どんな業種であっても適切な税金の申告は欠かせません。
しかし申告漏れが多い業種のランキングが国税庁から発表されており、ナイト業界は税務署が目を光らせている業種であるといえます。
申告漏れ所得金額が高額な業種に、1位キャバクラ、2位には風俗業がランクインしており、水商売は脱税が多い業種としてマークされているといっても過言ではありません。
参照:国税庁|事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種
税務調査の対象になりやすいかもしれませんが、もし税務調査に入られたとしても、正しく税処理をしていれば問題はありません。
現金商売が色濃く残る水商売という世界で、どうクリーンに経理を管理していけばいいのでしょうか。
水商売の世界での税申告やキャストの確定申告について、
また税理士の必要性についてまとめました。
水商売の経理が覚えておきたい税金
水商売の経営も、一般的な会社経営と同様に税金が関与してきます。
キャストへの給料を手渡しで行っているお店も少なくありませんが、経理処理はしっかりしておかなければいけません。
水商売の経営では、以下のような場面で税金が関係してきます。
- ・キャストの報酬から徴収する源泉所得税
- ・法人の場合は法人税・法人住民税・ 法人事業税
- ・個人事業主の場合は所得税
- ・消費税の納付
経理や税金面に関して「知識不足だから」という理由で、
脱税していいものではありません。
水商売の税務調査
税務調査とは国税庁および税務署により行われるもので、
税務申告や納税が正しく行われているかを確認する手続きです。
税務調査も目的や内容、対象になりやすい水商売のお店の特徴についてお伝えします。
- ・水商売の税務調査の目的
- ・税務調査の対象になるお店とは
水商売の税務調査の目的
税務調査の目的は、税申告や納税が正しく行われているかを確認し、誤りがあれば追加課税をすることです。
水商売でお店を営業している時に突然訪れるケースもありますので、営業に支障が出る可能性があります。売上や経費を正確に記録しているか、水増し計上をしていないか、というように申請内容に誤りがないかを確認します。
調査官は帳簿を確認する権限を持っていますので、資料の提出を求められれば納税者は提出する義務があります。
税務調査の対象になるお店とは
税務調査は、悪質な納税者に強制的に行われる強制調査と、事前通知をして調査を行う任意調査があります。
任意調査であれば日程の調整はできますが、調査の拒否はできません。
税務調査の対象になりやすい水商売のお店とは、申告に以下のような不審点があるお店です。
- ・売上が不自然に少なく赤字が続いている
- ・経費が異常に高額である
- ・確定申告でのミスが多い
売上が少ない、経費が多いというように、利益を少なくみせようとしている場合は不正を疑われやすくなります。また確定申告でミスが多いと、健全な経営・申告をしていないお店であると判断されてしまう可能性があります。
水商売で経費となる勘定科目とは
勘定科目とは、取引する経費の内容を表す見出しです。水商売の経理が覚えておきたい勘定科目の内容は、以下のようになります。
現金主義で経営している場合は、特に後から記録を追うのは困難です。
取引があればその都度、帳簿をつけるようにして、間違いがないようにしましょう。
勘定科目 | 内容 |
---|---|
売上 | お客様の会計金額 |
仕入れ | お酒やおつまみなどの材料費 |
消耗品 | おしぼりなどの消耗品 |
給与 | キャストやボーイの給与 |
水道光熱費 | 水道代や電気代、ガス代など |
家賃 | お店の家賃 |
カラオケ代 | カラオケのリース/レンタル代 |
通信費 | wi-fiなどの通信費 |
雑費 | その他の費用 |
水商売で働くキャストの確定申告
キャストを雇っている場合、水商売のキャストは個人事業主となりますので、個人で確定申告が必要です。もしキャストが確定申告をせずに適切な税金を納めていないと発覚すれば、お店の経営の不正も疑われてしまうかもしれません。
水商売で働くキャストの確定申告について、お伝えします。
