
納税は国民の義務であり、ホステス等に報酬や料金を支払うときも、当然ながら所得税を源泉徴収しなければなりませんが、支払われたお金がホステスにとって給与所得となるのか、事業所得となるのかによって税務の取り扱い方が違ってきます。
ホステスを雇うクラブやバーの経営者はもちろん、ホステス自身も確定申告や納税について把握しておかなければなりません。
本記事では、ホステスの源泉徴収や確定申告について解説します。
ホステスの勤務状況に応じて給与所得か事業所得かが変わるため、ぜひこの記事を参考に、曖昧になりやすいホステス等で働く場合の報酬について理解し、正しく申告、納税していただけたら幸いです。
給与所得の事業所得の違い
会社が支払ったお金が給与になるのか、事業所得(外注費)になるのかは税務調査においても、よく問題提起される点です。
まずは、給与所得と事業所得の税務上の違いについて説明していきます。
給与所得とは
給与所得とは、勤務先から受ける給料、賃金、賞与などの所得を指します。
給与所得となるのは、年間の給与の合計収入から給与所得控除額を差し引いた金額です。社員、パート、アルバイトなどどのような雇用形態においても給与支払い時に所得税の源泉徴収義務が生じます。
また、給与に対しては消費税がかかりません。
事業所得(外注費)とは
事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得です。
請負契約として依頼したときに発生した支払いを外注費と呼びますが、個人事業主側からすると、取引先からの外注として依頼を受け、報酬を得た場合は事業所得となります。
外注費の場合は、源泉徴収の義務はありませんが、外注費の支払いには消費税がかかります。
ホステスに対する報酬は給与所得か事業所得か
給与所得と事業所得について説明しましたが、バー、スナック、キャバクラなどの経営者が気になるのは、「ホステスに支払う報酬は給与所得もしくは事業所得のどちらになるのか」ではないでしょうか。
昔はホステス等に対する報酬は事業所得となり、外注費処理をするのが一般的でしたが、近年の裁判では、ホステス等に対する報酬は「給与所得」に当たるとされる判決も出ています。
実は、ホステスに対する報酬は給与所得になる場合と事業所得になる場合とがあり、ホステスの勤務状況に応じて判断しなければならないのです。
ここでは、ホステスの所得区分がどのように判断されるのかについて説明していきます。
給与所得と事業所得(外注費)の判断ポイント
ホステスの報酬が給与か外注費かを判断する重要なポイントは、ホステスの働き方にあります。
主な判断材料となるのは、以下の5つの項目です。
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- 時間的・空間的拘束があるか
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- 指揮監督下にあるか
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- 報酬の最低保証はあるか
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- 売掛金回収の責任はあるか
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- 必要経費の負担があるか
仕事の進め方を指示する、作業時間を指定する、時間単位で報酬を計算する、といった場合には給与認定される可能性が高くなります。
また、売掛金回収の責任がホステス側にある場合や、必要経費を本人が負担している場合には外注費とみなされる可能性が高いです。
給与になりやすい勤務状況とは
外注費としていたものが税務調査によって給与認定されると、支払う側にとっては税金の支払いなどが生じるため、なんとか避けたいと思う人もいるでしょう。
前述した給与所得と事業所得(外注費)の判断ポイントを踏まえ、ホステスの給与所得となりやすい勤務状況、事業所得となりやすい勤務状況をまとめました。
給与所得 | ・出勤表やタイムカードで管理されている ・報酬が日給または時給で計算されている ・ホステスが必要経費を負担していない ・売掛の回収責任が店舗側にある ・報酬の最低保証がある |
事業所得(外注費) | ・出勤表やタイムカードで管理されていない ・ホステスの給与計算を日給や時給で計算してない ・ホステス自身が必要経費を負担している ・雇用契約でなく請負契約を締結している ・売掛金の回収責任をホステスにもたせている ・報酬の最低保証がない |
ホステスに支払う報酬と源泉徴収税額の計算方法
お店がホステスに報酬や料金を支払う(ホステス側からすると事業所得)ときは、所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。
ただし、その内容が給与等又は退職手当等に該当するものについては、それぞれ給与所得又は退職所得として源泉徴収を行います。
ここでは、ホステスへの報酬にかかる源泉徴収税額の計算方法や税を納める期限について説明していきます。
