
風俗業を含む自由業で働く方は、一般的なアルバイトよりも高収入を得やすい傾向にあります。
収入が増えると、「扶養の範囲内にとどまるべきか」「扶養を外れるべきか」といった点が気になる方も多いのではないでしょうか。
特に親御様の扶養に入っている場合、扶養から外れることで収入や職業について質問を受ける可能性もあります。
本記事では、こうしたケースにおいて、必要な手続きや注意点を整理し、税務上・社会保険上の観点から親バレのリスクを抑えるためのポイントをご紹介します。
税法上の「扶養」のキホン
「扶養を外れる」「扶養に入る」などの表現がありますが、そもそも「扶養」とはどんなものなのでしょうか?
扶養の意味だけでなく、税法上の扶養および社会保険上の扶養についてご説明します。
- 「扶養」の意味を知ろう
- 風俗キャストは個人事業主
- 税法上の扶養|48万円の壁
- 社会保険上の扶養|130万円の壁
「扶養」の意味を知ろう
「扶養」とは、一般に「経済的に自立していない方を支え、生活を援助すること」を指します。
たとえば学生など、自分自身で生計を立てることが難しい方は、親御様の扶養に入って生活を送っているケースが一般的です。
その後、収入を得て一定程度の生活費を自己負担できるようになると、税法上または社会保険上の基準により、「扶養を外れる」扱いとなる場合があります。
よく「〇〇の壁」といわれる、扶養を外れるボーダーラインがいくつかあります。
紛らわしいですが、税法上の扶養や社会保険上の扶養は別物となりますので注意しましょう。
風俗キャストは個人事業主
風俗業に従事される方の多くは、給与所得者ではなく、業務委託契約に基づき報酬を受け取る「個人事業主」として扱われるケースが一般的です。
この場合、給与所得者とは所得区分や課税の取扱いが異なるため、適用される税制上の「収入の壁」も異なります。
たとえば、「103万円の壁」や「106万円の壁」などは、あくまで給与所得者を対象とした基準であり、個人事業主には直接関係しない点にご注意ください。
風俗で働くキャストが知っておきたい、「48万円の壁」と「130万円の壁」についてご説明します。
税法上の扶養|48万円の壁
年間所得(収入から経費を差し引いた金額)が48万円を超えると、税法上の扶養控除(配偶者控除等)の対象外となる場合があります。
給与所得者の103万円の壁と同様の内容であり、税法上の扶養を外れると、自分で所得税や住民税を納める義務が生じます。
自身で確定申告をし、前年の所得に応じて所得税や住民税の金額が決まります。
所得税は確定申告と同期限となっており、1年に1回、2月16日~3月15日までに納めます。
住民税は自宅に支払い用紙が郵送されますので、その金額を納めます。
納期限は6月、8月、10月、翌年1月の各末日となっており、年4回に分けて支払います。
参考:扶養控除|国税庁
社会保険上の扶養|130万円の壁
社会保険の被扶養者となることで、扶養者の健康保険・年金に加入できます。
会社勤めをしている親の扶養に入っている場合は、親の勤務先の社会保険に加入しているケースが一般的です。
しかし、所得が130万円を超えると、社会保険上の扶養から外れるようになります。
扶養から外れると、自分で国民健康保険に加入して保険料を支払います。
国民健康保険料は所得を基に算定されますが、地方自治体ごとに計算方法に差異があります。
納付書は6月に発行され、6月末、7月末、8月末、9月末、10月末、11月末、12月末、1月末、2月末となり、年間9回の納付を行います。
参考:収入がある者についての被扶養者の認定について|厚生労働省
〇〇万円の壁について
個人事業主と給与所得者では、年収の壁が異なります。
風俗キャストは個人事業主となりますので、基本的には「48万円の税法上の扶養」と「130万円の社会保険上の扶養」を覚えておくようにしましょう。
一般的には以下の「〇〇万円の壁」があります。
給与所得者に関連するものなので、参考程度にご紹介します。
収入の壁 | 内容 |
103万円の壁 | 配偶者控除・扶養控除・所得税なしの上限 |
106万円の壁 | 条件により自分で社会保険に加入する義務が発生する |
130万円の壁 | 社会保険の扶養が外れる |
150万円の壁 | 配偶者特別控除が満額となる上限 |
201万円の壁 | 配偶者特別控除がなくなる |
家族に風俗がバレるのか
親の扶養に入っている人が、扶養を外れるとなると、気になるのは「親に風俗がバレてしまうのか」という点でしょう。
所得が48万円や130万円を超えたら、どのような手続きが必要なのかを考えていきましょう。
- 所得が48万円を超えたら
- 所得が130万円を超えたら
- 確定申告をしなかったら
所得が48万円を超えたら