- ・キャストで確定申告が必要なケース
- ・キャストで確定申告が不要なケース
- ・キャストの経費となる勘定科目
キャストで確定申告が必要なケース
水商売のキャストの中には、確定申告が必要なケースとそうでないケースがあります。
以下のようなキャストは、確定申告が必要です。
- ・労働契約せずに個人事業主として勤務している
- ・労働契約しているが、給与が2,000万円以上
- ・副業で20万円以上の所得がある
- ・年度の途中で退職し、年末調整を受けていない
同じお店で働いていたとしても、確定申告が必要かどうかはキャストによります。
キャストで確定申告が不要なケース
一方、確定申告が不要なケースはこちらです。
- ・副業で所得が20万円以下
- ・年末調整を受けている
年間の副業所得が20万円以下の場合は申告が不要ですが、
他の副業もしていて合算で20万円超える場合には申告が必要なので注意しましょう。
またお店がキャストの年末調整を行っている場合も、キャスト個人で確定申告をする必要はありません。
キャストの経費となる勘定科目
キャストが個人で確定申告をする場合には、以下のような勘定科目を申請できます。
勘定科目 | 内容 |
---|---|
消耗品費 | お店で着用するドレスやバッグ代 |
交際接待費 | お客様へのプレゼント代など |
広告宣伝費 | 名刺などの宣伝費 |
通信費 | wi-fiなどの通信費 |
旅行交通費 | 同伴やアフターのタクシー代など |
雑費 | ヘアセット代など |
仕事のための経費であれば、勘定科目に含まれます。ドレスやバック、ヒールや化粧品といったものを購入したら、領収書を保管しておきましょう。
通信費はお客様と連絡をとるのに使用している場合に、申告できます。
化粧品や通信費はプライベートでも使用するものなので、
ボーダーラインが曖昧にならないよう注意しましょう。
水商売の経理で税理士を雇うメリット
水商売を経営していると、税理士を雇うのがおすすめです。経理で頭を悩ませているようであれば、プロのサポートを受けると、お店の経営に集中できるようになるためです。
水商売の経理が税理士を雇うメリットについて、お伝えします。
- ・経営の効率化
- ・ペナルティや追加課税の心配がない
- ・税務調査の時に心強い
経営の効率化
経理処理や税務関係の業務は、税理士でなくても行えます。
経営者自ら行うケースも少なくなく、「経営が軌道に乗るまでは自分で」「税理士を雇うと経費がかかる」と考えている人もいるでしょう。しかし慣れない作業はストレスになるかもしれませんし、時間がかかると休憩時間やリフレッシュのための時間を割かなくてはいけなくなります。
お店の経営に注力し、経営を効率化させていくためにも、
経理は税理士に相談するのがおすすめです。
ペナルティや追加課税の心配がない
税務処理を正しく行っていないと、ペナルティや追加課税の心配があります。
例えば、正当な理由なく申告期限内に申告をしなかった場合には、ペナルティとして無申告加算税が課されます。
税務申告が適切に行われていないと、追加課税として延滞税や利子税、加算税が課されます。故意ではないとしてもです。
お伝えした通り、水商売は脱税が多い業種であるため、税務署も目を光らせています。このようなリスクを回避するため、税理士をつけて税申告をするようにしておくといいでしょう。
税務調査の時に心強い
もしお店が税務調査の対象になった場合、帳簿を細かくチェックされ、正しく税務調査が行われているかを確認されます。申告額に不正があったと判断されれば、修正申告が求められ、追徴課税が発生します。
顧問税理士がついていれば、税務調査の時に立ち合いできるので心強い味方となります。調査官とのやり取りは顧問税理士が行いますので、適切な受け答えができるでしょう。
水商売の経理で税理士を雇うデメリット
水商売の経理で税理士を雇うのはメリットが多いですが、
デメリットとしては以下のような内容が挙げられます。
- ・税理士費用がかかる
- ・全てが丸投げではない
経営者自身で税務管理をすれば当然費用はかかりませんが、税理士に依頼すると相応の費用がかかります。