ホステスへの報酬にかかる源泉徴収税額の計算方法
ホステスへ事業所得として支払うときの源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額は、報酬の額から同一人に対し1回に支払われる金額について、5千円にその報酬の「計算期間の日数」を乗じて計算した金額を差し引いた残額に10.21%の税率を乗じて算出します。
この「計算期間の日数」の日数の考え方は、「営業日数」または「出勤日数」ではなく、ホステス報酬の支払金額の計算の基礎となった期間の初日から末日までの全日数、つまり、「暦の日数」です。
また、求めた税額に1円未満の端数があるときは、これを切り捨てます。
【ホステス報酬の源泉徴収税額= (報酬 −計算期間の日数 × 5,000円) × 10.21%】
源泉徴収税額の具体的な計算例
ここで、具体的な計算例を見ていきましょう。
ホステス報酬の支払金額の計算の基礎期間4月1日から4月30日(30日間)営業日数22日間、4月分の報酬60万円を支払う場合、
(60万円−15万円※)×10.21%=45,945円
※15万円=5千円×30日
よって、源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額は4万5,945円になります。
計算式では1日5千円を差し引いていますが、これは「みなし経費」にあたり、衣装、美容、帰りの深夜タクシー代、などを想定した他の職種には見られないホステス等の規定独特の計算要素です。
源泉徴収した所得税を納める期限
ホステスに支払った報酬・料金から源泉徴収した所得税及び復興特別所得税は、支払った月の翌月10日までに納める必要があります。
また、支払者が源泉所得税の納期の特例の適用を受けている場合であっても、ホステス等に支払う報酬・料金については、納期の特例の対象とはならないので、注意が必要です。
万が一、期限までに納付をしなかった場合には、延滞税等を負担しなければならなくなる可能性があるため、必ず納期限に納めましょう。
ホステスも確定申告が必要?必要なケースやメリットを紹介

確定申告とは1年間の所得に対する計算をして納税することを指し、一般的に毎年2月16日から3月15日までの期間で行う必要があります。確定申告の必要性は働き方によっても異なりますが、ホステスも確定申告をしなければならないのでしょうか。
結論として、店舗と労働契約を締結し、給与としてお金を受け取っている場合には必要ありませんが、必要となるケースもあります。
ここでは、ホステスで確定申告が必要になるケースや確定申告をするメリットについて説明していきます。
ホステスで確定申告が必要なケース
ホステス業を営む人で、確定申告が必要なケースは以下の2通りです。
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- 個人事業主として申告する場合
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- 副業として申告する場合
それぞれについて説明していきます。
個人事業主として申告する場合
店舗と労働契約を締結せず、専業でホステス業を営んでいる方は、個人事業主と言う立場となり、事業所得として確定申告をすることになります。
個人事業主として働く場合は、年間の所得が48万円を超えるときに確定申告が必要です。
副業として申告する場合
副業としてホステス業を営んでいる方は、雑所得として確定申告をします。雑所得の場合、所得が年間20万円以下の場合は申告は必要ありません。
しかし、年間20万円を超える場合、税法上、所得税の計算に含める必要があるため、確定申告しなければなりません。
申告を怠った場合には無申告加算税や延滞税などのペナルティが課される可能性が高いため、確実に行いましょう。
ホステスが確定申告をするメリット

説明した通り、個人事業主としてのホステス業の年間所得が48万円を超える場合や、副業としてのホステス業が20万円を超える場合には確定申告が必要で、申告を怠るとペナルティが課される恐れがあります。
しかし、ホステスが確定申告をすることには、以下の3つメリットもあるのです。
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- 税金が還付される
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- 青色申告で控除や赤字の繰越ができる
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- 本業の会社にバレずに済む可能性がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
税金が還付される
確定申告を行うと、払い過ぎた税金が還ってくる可能性があります。
源泉徴収とは、給与支払いの際に従業員から税金を差し引いて納税する制度で、給与から所得税が源泉徴収されますが、本来納めるべき税額をよりも多く差し引かれるケースも多いです。
