
収益が確保できているホステスであれば、法人化を検討することで、税負担の軽減や社会的な信頼性の向上といったメリットを得られます。
本記事では、ホステスが法人化するメリット・デメリットについて紹介します。
他にも「ホステスが法人化するタイミング」や「ホステスを法人化する手続き」についても解説していきます。
ぜひこの記事を参考にして、ホステスの法人化を検討してみてください。
ホステスが法人化するメリット
ホステスが法人化するメリットについては、以下の4つが挙げられます。
- 節税対策
- 社会的信用度の向上
- 有限責任になる
- 社会保険に加入できる
それぞれのメリットについて解説していきます。
節税対策
法人化するメリットの一つとして、節税対策が挙げられます。
個人事業主に適用される累進的な所得税制度から離れ、法人税の体系を活用することが可能です。
法人税は所得が増加しても税率の上昇が緩やかなため、特に高収入の方には節税面で有利に働きます。
また、法人にすることで、交際費や出張費などの支出が事業経費として認められる範囲が広がり、経費計上による節税が見込めます。
さらに、法人化により、個人事業主のときには扱えなかった以下のような支出を法人の経費として計上できるようになります。
- 社宅にかかる費用
- 役員報酬
- 一定の交際費
上記のように、実質的な税金の負担を軽減することにつながります。
ただし、これらは法人であってもすべてが経費となるわけではなく、税務上の要件を満たす必要があります。
参考:必要経費の知識|国税庁
社会的信用度の向上
法人化することで、個人事業主に比べて社会的な信用を得やすいメリットが挙げられます。
資金調達の面では、個人として借り入れるよりも、法人名義で融資を申し込むほうが金融機関からの信頼を得やすく、審査が有利に働くことがあります。
また、新規事業を法人として開始する際には、新たな取引先の開拓が必要となりますが、「法人にしか取引を行わない」「法人向けに特別価格を設定する」といった取引条件を提示されることもあるので、営業活動や取引の幅を広げやすいというメリットもあります。
有限責任になる
法人化すれば、経営者の個人的な負担は有限責任により軽減されます。
法人は有限責任の原則により、会社の債務は法人自体の資産の範囲内で責任を負います。
一方、個人事業主の場合には、すべての責任を個人が負わねばならないデメリットがあるのも事実です。
そのため、法人化することで資産のリスクを抑えつつ、挑戦的な事業戦略を実施することが可能です。
ただし、銀行融資などで代表者個人が連帯保証を求められる場合も多く、有限責任でも実務上は個人資産が影響を受けることもあります。
参考:有限責任 | 会社法 | 用語解説 | CIAC.JP
社会保険に加入できる
資本金が一定額以上かつ従業員がいる会社は原則として社会保険への加入が義務付けられています。(資本金が少額でかつ代表者のみの法人の場合は加入条件が異なります。)
厚生年金や健康保険は、従業員の福利厚生を支える基盤であり、これらの制度を通じて医療や年金といった生活面の安心が得られるメリットがあります。
このような保障は、従業員の生活の安定を支えるだけでなく、働く意欲の向上や、優秀な人材の確保にもつながる重要な要素になります。
参考:社会保障制度 | 文化庁
ホステスが法人化するデメリット
ホステスが法人化するデメリットについては、以下の3つが挙げられます。
- 設立費用がかかる
- 赤字でも税金の支払いが必要
- 運用コストが増加する
それぞれのデメリットについて解説していきます。
設立費用がかかる
法人化するデメリットとして、設立費用がかかることが挙げられます。
会社を立ち上げるには、まず定款の作成とそれに対する公証人の認証、さらに登記などいくつかの手続きを行う必要があります。
特に株式会社の設立においては、定款の認証費や登録免許税といった諸費用が発生してしまうので、開業時の資金面での大きな負担となってしまうリスクがあります。
設立にかかる費用は会社形態によって異なります。
例えば、合同会社の場合は約6万円~10万円程度で設立できますが、株式会社では20万円~30万円ほどの初期費用がかかることに加え、資本金の用意も必要になります。
法人化を検討する際には、あらかじめ必要な設立費用を把握しておきましょう。
参考:合同会社の設立手続について|法務省/株式会社の設立手続(発起設立)について|法務省
赤字でも税金の支払いが必要
法人形態で事業を行っている場合には、収益がマイナスであったとしても、法人住民税のうち「均等割」と呼ばれる部分は免除されないので税金を納める必要があります。