年間所得が48万円を超えた場合であっても、確定申告の提出内容がご家族に自動的に通知されることはありません。ただし、住民税の課税通知書や納付書が自宅に届くことで、所得状況を間接的に知られる可能性があるため、十分な注意が必要です。
なお、給与所得者の場合は年間103万円を超えると税法上の扶養控除の対象外となりますが、個人事業主の場合は48万円がその基準となります。
ご家族との関係性や今後の生活を見据え、扶養を外れることについて事前に説明をしておくことで、後々のトラブルを回避しやすくなるでしょう。
所得が130万円を超えたら
社会保険上の扶養を外れると、国民健康保険に加入する必要があります。
家族の扶養を抜けるために家族の勤務先で手続きしてもらい、資格喪失証明書をもらいます。
市役所などの自治体の窓口で、国民健康保険の手続きができますので確認してみましょう。
国民年金の支払いも必要となりますので、同日に自治体の窓口で手続きをしておくと良いでしょう。
確定申告をしなかったら
確定申告をすると前年の所得が明らかになり、「扶養を外れる」「外れない」などの問題が浮上します。
それならいっそのこと、「確定申告をしなければいいのではないか」と考える人がいるかもしれませんが、この考えは危険です。
確定申告をしないと脱税している状態となり、税務署から指摘を受けるとペナルティが課される可能性があります。
また税務署の調査により自宅に電話がかかり、勤務先が家族にバレてしまうというケースがあります。
このようなトラブルにならないよう、風俗キャストも期限内に確定申告を行うようにしましょう。
そもそも「所得」とは
ここまで年収の壁についてお話してきましたが、そもそも「所得」について正しく理解しているでしょうか。
所得の計算方法を確認しておきましょう。
- 年間所得の計算方法
- 風俗キャストの経費とは
年間所得の計算方法
扶養を外れるか否かを計算する時に必要な所得とは、年収ではありません。
「年収‐必要経費」の計算をして出た金額が所得となりますので、報酬として受け取った金額ではありません。
年間で受け取った報酬がいくらか、だけでなく、経費がいくらかかったかが重要になります。
風俗キャストの経費とは
「年収‐必要経費=所得」となりますので、経費が多くなれば所得が減らせるという計算になります。
経費とは、事業のために必要になった費用を指します。
風俗キャストの経費には、以下のようなものが認められます。
確定申告で経費として計算するためには、領収書を保管しておくようにしましょう。
タクシーなどの交通費
風俗で働いていると、勤務時間が夜遅くなるためタクシーを使う日があるでしょう。
仕事のために必要になった交通費は、電車代もタクシー代も経費と認められます。
ただし、お店から通勤手当が出ている場合は経費として計算できませんので、注意しましょう。
電車通勤で定期を利用している場合は、定期代も経費となります。
スマホ代などの通信費
仕事でスマホを使っているのであれば、スマホ代や通信費、Wi-Fiを使用していればWi-Fi通信費が経費となります。
仕事専用のスマホを持っていれば100%を経費として問題ありませんが、プライベートと併用している場合は少し計算がややこしくなります。
家事按分という方法で、仕事で使用した割合のみが経費となります。
プライベートで使用した分は経費とは認められません。
衣装代
衣装や下着も、仕事で使用する物であれば経費の対象となる場合があります。
お店でしか着ないドレスやセクシーな下着、コスプレの衣装などを購入したら、領収書をとっておいて経費にしましょう。
衣装や下着は、消耗品費という区分で申請します。
化粧品代
仕事のための化粧品代も経費となります。
プライベート用と分けておいた方が計算しやすいので、完全に仕事用のメイクセットを作っておくのがおすすめです。
写真撮影用のヘアセットや、お客さんとのデートのために美容院でヘアセットをしたという場合も経費にできます。
接待費
お客さんとのデートやプレゼント代などは、接待費として経費になります。
誰にいくら使ったか、などの細かい用途を聞かれた時に答えられるようにしておくといいでしょう。
医療費
仕事に関するものであれば、医療費も経費になります。
風俗キャストの場合は性病の検査を定期的に行っており、自分で検査費を出しているのであれば確定申告時に経費と申告しましょう。
「薬を処方された」「妊娠検査薬を購入した」という場合も経費となりますので、領収書は保管しておいてください。
なお、上記のような特定の支出が実際に経費として認められるかどうかは、個別の状況や税務署の見解によって判断が分かれる場合があります。判断に迷う場合は、税理士に相談することで適切な処理が可能となり、安心して申告を進めることができます。
確定申告をすれば親バレリスク低!
