ホステスやキャバ嬢として水商売の仕事をしていると、美容関連の支出が多くなるのは避けられません。

美容代を経費として落とすことは可能ですが、すべてが経費になるわけではなく、「経費として認められるもの」と「認められないもの」があります。

この記事では、ホステスやキャバ嬢が経費で落とせる美容代と落とせない美容代の違いや、美容代以外で計上できる経費の具体例、また、確定申告する際の注意点などを解説します。

すでに経費計上をしている方はもちろん、これから始めたいけど「どこまでOKなの?」と悩んでいる方も、ぜひ参考にしてください。

ホステスやキャバ嬢の美容代が経費で落とせるケース

ホステスやキャバ嬢が経費として落とせる美容代は「出勤するためのヘアセット代、メイク・コスメ代」です。

キャバ嬢は出勤前にヘアセットをしていきます。これは、仕事のためだけにしている行為であるため、経費として計上して問題ありません。

また、メイクも夜職用に派手めのコスメやキャラに合うコスメを買っている場合は、経費として落とせます。ただし、プライベートと兼用して使う場合は全額経費として計上できないので注意しましょう。仕事で利用するのが50%であれば、経費計上できるのは、コスメ代の半分です。

ホステスやキャバ嬢の美容代が経費で落とせないケース

ホステスやキャバ嬢が経費として落とせない美容代は以下の4つです。

1. 美容院代
2. 基礎化粧品代
3. 美容整形代
4. エステサロン代

それぞれ詳しく解説します。

1. 美容院代

出勤前のヘアセットではなく、カットやカラーなどの一般的な美容院での施術費用は基本的に経費にできません。これらは、ホステスやキャバ嬢に限らず、誰でも行う日常的な美容行為にあたるので、夜職のためにしている行為とは言い切れないからです。

ただし、以下のようなケースでは、経費として認められる可能性もあります。

・特定の髪型やカラーが店舗のコンセプトに合っていたり、指定されていたりする場合
・お客様からのリクエストで維持している髪型

このように、業務上必要であることを客観的に証明できる場合は含めても問題ないでしょう。

2. 基礎化粧品代

化粧水や美容液などの基礎化粧品は、夜職に関係なく使用するものなので、必要経費には含められません。

3. 美容整形代

美容整形代は、基本的には経費として落とせないものと認識しておいたほうが良いでしょう。

ただし、美容整形代がお店での売り上げに直結していることを証明できれば、経費として認められる可能性もあります。たとえば、美容整形したことで、売り上げが明らかに上がった場合や、美容整形代として100万円かけたことで、キャバ嬢の売り上げが1,000万円まで上がった場合などは経費として認められる可能性が高くなります。

判断がむずかしい項目なので、経費として計上する前に、税理士に相談するほうが良いでしょう。

4. エステサロン代

エステサロン代も美容整形代と同様、基本的には経費に含むことができません。

しかし、キャバ嬢の仕事に直結していることが証明できれば経費として計上できます。

ただし、エステ代が必要経費となるのはレアなケースなので、こちらも経費計上する前に、税理士に相談することをおすすめします。

美容代以外のホステスやキャバ嬢が経費にできる・できない項目

美容代以外の項目も経費にできるのかどうか気になる方もいるでしょう。

ここでは、ホステスやキャバ嬢ならではの代表的な経費項目を紹介します。

経費にできる項目

プレゼント代

お客様へのプレゼント代は基本的に経費として認められるケースが多い傾向にあります。

ただし、高額すぎるプレゼントは、業務上必要な支出ではなく、個人的なプレゼントとみなされる可能性があるので、注意しましょう。

たとえば、毎月数十万円使ってくれるお客様に対して、数百万円相当の高級ブランド品をプレゼントするのは、「業務との関連性が薄い」と判断されやすく、経費として否認されるリスクがあります。

名刺代やライターなどの小物

名刺代やライターなど、仕事で使用する小物代は経費として認められます。

名刺は通常、プライベートで使うことがないため、全額経費として計上可能です。

また、ライターについても、喫煙の習慣がなく、業務用としてお客様に火をつけるためだけに使用している場合は全額を経費にできます。

交通費

出勤やアフターのための移動費用は基本的に経費に含まれます。ただし、公共交通機関が動いている時間に、正当な理由なくタクシーを利用している場合は経費として認められない可能性があるので注意しましょう。

