
スナックの開業資金は、規模や立地によって異なりますが一般的に500万円前後かかることが多いとされています。この金額を自己資金で用意するには負担が大きいと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
事業をスタートさせるための融資を活用していければいいのですが、スナックでも融資が受けられるのでしょうか。
スナック開業のための融資について、また開業までに取得しておきたい許可や資格、融資を受けるためのポイントなど、スナックの開業についてまとめました。
スナックの開業でも融資可能か
スナックは水商売の部類に入るので、「スナックの開業で融資を受けられるか」と心配している方がいるかもしれません。
どの金融機関でも全面的に可能というわけではありませんが、融資元を選べばスナックでも融資を受けることが可能です。
例えば以下のように、日本政策金融公庫では、風俗営業に該当しないスナックは飲食店として扱われ、融資の対象になる可能性があります。
一方、信用保証協会付きの融資では、スナックへの融資は難しくなります。
民間の金融機関の融資は信用保証協会の保証が必要になりますので、多くの金融機関でスナックへの融資は厳しい状態となります。
スナックの開業で融資を希望するのであれば、まずは日本政策金融公庫を検討してみるのも良いかもしれません。
なぜ日本政策金融公庫で融資可能なのか
日本政策金融公庫とは政府公認の金融機関で、主に中小企業や小規模事業者に向けて融資を行う機関です。
風俗営業店やラブホテルなどへは日本政策金融公庫でも融資を行いませんが、スナックは融資可能となっています。
注目すべきは、「スナック」という業種をどう捉えているのかという点です。
スナックはキャバクラといった風俗店と近い形態であるため、信用保証協会では原則として融資不可とされています。
お伝えした通り、日本政策金融公庫ではスナックは喫茶店などと同等の飲食店と区別されているため融資可能となります。
ただし風俗営業許可を取得していないスナックが融資対象となっており、風俗営業許可のあるスナックは融資対象外となりますので注意してください。
日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金
日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」についてご紹介します。
ご利用いただける方 | 新たに事業を始める方 事業開始後おおむね7年以内の方 |
融資限度額 | 7,200万円 (うち運転資金4,800万円) |
設備資金 |
20年以内 |
運転資金 返済期間 |
10年以内 |
利率 | 状況により異なる |
担保・保証人 | 要相談 |
女性の方、35歳未満または55歳以上の方は利率が優遇される可能性がありますので、条件をしっかりご確認ください。
スナックの開業資金の内訳
スナック開業のために融資を受けるには、事業計画書を作成しなければいけません。
開業のためには、どんな資金が必要になるのかを明確に計算しておくようにしましょう。
スナック開業資金の内訳について、ご紹介します。
開業するスナックの規模によって金額が異なりますので、参考に御覧ください。
- 物件取得費150万円〜300万円
- 内装・外装工事費100万円〜200万円
- 厨房設備費50万円〜200万円
- 食器・備品30万円〜100万円
- 許可取得費5万~10万円
- 広告宣伝費5万円〜30万円
物件取得費150万円〜300万円
スナックの店舗となる物件を取得するための、敷金や礼金、保証金や前家賃を含む費用です。
スナックを経営していく上で立地は重要な要素となりますが、スナックは単純に駅近や階数で選ぶべきとは言い切れません。
住宅地にあるような隠れ家的なスナックであっても需要がありますし、防音性を求めるなら地下の方がいいかもしれません。
店舗の家賃はランニングコストとして大きな経費となりますので、経営に大きく影響します。
立地の良さだけでなく、何を求めて物件を選ぶのかを明確にさせておくようにしましょう。
内装・外装工事費100万円〜200万円
スナックの内装費は、壁や天井、床、空調設備などが該当します。
居抜き物件を見つけられれば大幅に費用を抑えられるようになります。
居抜き物件を内見する時は、コンセントの位置や電気・ガスの配線など細かい部分までチェックしておくようにしましょう。
外装は看板や照明などで、お客様にスナックの存在をアピールする集客材料にもなるものです。
