お酒を提供したり、深夜まで営業したりする飲食店は数多く存在しますが、中でも、キャバクラやスナックよりも気軽でリーズナブルに楽しめるガールズバーは近年人気が高く、開業を計画している方もいるでしょう。
しかし、ガールズバーを開業するにあたって注意しなければならないのは、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)の取り扱いであり、実は、風営法違反により摘発されるガールズバーも多く存在するのです。
本記事では、ガールズバーを開業する際の注意点や風営法違反となるケースについて解説します。
特に、「接待行為」については厳しい決まりがあり、知らずに違反している場合もありますので、ぜひこの記事を参考に、風営法に関する理解を深め、正しく営業を行いましょう。
ガールズバーとは
そもそもガールズバーとは、女性スタッフが中心のお酒などを提供する店です。
キャバクラと比較するとよりカジュアルな雰囲気で、お客さんとはカウンターを挟んで会話を楽しむ接客スタイルとなっています。
ノルマを設定していない店や、店の衣装も制服やカジュアルな私服で良い店が多いため、他の夜職と比べてキャスト自身も働きやすいのが特徴です。
ガールズバーの開業に必要な手続き
ガールズバーを開業・運営していくためは、行政面で以下の手続きが必要になります。
- 食品衛生責任者の選任(保健所)
- 飲食店営業許可証の取得(保健所)
- 深夜酒類提供飲食店営業届の取得(警察署)
それぞれについて、詳しく説明していきます。
食品衛生責任者の選任
まず、飲食店を営業するためには、食品衛生法の規定に基づき、「食品衛生責任者」を選任しなければなりません。
食品衛生責任者というのは、食材や設備、スタッフの健康など、店舗を営業するにあたっての衛生面全般をマネジメントする役割を担います。
資格を取るためには、開業する店舗がある地域を管轄する保健所が行う食品衛生責任者講習会を受講し、合格する必要があります。
飲食店営業許可証の取得
飲食店を開業するために、「飲食店営業許可証」を取得する必要もあります。
大きな流れとしては以下の通りです。
- 保健所に事前相談
- 飲食店営業許可申請
- 施設検査日時の予約
- 施設検査
- 営業許可書交付
中でも重要であるのが、はじめの事前相談で、設備や構造の要件をクリアしなければ許可証を取得することができないため、施設の工事着工前に施設の設計図面等を確認してもらうのが望ましいです。
深夜酒類提供飲食店営業届の取得
一般的にガールズバーは午前0時以降も営業しているケースが多いです。
深夜0時~朝6時の時間帯に営業しお酒を提供するのであれば、所轄の都道府県の警察署への「深夜酒類提供飲食店営業届」も必要となります。
ただし、深夜にお酒を提供する飲食店であっても、ご飯を主に提供する定食屋などの飲食店の場合は届出は不要であり、深夜酒類提供飲食店営業届は、お酒を主に提供しているかどうかがポイントです。
接客行為があるなら風俗営業許可が必要
先程、ガールズバーを開業するうえで必要な行政手続きをご紹介しましたが、注意点として、深夜酒類提供飲食店として営業するガールズバーでは、接待行為をしてはいけません。
なぜなら、接待行為は風俗営業許可が下りていなければできないからです。
接待行為がどのようなものにあたるかは後述しますが、接待行為を含むガールズバーを営業するのであれば、深夜酒類提供飲食店営業届ではなく、風俗営業許可申請を行う必要があります。
深夜酒類提供飲食店営業届との併用ができない
深夜酒類提供飲食店では接待行為ができない点について、風俗営業許可も両方とれば良いと考える方もいるでしょうが、ここで気をつけなければならないのは、風俗営業許可と深夜酒類提供飲食店としての届け出は両立できないということです。
風俗営業許可を得た場合、深夜の営業が原則として認められていません。
そのため、経営者はキャバクラのように接待行為ができる店にするのか、多くのガールズバーのように接待行為をせず深夜の営業を行うのか、いずれの方向で営業をするのか、開業前に選択する必要があるのです。
深夜酒類提供飲食店営業と風俗営業許可の違い
深夜酒類提供飲食店営業と、スナックやキャバクラ、キャバレーなど、風俗営業許可の中でも最も多い風俗営業1号許可とでは、主に以下の点で違いがあります。
【深夜酒類提供飲食店営業と風俗営業許可の違い】
風俗営業1号許可 | 深夜酒類提供飲食店営業 | |
---|---|---|
接待行為の可否 | 可能 | 不可能 |
営業時間 | 原則深夜0時まで | 制限なし |
保護対象施設要件の有無 | 有 | 無 |
人の要件(欠格要件) | 有 | 無 |
客室の面積要件 | 2室以上ある場合は16.5㎡以上 | 2室以上ある場合は9.5㎡以上 |
客室の明るさの要件 | 5ルクス以上 | 20ルクス以上 |
ガールズバーが風営法違反で摘発されるとどうなる?