一般的な会社であれば、年末調整によって払いすぎた所得を給与所得者に還付しますが、個人事業主の場合にはそれがないため、自ら確定申告を行うことで、払いすぎた所得税の還付を受けられます。
青色申告で控除や赤字の繰越ができる
確定申告には白色申告と青色申告がありますが、青色申告を適用させると、税金の面で有利な特典を受けることが可能です。
メリットとしては以下があります。
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- 最大65万円の控除が受けられる
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- 赤字を3年間繰り越せる
大きなメリットは、所得税から10万円(簡易簿記と現金簡易の場合)または65万円(複式簿記の場合)の控除を受けられる点です。
また、青色申告にすれば、たとえ開業直後に赤字になったとしても、経営に余裕ができるタイミングで赤字を相殺できる可能性があります。
青色申告の適用を希望する場合は、開業届と一緒に青色申告承認申請書を税務署に提出しましょう。
本業の会社にバレずに済む可能性がある
本業として会社に勤務している場合、ホステス業で確定申告を行えば、本業の会社に副業がバレる可能性を減らすことが可能です。
副業で所得が増えると、それに応じて住民税も増額しますが、会社の給与から高額な住民税が引かれるとなったときに、会社に副業がバレてしまうリスクがあります。
しかし、特別徴収から自身で納付する普通徴収に切り替えると、自分で住民税を納付するため、副業がバレてしまうリスクを減らせるでしょう。
ホステスの必要経費にできるもの・できないもの

ホステスとして働き、確定申告の必要があると分かった場合、必要経費についても考えてみましょう。
ホステスとして、収入を稼ぐために直接かかった費用は、必要経費として計上でき、実際の所得額を減らし、税負担を軽減することが可能です。
ここでは、ホステスの必要経費にできるものとできないものを具体的に紹介していきます。
経費になるもの
ホステスが必要経費として計上できるものは、主に以下の項目です。
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- 美容院代(仕事用に髪をセットしてもらった費用)
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- 衣装代(仕事用に、店で着るドレスや着物にかかった費用)
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- 交通費(同伴し、客を店に連れて来るまでにかかったタクシー代など)
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- 食事代(業務の都合で外食した際の食事代)
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- 贈答品代(客にプレゼントした品物代)
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- 電話代や通信費(客と連絡をとる際にスマートフォン等を使用した場合)
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- 新聞図書費(話題作りのための本や新聞代)
ホステスとして働くうえで、身だしなみを整えることは大切であるため、高額になりがちな化粧品代や美容院代の一部は経費として認められます。
ただし、仕事のためだけに必要だとはみなされない場合は、仕事用とプライベート用の割合で家事按分しなければなりません。
経費にならないもの
経費として計上できる費用は原則として、事業に関係するものだけです。
たとえば、お店でのみ着用するドレスや着物などの衣装の購入費用は経費に計上できますが、プライベートでも着られるような衣服に関しては経費にすることは難しいでしょう。
また、スマートフォンを事業用とプライベート用に分けている場合は問題ありませんが、同じものを利用する場合は、事業用として使った割合分を経費計上する必要があります。
このように、プライベートでも使う可能性の高いものは全額経費にできないため、領収書や店のために使った経費のメモは残しておくようにしましょう。
ホステスへの支払いには注意

ホステスへ支払われる対価が給与なのか外注費なのかで、厳選所得税の徴収が必要かどうかが変わってきます。
経営者としては給与とするよりも外注費としたほうがメリットが大きいため、外注費として処理したものの、税務調査によって給与であるとされてしまうケースも多いため、ホステスの勤務状況を鑑みながら正しく判断する必要があるのです。
また、ホステスも場合によっては確定申告を行わなければならず、確定申告によって還付金を受けられたり、節税できたりするので、ぜひ正しい知識を持って申告や納税を行っていただけたらと思います。
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