、将来起こり得る変動にも柔軟に対応できるよう、慎重に資金計画を立てる必要があるのです。
集客方法をうまく活用できていない
スナックの売上は、客数×客単価で求められるため、客数か客単価を上げることで売上アップに繋がりますが、集客が上手くいかなければ客数が増えず、失敗するリスクが高いです。
スナックの集客で失敗する店の特徴として、具体的には、以下のケースが挙げられます。
・SNSやWEBサイトを十分に活用できていない
・ターゲットに適した集客を行っていない
・集客に充分なリソースを割いていない など
常連客やリピーターの獲得に成功している店舗は、比較的安定した売上を確保しやすい傾向にあります。一方で、新規顧客の獲得に課題を抱える店舗もあり、集客方法の工夫が求められます。
店のコンセプトが曖昧
スナックの集客ができない原因として、ターゲット層やコンセプトが不明確で、店の魅力が伝わりづらく、結果として集客が困難になるケースも多いです。
スナックの開業は比較的手軽に行えますが、他店舗の差別化が図れていなければ、差別化できていない店は埋もれやすいため、しっかりとしたコンセプトを持つことが重要です。
例えば、以下のようにターゲット層を明確にしたうえで、具体的なコンセプトを設定しましょう。
・地域密着型の親しみやすい空間
・若者向けのポップな空間
・カラオケ主体で盛り上がれる空間 など
価格設定が不適切
メニューやお酒、チャージ料などの価格設定が低すぎると、繁盛しても利益が出ません。
価格設定が極端に高い場合、ターゲット層とのミスマッチが生じることがあります。
これは、市場の動向を把握し、競合他店との比較を行っていない場合に起こり得るもので、市場調査を十分に行っていないことが問題です。
適正な価格を設定するには、提供するサービスの質やコンセプト、立地、競合店とのバランスを総合的に考慮する必要があります。
スナック経営を成功させるためのポイント

スナック経営の成功には、いかにお客様に繰り返し来店してもらえるかが重要です。スナック経営を成功させるコツを詳しくご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
初期投資をなるべく抑える
スナック経営を成功させるために、初期投資をかけすぎないことも重要です。
スナックの初期投資を抑えるには、以下の方法が考えられます。
・居抜き物件の活用
・中古品・リース品の利用
・小規模店舗からのスタート
・内装工事を一部DIY
・助成金・補助金の活用
例えば、スナックの居抜き物件を活用すれば、内外装工事費用を削減できるため、初期費用を抑えることに繋がります。
スモールスタートで始め、経営が安定してきてから少しずつ良い店にアップデートしていく方法がおすすめです。
市場調査を徹底的に行う
スナックの集客には、立地や顧客に関する市場調査が不可欠です。
市場調査が不十分であれば、例えば、競合店が多い場所にスナックを開業し、客を他の店に取られてしまったり、顧客ニーズに合わないコンセプトの店にして、客足が遠のいたりと、失敗するリスクが高くなります。
市場調査を通じて、ターゲットとなる顧客層や競合店の状況、立地条件などが把握でき、店のコンセプトや提供メニュー、サービス内容が明確になるため、開業前の調査と分析が必要です。
なお、風営法により、深夜0時以降の酒類提供が禁止されている地域もあります。各都道府県の条例を必ず確認しましょう。
最適な集客方法を行う
スナックの集客を成功させるために、ターゲット層に合わせた集客戦略を立てることが重要ですが、具体的な集客方法としては以下が挙げられます。
・ひと目で分かる看板の設定
・Webメディアへの掲載
・ホームページの作成
・スナック紹介サイトへの掲載
・SNSでの発信
・MEO対策
MEO対策とは、Googleにおいて地図検索で上位表示を狙う施策で、「Googleビジネスプロフィール」に登録するのが有効です。
Googleビジネスプロフィールは、Google検索やGoogleマップでビジネス情報をユーザーに表示し、管理するための無料のツールを指し、これにより、スナック近隣の潜在顧客にアピールできます。
正確な営業時間やメニューを掲載したり、写真を掲載したり、口コミに誠実に対応したりすることにより、信頼性が高まり、集客に繋がるでしょう。
コミュニケーションをとりリピーターを増やす
スナックの魅力の一つとして、お客様との距離が近い点にあります。
リピーターを獲得するためにはその強みを活かし、お客様の年齢層、職業、好みをよく観察し、その人に合った接客を心がけることが大切です。
例えば、酒の好みやカラオケで歌う曲などを把握し、それに合わせて話を振ったり、お客様が話したいタイミングで話を聞き、共感して信頼関係を構築したりと、丁寧かつ継続的なコミュニケーションをとりましょう。
パーソナルな対応により、顧客満足度が向上し、リピーターの獲得に繋がります。
失敗例を参考にスナック経営を成功させよう

スナックは比較的小規模な店舗から始められるため、初期投資や人件費を抑えやすい特徴があります。
しかし、スナック経営が思うようにいかないケースも多く、「厳しい」と感じる人もいるでしょう。
スナック経営を成功させるためには、十分な市場調査と効果的な集客、顧客とのコミュニケーションが重要です。
また、スナックを開業し、軌道に乗るまでは多くのまとまった資金が必要になります。
居抜き物件を利用したり、中古やリースの備品を使うなどして初期費用を抑えることはできますが、物件取得費や広告宣伝費、数ヶ月分の運転資金も用意しなければならず、自己資金では足りない恐れがあるのです。
スナック開業のための資金調達で悩んでいる方は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
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