バー経営では、酒類や食材の仕入れ費用をはじめ、店舗の家賃や光熱費・広告宣伝費などさまざまな支出が発生します。しかし、「どこまで経費にできるのか分からない」「税務調査で指摘されないか不安」と悩む方も多いのではないでしょうか。
経費を適切に計上することは、正しい利益管理だけでなく節税にもつながります。一方で、計上方法を誤ると税務調査で修正を求められる可能性もあるので注意が必要です。本記事では、バー経営で経費になるもの一覧や判断基準・税務署に指摘されやすい経費とその対策について詳しく解説します。
目次
経費とは事業のために支出した費用

経費とは、事業を行ううえで必要となる支出のことです。ただし、支出であれば何でも経費にできるわけではありません。事業との関連性があり、売上を得るために必要な費用であることが条件です。そのため、プライベートな支出や生活費は原則として経費には認められません。また、個人事業主と法人では、税務上の所得計算の方法や適用される税法に違いがあります。
バー経営では経費計上が利益と税金に影響する
バー経営において経費は、事業の利益や納める税金の額に大きく影響します。個人事業主や法人の所得は、基本的に「売上 – 経費」で計算されるため、適切に経費を計上することで課税対象となる所得を減らすことが可能です。例えば、年間売上が1,000万円で経費が700万円の場合、所得は300万円となります。
一方、本来経費にできる支出を計上していない場合、所得が実際より多くなり、税負担が増えてしまう可能性があります。そのため、バー経営では日頃から経費を正しく管理することが重要です。
バー経営で経費になるもの一覧

バー経営では、酒類や食材の仕入れだけでなく、店舗の家賃や光熱費・広告宣伝費などさまざまな費用が発生します。これらの支出を適切に経費計上することで、事業の利益を正確に把握できるだけでなく、税負担の軽減にもつながります。ただし、支出の内容によって勘定科目や会計処理が異なるため、どの費用をどのように処理すればよいのか理解しておくことが重要です。ここでは、バー経営で発生しやすい主な経費について解説します。
| 経費項目 | 内容 |
| 仕入高 | 酒類・ソフトドリンク・食材など |
| 消耗品費 | ストロー・紙ナプキン・おしぼりなど |
| 水道光熱費 | 電気代・水道代・ガス代 |
| 地代家賃 | 店舗家賃 |
| 広告宣伝費 | SNS広告・チラシ制作費 |
| 通信費 | インターネット・電話代 |
| 旅費交通費 | 仕入れや商談の交通費 |
| 接待交際費 | 取引先との会食費 |
| 修繕費 | 店舗設備の修理代 |
| 支払手数料 | 決済手数料など |
| 減価償却費 | 高額な設備・内装など |
仕入高
仕入高とは、お客さまに提供する商品を仕入れるためにかかった費用です。仕入高は売上原価に直結するため、利益を正確に把握するためにも、仕入れの記録や在庫管理を適切に行うことが重要です。
バーでは、ウイスキーやワイン・ビールなどの酒類のほか、ソフトドリンクやカクテル用のリキュール・シロップ・フルーツなども仕入高に含まれます。フードメニューを提供している場合は、おつまみや軽食の食材費も対象です。一般的な飲食店と比べて調理の手間が少ないことから、原価率を低く抑えられるケースもあります。
消耗品費
消耗品費とは、店舗運営で使用する備品や消耗品の購入費用を指します。バーでは、ストローや紙ナプキン・おしぼり・洗剤・ゴミ袋などの日用品が該当します。グラス磨き用のクロスや清掃用品なども消耗品費として処理できる場合があります。なお、一般的には取得価額が10万円未満の備品は消耗品費として計上できますが、状況により判断が分かれるため税理士へ確認しましょう。
水道光熱費
水道光熱費とは、店舗運営に必要な電気代・水道代・ガス代などの費用です。バーでは業務用冷蔵庫や製氷機・空調設備などを長時間稼働させるため、水道光熱費が大きな負担になることがあります。また、グラスや調理器具の洗浄に使用する水道代も経費に含まれます。店舗専用で利用している場合は全額を経費計上できますが、自宅兼店舗の場合は事業利用部分のみを「家事按分」により合理的に計上します。
地代家賃
店舗を賃借して営業している場合の家賃は、地代家賃として経費にできます。固定費の中でも比較的大きな割合を占める項目です。毎月の賃料だけでなく、契約内容によっては共益費や管理費も経費に含まれる場合があります。ただし、敷金や保証金など返還される予定のある費用は、原則として支払時点では経費になりません。自宅の一部を事務所や在庫保管場所として利用している場合は、事業利用分を按分して計上します。
広告宣伝費
広告宣伝費とは、新規顧客の獲得や認知度向上を目的とした支出のことです。例えば、InstagramやTikTokなどのSNS広告・チラシやポスターの制作費・ホームページ制作費・看板の設置費用などが該当します。インフルエンサーへのPR依頼費用やキャンペーン費用も、広告宣伝費として処理できるケースがあります。競争の激しいバー業界では、集客のための広告宣伝費が重要な経費の一つとなっています。
通信費
通信費とは、事業で使用する通信サービスの利用料金です。店舗のインターネット回線や固定電話・予約対応やSNS運用に利用するスマートフォンの通信料金などが該当します。予約管理システムやクラウドサービスの利用料を支払うケースも増えています。仕事と私用を兼用している場合は、利用状況に応じて事業利用分のみを経費として計上します。
旅費交通費
事業に関連して発生した移動費や宿泊費は旅費交通費として計上できます。酒類の展示会や業界セミナーへの参加・仕入れ先との商談・他店の視察などで発生した電車代やタクシー代・高速道路料金などが該当します。遠方で開催されるイベントや研修に参加した際の宿泊費も、事業との関連性があれば経費として処理できます。
接待交際費
接待交際費とは、取引先との関係維持や事業活動のために支出する費用です。例えば、酒類の仕入れ業者との打ち合わせを兼ねた会食や、イベント関係者との懇親会費用などが該当します。ただし、個人的な飲食費との区別が曖昧になりやすいため、利用日時や参加者・利用目的を記録しておくことが大切です。
参考:No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算|国税庁
修繕費
修繕費とは、店舗設備や備品を維持・修理するための費用です。製氷機や冷蔵庫の修理・エアコンのメンテナンス・給排水設備の修繕・カウンターや椅子の補修などが該当します。ただし、単なる修理ではなく設備の性能向上や大規模な改修を行った場合は、資産計上し減価償却を行う必要があります。
支払手数料
支払手数料とは、事業運営に伴って発生する各種手数料です。バーでは、クレジットカード決済やQRコード決済の加盟店手数料が代表的です。また、銀行振込手数料や会計ソフト利用料・税理士への報酬なども支払手数料として処理することがあります。キャッシュレス決済の利用が増えている現在では、支払手数料の管理も重要になっています。
減価償却費
減価償却費とは、10万円以上の高額な設備や備品の購入費用を一度に経費とせずに、耐用年数に応じて分割して経費計上するものです。バーでは、業務用冷蔵庫や製氷機・POSレジ・エアコン・店舗の内装工事などが代表的な減価償却資産に該当します。毎年の減価償却費は主に以下の計算式(定額法)で算出できます。
減価償却費=固定資産の取得原価×定額法の償却率
耐用年数5年の固定資産を100万円で購入した場合、5年間にわたって毎年20万円ずつ経費計上することになります。設備投資が多いバーでは、減価償却の仕組みを理解しておくことが適切な税務処理につながります。
バー経営で注意したい経費の判断基準と注意点