税理士を雇えるほどの利益が出ていなければ、税理士費用が負担になってしまうかもしれません。
また税理士に全てを丸投げしてしまうと費用がかさみますので、節税対策なのか経営のコンサルなのかというように、相談内容を絞っていくといいでしょう。
税理士に頼りきってしまうと、経営状況を正確に把握できなくなる可能性がありますので注意しましょう。
水商売に強い税理士の選び方
税理士にも得意分野がありますので、水商売の業界に強い税理士を選びましょう。
水商売に特化した税理士を選ぶポイントは、以下の3点です。
- ・ナイト業界の専門知識があるか
- ・コミュニケーションがスムーズに行えるか
- ・税務調査に強い税理士か
- ・無申告でも相談できるか
- ・プライバシーと機密性の保護に配慮してくれるか
ナイト業界の専門知識があるか
水商売でキャストを雇用していると、特殊な給料形態となり経費構造が複雑です。キャストは業務委託として報酬を支払う場合と、雇用報酬を支払う場合では税務処理が異なります。
売上の中にキャストへのマージンやチップが含まれている場合がありますし、水商売特有のキャンペーンや割引の処理の対応も必要です。
ナイト業界に精通しており、知識や経験が豊富な税理士であれば、適切な税務処理が可能です。
コミュニケーションがスムーズに行えるか
水商売の経営をしていくには、税理士とのコミュニケーションのスムーズさも重要になります。経営状況を定期的に報告していくと、税理士は経営判断に必要な情報を提供してくれます。
小さな疑問でも相談しやすい、信頼関係が築けているのが理想的です。キャスト個人の確定申告を任せられる税理士もいますので、不安な点があれば相談してみるといいでしょう。
税務調査に強い税理士か
水商売は税務調査が入りやすい業種のひとつなので、クリーンな申告を心がけなくてはいけません。それでも税務調査の対象になった場合には、税理士立ち合いで税務調査を受けると安心です。
税務調査に強い税理士は、「事前準備でなにをしておくべきか」「調査官の質問の意図は」「税務調査での注意事項」などを熟知しています。
無申告でも相談できるか
水商売の業界では、「経理に疎いから」という理由から無申告の状態が続いているという店舗もあります。
無申告はペナルティの対象となり、納付すべき税額に対して50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の金額が加算されます。少なくとも過去5年分の税金と追徴税額の納付が求められ、多大なペナルティを受ける可能性があります。
このような無申告の状態であれば、税理士契約を断られるケースもありますので、サポートしてくれる税理士を選びましょう。
プライバシーと機密性の保護に配慮してくれるか
水商売では機密性の保護が求められる情報が多く存在します。
税理士は外部にこのような情報が漏れないよう、適切に情報を管理し、さらにセキュリティ対策を講じていかなければいけません。
情報の機密保持に関する方針が明確である税理士を選ぶのは、水商売経営を継続させていくためにも重要な項目であるといえるでしょう。
水商売の経理で税理士を雇うべきか
水商売の経理や税務処理は、必ず税理士が行わなければいけないというわけではありません。お伝えした通り税理士には経費がかかりますので、経営状況も無関係ではありません。
まずはご自身でやってみるという経営者の方も少なくありませんので、ご自身で確定申告を行ってもいいでしょう。
将来的に税理士に依頼するという場合でも、ご自身で知識を持っていた方が良いのは間違いありません。
オープン前から税理士に依頼される方ももちろんいらっしゃいますが、規模や要望に合わせて必要かを判断していきましょう。
水商売はクリーンな経理を
キャバクラや風俗業といった水商売に関する業種は、申告漏れ所得が多い業種として知られています。必ず税理士に依頼する必要はありませんが、税理士がついていると経営面で力になれるシーンが多いでしょう。
節税や経営コンサルティング、税務相談や税務調査の対応といったご相談に対応できますので、お困りごとがあればお気軽に税理士にご相談ください。