内装や外装はコンセプトに合わせた統一感を心がけ、居心地の良い空間を演出しましょう。
厨房設備費50万円〜200万円
スナックに必要な厨房設備は、冷蔵庫や製氷機、シンクや食器洗浄機などです。
メニューによってはコンロが必要になりますので、どこまでの設備が必要なのかを考えておかなければいけません。
厨房設備費は新品を購入すると高額になるので、中古やリースという選択肢があります。
食器・備品30万円〜100万円
スナックを経営していくためには、グラスやアイスペール、コースターや灰皿などの備品を揃えていかなければいけません。
席数に応じて必要な数が異なりますので、余裕を持った数を準備していきましょう。
トイレットペーパーや消毒液といった消耗品も必要になりますので、細かい備品も忘れないようにしましょう。
許可取得費5万~10万円
スナックを開業するためには、以下の許可や資格が必要になります。
営業形態により申請する内容が異なりますので、何が必要になるかを確認しておきましょう。
内容については後述します。
取得のための費用については、こちらを参考になさってください。
許可・資格名 |
概要・対象業種 | 目安費用 |
備考 |
食品衛生責任者 |
飲食店・食品販売業に必要な資格 | 10,000円前後 |
費用は地域により異なる。講習受講が必須。 |
飲食店営業許可 |
飲食店を開業する際に必要な許可 | 16,000円~ |
費用は地域により異なる。 |
防火管理者 |
従業員を含め収容人数30人以上の飲食店に必要 | 5,000円~ |
費用は地域により異なる。 |
深夜酒類提供飲食店営業 |
午前0時以降に酒類を提供する飲食店 | 不要 |
警察署に提出。 |
風俗営業許可(1号~8号のいずれか) |
特定の営業形態に必要 | 24,000円 |
費用は地域により異なる。警察署への申請が必要。 |
開業届 |
個人事業として開業する際の届出 | 不要 |
税務署へ届出。 |
広告宣伝費5万円〜30万円
新しいスナックを知ってもらうために広告をする場合は宣伝費が必要です。
ホームページを作る、SNSで発信する、チラシを作るなど、客層に合わせたアピールを考えていきましょう。
ホームページを作成しておけば、来店前にお店の雰囲気を知ってもらえるので安心して来店してもらえる可能性があり、料金を掲示しておけばトラブル回避にもつながります。
ホームページを外注するにしても、こだわれば費用もかかりますが、シンプルなものにすれば比較的費用を抑えられます。
運転資金は最低3ヶ月分
開業してすぐに利益が出るかの保証があるわけではありませんので、当面の運転資金を準備しておくべきです。
運転資金は3ヶ月~6ヶ月分を見込んでおくのが一般的で、運転資金には人件費や仕入れ費、家賃などが含まれます。
現金支払いをするお客様が減っている時代なので、繁盛してもキャッシュレスの入金サイクルによっては手元にお金がないという期間が発生するかもしれません。
支払い方法による入金サイクルを予測して、余裕のある運転資金を準備するようにしましょう。
スナック開業に取得したい資格・届出
スナックを開業する際に必要になる資格や届出について、ご説明します。
- 店舗に必ず1人必要な「食品衛生責任者」
- 飲食店で必須の「飲食店営業許可」
- 従業員を含む滞在者数が30人以上なら「防火管理者」
- 深夜0時以降にお酒を提供するなら「深夜酒類提供飲食店営業許可」
- 接待行為を行うなら「風俗営業許可」
- 青色申告が可能になる「開業届」
店舗に必ず1人必要な「食品衛生責任者」
スナックなどの飲食店には、必ず1名食品衛生責任者が必要になります。
食品衛生責任者とは、食品衛生法に基づいて衛生管理を担う人です。
飲食店ではもちろん、食品メーカーや食品販売店など多くの事業で必要になる資格です。
各都道府県が実施する講習会を受講して、確認試験に合格すると資格取得となります。
学歴や職歴に関係なく、誰でも受講可能です。
すでに調理師や栄養士といった有資格者であれば、講習が免除される場合があります。
参照:一般社団法人東京都食品衛生協会|食品衛生責任者会場集合型養成講習会
飲食店で必須の「飲食店営業許可」
飲食店営業許可とは、食品衛生法に基づくもので、飲食業開業のために必要となる許可です。
食品衛生管理者を取得したら許可を受けられるようになりますので、まずは食品衛生管理者を取得します。
店舗の管轄地域の保健所に申請をし、審査に通過すれば許可書を取得できます。