バー経営では、交際費や視察を兼ねた飲食代・仕事と私用で共用している費用など、経費として処理できるか判断に迷う支出が発生することがあります。また、設備投資や備品購入などは、金額によって会計処理が異なる場合もあるため注意が必要です。適切な申告を行うためにも、経費の基本的な判断基準を理解しておきましょう。
事業との関連性があるか
経費として計上するためには、その支出がバーの運営や売上獲得のために必要なものであることが求められます。酒類や食材の仕入れ費用・店舗の家賃・広告宣伝費などは事業に直接関係するため経費として計上できます。一方、個人的な買い物やプライベートな飲食代などは対象になりません。判断に迷った場合は、「バーの営業に必要な支出だったか」という観点で考えるとよいでしょう。
領収書やレシートを保管する
経費を計上する際は、支出内容を証明できる書類を保管しておくことが必須です。領収書やレシートには、購入日や金額・支払先などが記載されており、帳簿の内容を裏付ける証拠になります。特に交際費や備品購入費などは、何のために支出したのか説明できるようにしておくことが大切です。税務調査で確認を求められることもあるため、日頃から整理・保管しておきましょう。
関連記事:ホストが領収書を保存しておくべき理由とは?経費計上できる領収書についても徹底解説
プライベート利用は按分が必要
事業と私用の両方で利用している費用については、事業で使用した割合のみを経費として計上します。これを「家事按分」といいます。例えば、自宅を事務所として利用している場合の家賃や電気代、仕事とプライベートで兼用しているスマートフォン代・インターネット料金などが該当します。按分割合に明確なルールはありませんが、実際の利用状況に基づいて合理的に算出する必要があります。
【家賃の按分例】
自宅の床面積100㎡のうち、20㎡を事務作業スペースとして利用している場合
20㎡ ÷ 100㎡ = 20%
家賃が月10万円の場合
10万円 × 20% = 2万円
毎月2万円を経費として計上できます。
【スマートフォン代の按分例】
月額1万円のスマートフォンを使用し、利用時間の70%が事業目的の場合
1万円 × 70% = 7,000円
毎月7,000円を通信費として経費計上できます。
按分割合が極端に高い場合は税務調査で確認されることもあるため、使用状況を説明できるようにしておくことが大切です。
高額な設備は減価償却になる
バーで使用する設備や備品のうち、高額なものは購入した年に全額を経費計上できない場合があります。先述したとおり、業務用冷蔵庫や製氷機・POSレジ・エアコン・内装設備などは取得金額によっては「減価償却資産」として扱われる可能性があります。ただし、取得価額が10万円未満の備品は、原則として購入した年に全額を経費計上できます。バー経営においては、以下のものなどが該当するケースがあります。
- ・グラス
- ・スピーカー
- ・棚
- ・小型冷蔵庫
- ・椅子やテーブル
【青色申告なら30万円未満の特例も利用できる】
青色申告を行う要件を満たした事業者であれば、「少額減価償却資産の特例」により、30万円未満の資産を購入した年に一括で経費計上できる場合があります。設備投資が多いバーでは節税効果も大きいため、活用できるかどうか確認しておくとよいでしょう。
参考:No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例|国税庁
バー経営で税務署に指摘されやすい経費と対策