無許可営業として警察に摘発された場合、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金を受ける恐れがあります。
実際、初犯の場合は罰金刑で済むケースが多いですが、前科がつくという点を忘れてはいけません。
さらに、行政法上の罰として、営業停止や営業許可の取消しなどを受ける場合もあるため、ガールズバーを運営していくためには風営法について正しく理解し、違法行為をしないよう注意する必要があるのです。
ガールズバーではNG!風営法上の「接客行為」とは
風営法上の接待行為とは、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」と定義されています。
歓楽的雰囲気を醸し出すというのは、単なる飲食行為ではなく、慰安や歓楽を期待して来店する客に対して、店側がそれに応えるために積極的に客を喜ばせるサービスを提供するということで、キャバクラやホストクラブ等をイメージすると分かりやすいです。
では、深夜酒類提供飲食店であるガールズバーで禁止されている接客行為とはどのようなものか、詳しく見ていきましょう。
スキンシップ
深夜酒類提供飲食店であるガールズバーで、キャストが接客する際にお客さんに対して身体を密着させるように座ったり、必要以上に身体に触れるなどしたりするなどのスキンシップは接待行為となるため、風営法違反となります。
これに派生して、チェキ撮影やツーショット撮影も同じく接待にあたる恐れがあるので注意が必要です。
ただし、社交儀礼上の握手や荷物やコートを預かるといった行為や、酔った客や体調不良の客を介抱するなど、必要な限度で接触する場合は接待行為に該当しません。
談笑・お酌
客と談笑したり、お酌をしたりすることも接客行為となるため、深夜酒類提供飲食店のガールズバーでは禁止されています。
例えば、特定少数の客の近くに継続して待機し、会話をしたり、酒等の飲食物を提供したりする行為がこれにあたります。
ただし、お酌をしても速やかにその場を立ち去る行為や、カウンター内で酒を提供するだけの行為、そして若干の世間話をする程度の場合であれば、接待行為にはなりません。
ガールズバーで特定のお客さんと世間話が長くなるような場合は注意しましょう。
ダンス・ショー
特定少数の客に、その客のためだけに供している客室、もしくは客室内の区画された場所において飲食物を提供しながらダンスやショーを見せたり生演奏を聴かせたりする行為は、接待行為にあたります。
判断ポイントとしては、対象の客が特定であるか、仕切られた場所であるかという点です。
ただし、ホテルのディナーショーのように、不特定多数のお客さんに対してダンスやショーを見せたり聴かせたりする場合は、接待行為にあたらないとされています。
遊戯・ゲーム
キャストが特定少数の客と一緒に、遊戯やゲーム、競技を行うことは接待に該当します。
ここでの遊戯やゲームというのは、トランプやテレビゲーム、ダーツ、ビリヤードなど様々なものが対象となります。
一方、客一人や客同士でゲームや遊戯、競技を行わせることは、すぐには接待だと判断されないものの、客とキャストとの関わり方によっては接待と判断される恐れもあるので気をつけましょう。
カラオケでのデュエット・手拍子
特定少数の客に対してカラオケをすすめ、デュエットしたり、拍手や手拍子をしたり、褒めはやしたりする行為は接待行為にあたります。
一方、ガールズバーでカラオケを提供するだけ、曲やマイクを準備するだけでは接待に該当しません。
ただし、客からデュエットして欲しいと頼まれてしまうこともあるでしょうし、客が歌い終わった時に拍手をして褒めはやす行為をしてしまいがちなので、注意しましょう。