均等割は法人の資本金の額や従業員数に応じて算定され、所得にかかわらず課税されるため、赤字の法人にも最低限の税負担が生じます。
具体的には、所在地の自治体によって税額は異なりますが、東京都の場合だと、年間で最低でも7万円の均等割が課税されてしまいます。
運用コストが増加する
法人化を検討する際に注意したいのが、運営コストの増加です。
法人になると、会計・税務・法務の手続きが複雑になり、個人事業主の頃よりも管理業務が増加します。そのため、税理士や会計士などの専門家に依頼するケースが一般的となり、顧問料や決算書類作成費用などのコストが発生します。
一方で、税理士に依頼し複雑な会計処理や税務申告を専門家に任せることで、法令遵守を徹底しつつ、経営者ご自身は本業に専念できるようになるといったメリットもあります。
法人化によって運営の負担は増えるものの、税理士などの専門知識を活用することで、リスクを抑えつつ効率的な経営体制を構築することをおすすめします。
ホステスが法人化するタイミング
ホステスが法人化するタイミングについては、以下の3つが挙げられます。
- 年間所得が800万円を超えたタイミング
- 事業拡大のタイミング
- 従業員を増やすタイミング
それぞれのタイミングについて解説していきます。
年間所得が800万円を超えたタイミング
個人事業から法人化を検討するタイミングの一つに、年間所得が800万円を超える頃が挙げられます。
所得税は累進課税制度であるため、個人事業としての所得が増えるほど税率も高くなります。特に、所得が800万円を超えると、法人化によって税率が緩やかになり、結果として税負担が軽減されるケースもあります。ただし、節税効果の有無は事業の実態や経費の性質によって異なるため、具体的なシミュレーションが重要です。
また、個人事業主として課税売上高が1,000万円を超えると、原則としてその2年後から消費税の納税義務が発生します。一方で法人化すれば、「新設法人の消費税免税制度」により、一定の条件を満たす場合は設立から最大2年間、消費税の納税が免除される可能性があります。
このように、所得税および消費税の観点からも、所得が800万〜900万円に近づいてきたタイミングで法人化を検討することで、税負担の最適化が図れる可能性があります。
事業拡大のタイミング
法人化するタイミングとして、事業拡大のタイミングが挙げられます。
法人であれば社会的信用が高まり、より多くの企業とスムーズに取引を行える可能性が広がります。
実際に、新たな事業展開やビジネスの規模拡大を目指す際には、相応の資金を確保する必要が出てきます。
個人事業主のままだと、取引先によっては信頼性を理由に取引を敬遠されたり、口座の開設を断られたりすることもあります。
このような問題も、法人化を進めることで解消されやすくなります。
従業員を増やすタイミング
事業の拡大に伴って業務量が増加し、人手が足りないと感じ始めたときは、法人化を検討するタイミングと言えます。
実際に、会社が成長し続ける中で、業務を効率的に回すには新たな人材の確保が欠かせません。
法人として組織を整備することで、採用活動がスムーズになり、求職者からの信頼も得やすくなります。
しかし、従業員の社会保険料や厚生年金の企業負担分、福利厚生などのコストが発生するため、費用負担と売上の状況を照らし合わせながら、増員計画を練ることが重要です。
ホステス業を法人化する手続き
ホステス業を法人化する手続きには、以下のとおりです。
- ステップ①:必要事項を決める
- ステップ②:定款作成と認証
- ステップ③:資本金払込
- ステップ④:登記の申請
それぞれの手続きについて解説します。
ステップ①:必要事項を決める
法人を立ち上げる際には、設立の準備段階で新たな会社の基本方針を明確にしておくことが重要です。
たとえば、以下のような項目について、事前に検討・決定しておくことが求められます。
- 社名(商号)はどのような名称にするか
- その名称が他社に使用されていないか、使用可能かどうか
- 会社として取り組む事業の内容は何か
- 会社設立の適切なタイミング
- 資本金をいくらに設定するか
- 取締役会など、会社内部の組織体制をどう構築するか
これらの事項は、法人化の手続きを始める前にしっかりと方針を定めておかなければ、途中で方針がぶれてしまい、設立にかかる時間や労力が増えてしまうリスクがあります。
また、会社の定款に記載する情報は、一度登録した後に修正する場合、手数料などのコストが発生することもあるため、初期段階で慎重に決定することが重要です。
ステップ②:定款作成と認証
会社の基本的な内容が確定した後、その情報をもとに「定款」と呼ばれる会社の根本ルールをまとめた文書を作成し、公証役場で認証を受ける必要があります。