風俗キャストとして働いていて、親バレをしてしまう人がいます。
収入を得たことによる持ち物の変化や、生活の変化からバレてしまうというケースがほとんどです。
「扶養を外れたから」という理由で親バレをする人は、少数派であるとわかります。
お伝えした通り、扶養を外れるという旨を親に伝えたとしても、職種までバレるわけではありません。
風俗で稼いでいたとしても、正しく確定申告をしていれば税務署から脱税の指摘を受けるリスクも下がります。
「どう収入を隠すか」と考えるのではなく、親に何かを疑われる前に「稼いでいるから扶養を外れる」と話をしておくようにしましょう。
住民税の納付額での親バレ注意
確定申告をし、扶養を外れて住民税を自分で納めるようになる人は、注意が必要です。
住民税の納付書は、個人事業主の自宅に届くようになっています。
同居している家族が開封してしまうと、住民税の金額を見られてしまうかもしれません。
収入が高いほど住民税が高額になりますので、親の想像を超えた金額だと「どんな仕事をしているのか?」と詮索されてしまう危険があります。
住民税の納付書に職種が記載されているわけではありませんが、自宅に納付書が届くので注意するようにしましょう。
風俗キャストが確定申告をするメリット
確定申告をするのは「難しそう」「めんどくさい」というイメージがあるかもしれませんが、確定申告により還付金が戻るケースがあります。
報酬を受け取る際に、10%源泉徴収税が引かれてはいませんか?
源泉徴収は報酬からあらかじめ所得税を差し引く仕組みで、確定申告により過不足を精算します。
もし確定申告をして、払いすぎていた源泉徴収があるとわかれば、還付金として戻ってきます。
経費を正しく計上して所得を抑えられれば、より還付金が戻る可能性があります。
風俗キャストの確定申告は税理士に相談
確定申告自体は、ご自身で行うことが可能です。
税務署や市役所で用紙がもらえますし、無料の相談窓口がありますので、ご自身で行う方もいらっしゃいます。
しかし「1年分の領収書の管理や仕分けが大変と感じる」「慣れない計算で頭が痛くなりそう」と感じる人も少なくありません。
自身で確定申告をするのが負担になると感じる場合は、税理士に相談するのがおすすめです。
面倒な事務作業の負担を軽減できるだけでなく、確定申告書に税理士の名前が記載されますので、税務署から見ても信頼性の高い書類を作成できるようになります。
夜職に強い税理士を選ぼう
風俗キャストが確定申告を税理士に依頼するのであれば、夜職に強い税理士を選ぶようにしましょう。
一般職種とは異なる夜職の特性を理解していますし、実績のある税理士を選べば、ひとつひとつの業務がスムーズになります。
「これは経費になる?」というような疑問も、税理士がついていれば悩む必要はありません。
「家族に職業をバレないようにしたい」というような要望があれば、その旨も伝えておくと心強いサポートをしてくれます。
夜職に強い税理士法人松本
税理士法人松本は、風俗、キャバクラ・ホストクラブの水商売を専門にしている税理士事務所です。
全国から相談を受けておりますので、実績が豊富です。
「確定申告をしたら税金をいくら払わなければいけないの?」というような、初歩的な相談も受け付けております。
初回のご相談は無料となっておりますので、お気軽にご連絡ください。
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