ガールズバーを経営する際の注意点
ガールズバーの経営者は、風営法違反とならないよう十分注意して店を営業しなければならないのはもちろん、以下の点にも気をつけなければなりません。
- 従業員への教育
- 未成年者の雇用
- 用途地域の確認
- 専門家への相談
ここでは、ガールズバーを開業・経営するための注意点について詳しく説明していきます。
従業員への教育を徹底する
深夜酒類提供飲食店営業届を取得したガールズバーである場合、接待行為が許されないと経営者は把握していても、従業員が知らずに接客行為を行なってしまう危険性があります。
たとえ従業員が行ったものであっても責任は経営者にあるため、風営法に違反しないように従業員への教育を徹底することが重要です。
どのような行為が接客行為にあたるのかを従業員一人ひとりに説明し、注意喚起する必要があるでしょう。
未成年者を雇わない
ガールズバーが摘発される理由は風営法違反だけではなく、働くキャストの年齢もあります。
労働基準法では基本的に、業種を問わず満18歳に未満の人を深夜時間(午後10時から翌日午前5時まで)に働かせてはいけないことになっているのです。
また、風営法においても18歳未満の人を客に接待させることを禁止としています。
雇用する際に年齢確認をしない店や、18歳未満だと知ったうえで採用し、深夜時間に働かせる店、そして20歳未満で飲酒をさせる店は違法店として摘発される恐れがあるため、キャストの採用には十分注意しなければなりません。
物件の賃貸契約の前に用途地域の確認をする
ガールズバーを開業するにあたり、物件を賃貸契約を締結する前に用途地域の確認をしなければなりません。
用途地域とは、都市において快適・安全・住み良く暮らせるよう、地域の用途や建てられる建物の種類を制限しているもので、基本的には、商業地域もしくは近隣商業地域でなければ、深夜酒類提供飲食店の開業ができないとされています。
また、各自治体によって、開業できる場所に個別のルールが設けられているケースもあるため、注意が必要です。
用途地域については、各市町村役場に問い合わせをするか、インターネットで確認することができるため、必ずチェックするようにしましょう。
分からないことは専門家に相談する
ガールズバーを開業するには、経営者は様々な法律や規則に精通していなければなりませんが、複雑で分かりにくい場合は以下の専門家に依頼するのが望ましいです。
- 法律に関すること・・・弁護士
- 営業の許可申請関連・・・行政書士
- 節税対策、確定申告等の税務関連・・・税理士
特に、ガールズバーを開業したにも関わらず、全く確定申告をしないケースがありますが、無申告加算税や延滞税など、後に多大な税額を課されてしまうため、絶対にやめましょう。
それぞれの専門家に依頼することで開業がスムーズにかつ安全に行えるでしょう。
ガールズバーの接待行為に注意
ガールズバーを深夜酒類提供飲食店として営業するのであれば、風営法許可が必要な「接待行為」を行わないと明確にし、従業員への教育を徹底しなければなりません。
深夜酒類提供飲食店の許可しか得ていないガールズバーでは、以下の接客行為が風営法違反となります。
- スキンシップ
- 談笑・お酌
- ダンス・ショー
- 遊戯・ゲーム
- カラオケでのデュエット・手拍子
違法店に対しては、懲役刑や罰金刑などの重いペナルティが課されるほか、店としてもトラブルに繋がりやすい傾向にあるので注意が必要です。
ぜひこの記事を参考にガールズバーと風営法に関する正しい知識を身に着けて、安心・安全な経営に努めていただけたら幸いです。
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