定款とは、会社の目的や名称、所在地など運営の核となる情報を網羅した重要な文書です。
従来では紙で作成・提出するのが主流でしたが、近年ではPDF形式などの電子データによる作成・申請も可能となっており、作業効率が向上しています。
基本事項が明確に決まっていれば、それを踏まえて必要な情報を記載するだけでスムーズに作成できます。
しかし、定款には必ず記載しなければならない項目と、任意で記載できる項目があり、その違いを理解するには一定の知識が求められます。
すべて自分で対応して認証を受けることも可能ですが、実際には専門家のサポートを受けるケースが一般的です。
ステップ③:資本金払込
次に、事業の基盤となる資本金の払込みが必要です。
資本金の払込みは「その事業に対する自己資金の裏付け」として重要な意味を持ちます。
実際に、自分がどれだけ資金を投じたかを明確に示すことは、将来的な信用にもつながります。
資本金の払込みに関しては、「払込みが行われたことを証明する書類」が求められます。
自分名義の銀行口座に資本金相当額を入金、または振り込むことで、その要件を満たすことができます。
ステップ④:登記の申請
最後に、会社の設立に関する登記手続きを法務局に対しておこないます。
登記手続きで提出が求められる主な書類には、以下が挙げられます。
- 登記申請書
- 定款の写し
- 発起人による決議書
- 出資金の払い込みを証明する書類
- 印鑑証明書
- 印鑑届出書
会社の組織体制によって、必要とされる書類が異なることがありますので、あらかじめ注意が必要です。
登記の申請方法としては、直接法務局の窓口に出向いて提出する方法や郵送、オンラインなどでの申請も受け付けています。
申請が無事に受理されれば、通常は1週間程度で手続きが完了し、正式に法人としての登記が完了します。
ホステスが法人化する際の注意点
ホステスが法人化する際の注意点については、以下の3つが挙げられます。
- 個人事業主廃業後も確定申告をおこなう
- 事業税の支払いが必要
- 再び個人事業主に戻るには煩雑な手続きが必要
それぞれの注意点について解説していきます。
個人事業主廃業後も確定申告をおこなう
個人事業を廃業した場合でも、その年の所得が一定額を超える場合には、確定申告が必要です。
廃業までの期間に得た収入や経費を計算し、他の所得と合わせて、翌年の2月16日から3月15日までの確定申告期間に申告を行う必要があります。
廃業したからといって、その年の確定申告が不要になるわけではありませんので、事前に準備しておきましょう。
参考:確定申告|国税庁
事業税の支払いが必要
個人事業を廃業した場合は、廃業日から1か月以内に廃業届を提出する必要があります。
また、個人事業税については、年間の課税所得が290万円を超える場合にのみ納税義務が発生します。
通常は所得税の確定申告書や住民税の申告書を提出していれば、個人事業税の申告書を別途提出しなくてもよい自治体が多いです。
なお、個人事業税は原則として支払った年の必要経費に計上できますが、廃業後に支払った場合には、会計上の処理方法やタイミングによっては経費計上が難しいケースもあります。廃業前の未払計上など、適切な処理が求められます。
再び個人事業主に戻るには煩雑な手続きが必要
一度法人化した後に個人事業主へ戻るには、個人から法人を設立する場合とは違い、かなり煩雑な手続きを踏まなければいけないので注意が必要です。
まず最初に法人としての事業を終了させる「解散・清算」の手続きが求められます。
また、法人を閉じた事実を株主や取引先などの関係者に周知させるために、官報などでの公告も必要になります。
これらの一連の流れには金銭的な負担だけでなく、時間や労力もかなりかかってしまうので、慎重な対応が必要になります。
ホステスの法人化は慎重に考えよう!
今回は、ホステスが法人化するメリット・デメリットについて紹介しました。
ホステスを経営していて、法人化を検討する際には、適切なタイミングや会社形態の選択など、多くのポイントを慎重に見極める必要があります。
税金面や設立にかかる手間を踏まえると、安定した収益が見込めるようになってから法人化するのが望ましいと言えます。
法人化にはメリットとデメリットがあり、すべてのケースにおいて有利とは限りません。まずはご自身の事業の状況を把握した上で、必要に応じて専門家と相談しながら、慎重に検討を進めることをおすすめします。
免責事項
当ブログのコンテンツ・情報について、できる限り正確な情報を提供するように努めておりますが、正確性や安全性を保証するものではありません。 当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。