バー経営ではさまざまな支出を経費として計上できますが、中には税務調査で内容を確認されやすい項目もあります。特に、事業と私用の区別が曖昧になりやすい支出や、証拠書類が不足している経費は注意が必要です。ここでは、税務署から指摘を受けやすい経費とその対策を解説します。
接待交際費は利用目的を記録する
バー経営では、取引先との会食や打ち合わせなどで接待交際費が発生することがあります。しかし、参加者や目的が不明確な場合は、事業との関連性を説明できず、経費として認められない可能性があります。領収書だけでなく、以下をメモしておくと、税務調査でも説明しやすくなります。
- ・利用日時
- ・店舗名
- ・同席者
- ・利用目的
他店視察や試飲の費用は記録を残す
バー経営では、サービスやメニューの研究を目的として他店を利用したり、新しいお酒を試飲したりする機会があります。こうした費用は事業に必要な支出として経費になる場合がありますが、単なるプライベートな飲食との区別が重要です。視察レポートや店舗研究のメモ・仕入れ検討資料などを残しておくことで、事業目的であることを説明しやすくなります。
家賃や通信費は按分根拠を明確にする
自宅兼事務所の場合の家賃や、仕事と私用で兼用しているスマートフォン代・インターネット料金などは、事業利用分のみを経費計上します。税務調査では「なぜその割合なのか」を確認されることがあるため、
- ・使用面積
- ・利用時間
- ・利用頻度
などを基準に合理的な按分割合を設定し、根拠を残しておくことが大切です。
高額な設備は計上方法を確認する
業務用冷蔵庫や製氷機・POSレジ・エアコンなどの設備は、金額によって処理方法が異なります。本来は減価償却が必要な資産を購入年度に全額経費計上してしまうと、税務調査で修正を求められる可能性があります。設備購入時は取得価額を確認し、減価償却資産に該当するかどうかを判断しましょう。
日頃から経費管理のルールを整える
経費の計上ミスや記帳漏れを防ぐためには、日頃から管理しやすい環境を整えておくことが重要です。例えば、事業専用の銀行口座やクレジットカードを利用すれば、プライベートな支出との区別がしやすくなります。また、キャッシュレス決済を活用することで利用履歴が残るため、帳簿作成の手間を減らせます。さらに、会計ソフトを導入すれば売上や経費を効率的に管理できるほか、確定申告の負担軽減にもつながります。
領収書やレシートについても、紙のまま保管するだけでなく電子データとして保存しておくことで、必要な書類をすぐに確認できるでしょう。税務調査は数年前の取引について確認されることもあるため、日頃から記録を整理し、経費の根拠を説明できる状態にしておくことが大切です。
バー経営では経費を正しく理解して適切に管理しよう

バー経営では、酒類や食材の仕入れ費用をはじめ、家賃や光熱費・広告宣伝費・通信費などさまざまな支出を経費として計上できます。ただし、事業との関連性がない支出やプライベート利用分は経費にならず、家事按分や減価償却が必要になるケースもあります。また、税務調査で確認されやすいため、領収書や利用目的の記録を残しておくことが重要です。
適切な経費管理は節税だけでなく、利益の把握や健全な店舗運営にもつながります。会計ソフトやキャッシュレス決済なども活用しながら、日頃から正確な帳簿管理を心掛けましょう。
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