どのような商売であっても、売上があり、儲けが出ている場合は税金を支払わなければなりません。それは、キャバクラやホストクラブ、ガールズバーなどの水商売でも同じことです。
水商売を経営している方の中には、支払いが必要となる税金について詳しく把握しきれていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、水商売の経営者が知っておきたい水商売に関連する税金と税金がいくらくらいになるかの目安となる税額の計算式ついてご説明します。



水商売の経営者が支払う税金は5種類

キャバクラやホストクラブ、ガールズバーなどの水商売のお店を経営している場合、支払うべき税金は以下の5つとなります。
まずは、それぞれの税金の概要をご説明します。

法人税

法人税とは、法人である会社の1年間の所得に対して課せられる税金で、国に支払う国税です。所得とは利益のことで、売上額から経費を差し引いた額のことです。キャバクラやホストクラブ、ガールズバーなどの水商売の場合は、お酒の仕入代金や人件費、店舗の家賃、光熱費などが経費となります。
法人税がいくらになるかは、この所得額に法人税率をかけることで求められます。つまり、法人税の計算式は「所得×法人税率」となります。法人税率は、法人の種類や資本金、所得額に応じて異なる割合となっています。また、法人税は所得に対する税金となるため、もし経営が赤字になっていた場合は課税されることはありません。

法人事業税

法人事業税は、法人が事業を行うことに対して課せられる税金です。法人が事業を行うにあたっては地方団体の各種行政サービスの提供をうけています。そのためサービスの提供に必要な経費分を分担するため、法人にも支払いが求められている税金です。法人事業税は会社を設置している都道府県に収める都道府県税となっています。
法人事業税がいくらになるのかは「所得×法人事業税率」の計算式で求めることができます。法人事業税率は法人の種類や資本金の額、課税所得額、事業開始年度などによって定められています。また、法人事業税は都道府県税であるため、法人事業税率は都道府県によっても異なります。

法人住民税

個人も地域社会を構成する一員として、地方自治体の公的なサービスを受けているため住民税を支払う必要があります。同様に、法人も自治体の公的サービスを利用しているため法人として支払いが必要となる税金が法人住民税です。
会社がある都道府県と市区町村にそれぞれ、都道府県民税と市区町村税を支払うこととなります。法人住民税は、資本金の額や従業員数に応じて低額の負担を求める「均等割」と法人税額に応じた負担を求める「法人税割」の2つに分けられています。
法人住民税の額がいくらかの計算をする際には、「法人税割(法人税額×住民税率)+均等割」の計算式で求めることができます。

消費税

消費税は、物を販売したりサービスを提供したりすることに対して課税される税金です。キャバクラやホストクラブ、ガールズバーなどの水商売では、お客に提供する飲食代に消費税を上乗せして請求します。お客から預かった消費税分は、お店側がお客に代わって納税することとなります。売上にかかる消費税額から仕入にかかる消費税額を差し引いた金額が消費税の納付税額となるため、納付すべき消費税額は「売上で預かった消費税額-仕入で支払った消費税額」の計算式で求めることができます。

源泉所得税

法人が人を雇って給与や報酬を支払っている場合は、予め給与や報酬から支払額に応じた所得税を差し引かなければなりません。差し引いた所得税に関しては、原則として給与や報酬を支払った月の翌月10日までに法人が国に納付することとなっています。これを源泉徴収義務と言います。
したがって、キャバクラやホストクラブ、ガールズバーなどの水商売のお店を営んでいる場合、キャバ嬢やホスト、ホステスなどに支払った給与や報酬から所得税を源泉徴収し、納税する義務が経営者にはあるのです。
源泉徴収すべき額がいくらになるかの計算は、報酬の場合「(報酬-5,000円×その月の日数)×10.21%」の計算式で求めることができます。
詳しくはこちら:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2807.htm

納税をしなかった場合のリスク

水商売を経営するうえでは、先ほど紹介した税金の納税が必要となります。もし、納税を怠った場合には、どのようなリスクが考えられるのでしょうか。

無申告加算税などが加算される可能性がある

キャバクラやホストクラブ、ガールズバーなどを経営して得た利益を申告せずに、税金を納めていない場合は、罰則として無申告加算税、延滞税などの追徴課税が行われます。
税務署の税務調査が入る前に、自主的に修正申告を行って納税する場合には納付すべき税額の5%が上乗せされます。しかし、税務調査後に無申告が発覚した場合には当初の申告納税額が50万円までは15%相当額、50万円を超える部分に関しては20%相当額が上乗せされます。所得税の納税を怠ったことで、ペナルティとして納める必要がある税額がぐっと増額されてしまうのです。

悪質だと判断された場合には刑事告発される可能性がある

無申告の期間が長期に渡る場合や無申告額が多額となる場合など、悪質だと判断された場合は刑事告発される可能性もあります。刑事告発まで発展する事態になれば「脱税」の罪に問われることとなります。脱税の場合は、延滞税や無申告加算税よりも重たいペナルティが課せられ、本来の納税額の35~40%に相当する額が重加算税として加算されるようになります。

納税に不安がある場合は税理士に相談を

水商売は無申告や過少申告など、税務上のトラブルが多い業種として知られています。そのため、税務調査に狙われやすい業種でもあります。税務調査に入り、無申告の状態が発覚すると多額の税金を請求される可能性があります。
これまで税金を納め忘れていた場合でも、さかのぼって納税することも可能です。納税や申告に関して不安がある場合には、一度、水商売の分野に強い税理士に相談することをお勧めします。



まとめ

キャバクラやホストクラブ、スナックなどの水商売のお店を経営する場合、法人税、法人事業税、法人住民税、消費税、源泉徴収分の税額を納める必要があります。もし、これらの税金を納めていなかった場合には、延滞金等の追徴課税が行われ、本来の税額以上の税金を支払わなければならなくなります。また、悪質性が認められた場合には行政処分にとどまらず、刑事告発されて「脱税」の罪に問われることとなります。
もし、ここまでお読みいただき、納税に関して疑問や不安を抱いているようでしたら、早めに税理士に相談してみてはいかがでしょうか。