参照:東京都保健医療局|営業許可・届出の概要
収容人数が30人以上なら「防火管理者」
防火管理者とは、店内での火災予防や初期消火、避難が必要であれば避難誘導の責任を負う者です。
従業員を含めた収容人数が30名以上になると、防火管理者の設置が義務付けられます。
スナックの規模によっては不要な資格なので、必要な場合に取得してください。
地域の消防署で講習を受け、資格を取得します。
参照:東京消防庁|防火・防災管理講習
深夜0時以降にお酒を提供するなら「深夜酒類提供飲食店営業許可」
深夜0時から午前6時の間にお酒を提供するのであれば、深夜酒類提供飲食店営業許可を取得しましょう。
所轄の警察庁の生活安全課を通じて、都道府県公安委員会に提出します。
オープンの10日前には提出できるようにすると良いでしょう。
許可なくお酒の提供を行うと、罰せられる可能性があります。
参照:警視庁|深夜酒類提供飲食店営業(様式一覧)
接待行為を行うなら「風俗営業許可」
風俗営業許可とは、風俗営業を行う許可を得るもので、都道府県の公安委員会に申請します。
接待行為を行うスナックは、風俗営業許可を取得しなければいけません。
接待行為とは、特定のお客様に対して個別に付き添い、飲食の相手をするなどの行為を継続的に行うことなどを指し、内容によって風俗営業の許可が必要となります。参照:警視庁|風俗営業
青色申告が可能になる「開業届」
開業届とは、個人事業主が事業開始を税務署に届け出るための書類です。
開業してから1ヶ月以内に管轄の税務署に提出することが定められています。
開業届を提出しておくと、青色申告で確定申告ができるようになります。
青色申告での確定申告を希望する場合は、青色申告承認申請書も合わせて税務署に提出しておきましょう。
日本政策金融公庫の融資申請のポイント
スナックの開業で融資を希望するのであれば、日本政策金融公庫の融資となります。
日本政策金融公庫の融資を申請する時や、審査通過のポイントについてお伝えします。
- 自己資金を準備しておく
- 事業計画書で信頼を得る
- 面談は自分の言葉でまっすぐ
- プロに融資のサポートを受ける
自己資金を準備しておく
お伝えした通り、スナックの開業には多くの資金が必要になりますので、自己資金が必要です。
日本政策金融公庫の融資を受けるとしても、自己資金があった方が望ましいのです。
自己資金がなくても融資が受けられる場合もありますが、だからといって全額融資を希望しても審査が通らない可能性が高いです。
自己資金が少ない場合、金融機関から「計画性に不安がある」と判断されることもありますので、ある程度の資金準備が望ましいとされています。
事業計画書で信頼を得る
日本政策金融公庫の融資申請時には、事業計画書を提出します。
事業計画書とは、文字通り事業内容を申告するものであり、返済能力を判断する重要な書類となります。
売り上げや返済計画は、根拠のある数値から計算して算出します。
具体的で実現可能なプランをわかりやすく示すようにしましょう。
面談は自分の言葉でまっすぐ
日本政策金融公庫の融資審査は面談があります。
事業計画の内容や資金調達の見込みなどについて聞かれますので、あらかじめ準備をしておきましょう。
どこかで聞いたことのあるテンプレートの使いまわしではなく、自分の言葉で熱意を伝えた方が印象が良くなるかもしれません。
飲食店開業の時には、面談時にメニューや内装イメージなど具体的な資料の持参も有効です。
より具体的に事業内容が伝えられるよう、これらの資料を準備しておけると良いでしょう。
プロに融資のサポートを受ける
一般的に日本政策金融公庫の融資審査通過率は、50%前後とされているため、事前にしっかりと準備をすることが大切です。
税理士は税のお悩みだけでなく、融資申請のサポートを行っております。
事業計画書の作成や融資希望額の設定、返済計画についてなど、より綿密な計画を練っていくためにはプロのサポートを検討することをおすすめします。
スナック開業の融資については税理士法人松本へ
相談するにあたっては、その業界に精通した税理士を選ぶべきであり、税理士であれば誰でも良いというわけではありません。
税理法人松本には飲食業界に精通した税理士が在籍しており、スナックの開業のご相談にも丁寧に対応しております。
スナック開業のために融資を検討している方は、税理士法人松本にご相談ください。
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