マイカーでの出勤の場合も、出勤のために利用したガソリン代や駐車料金は経費計上できることが一般的です。

家賃

自宅の家賃も一部経費として認められる可能性があります。

ホステスやキャバ嬢は、勤務時間外でもお客様と連絡を取ったり、営業活動を行ったりすることが多く、自宅が仕事の一部に使われていると考えられるためです。

家賃を全額経費として計上できませんが、自宅の床面積のうち、仕事で使用している割合をもとに経費計上できる金額を算出します。

詳しくは税理士に相談してみたほうが正確でおすすめです。

スマホや電話、通信費

スマホはお客様との連絡や営業活動に利用するため、電話代や通信費の一部を経費として認められます。

とくに、夜職用のスマホを持っている場合、そのスマホにかかる費用は全額経費として計上できるでしょう。

一方で、プライベートと兼用して利用する場合は、仕事とプライベートで利用する割合に応じて按分し、仕事に利用している分だけを経費として計上します。たとえば、仕事7割で利用しているなら、通信費の70%が経費として認められます。

お客様との食事代や外出費用

お客様と同伴やアフター、休日のゴルフなど、お店の営業時間外でも営業活動の一環としてコミュニケーションを取る機会は多くあります。こうした活動が仕事に必要な営業行為であると認められる場合、その際にかかった食事代や交通費、外出費用などは、原則として全額を経費として計上できます。

ただし、あくまで「仕事目的であること」が前提のため、プライベートと明確に区別できるよう、「日付」「相手」「内容」などを記録しておくと安心です。

接客に必要な知識のための書籍代

ホステスやキャバ嬢として働いていると、経営者や医師、会社員など、さまざまな職業のお客様と接する機会があります。
そのため、会話力や教養を高めるために書籍などで勉強することも、仕事の一環とみなされやすい傾向にあります。

たとえば、経済・ゴルフ・ワイン・心理学など、接客に役立つ内容の本であれば、書籍代を経費として計上できる可能性が高いでしょう。

税理士に依頼した場合の報酬代

税理士に依頼する費用は基本的に全額経費計上できます。

税理士には確定申告の代行や、経費の内容が正しいかどうかの確認など、仕事に関連する業務を依頼するため、必要経費として認められるからです。

とくに、ナイトワークのように経費の判断がむずかしい業種では、税理士に依頼することで安心して本業に集中できるメリットもあります。

経費にできない項目

ハイブランドの小物や衣装代

ハイブランドの小物や衣装代は基本的に経費にはできません。

ただし、高級店舗で働いていたり、ハイブランドの小物や衣装で接客することがキャラクター化しており、それが売り上げに直結していたりする場合は、例外として認められる可能性があります。

ただし、自己判断で経費に含めるのは危ないため、税理士に相談のうえ経費計上するか決めたほうが良いでしょう。

スポーツジムの会員費

ホステスやキャバ嬢が通うジムの会員費は基本的に経費で落とすことはできません。

個人でスポーツジムの会員費が経費となるのは、トレーナーのようなトレーニングが仕事の人です。

ジムで鍛えることが夜職に直結しているとは証明しにくいので、経費に含めないほうが無難でしょう。

ただし、お客様との付き合いで利用した実績があり、ジムに行ったことで売り上げが上がったりしたことが証明できれば経費として含められるでしょう。

美容代を経費として落とす際の勘定科目

ホステスやキャバ嬢が美容代を経費として落とす際は「美容費」という勘定科目で分けると良いでしょう。

とくに個人事業主として申告している場合、自分で勘定科目を設定できるため、「消耗品費」や「雑費」などにまとめず、用途が明確な科目に分けることで説得力が増します。

年間の美容費が夜職の売り上げと比例すれば、必要経費であることの説明がしやすくなります。

経費計上には領収書が必要

経費を計上する際は、領収書が必要です。税務調査が入ったときに、架空の経費を計上していないことを証明する最も簡単で有効な手段だからです。

ただし、夜職におけるヘアセットの領収書は、お店によって対応が異なるため、必要に応じて確認をしたほうが良いでしょう。

都度払いタイプ:その場で支払う形式であれば、多くの美容室が都度領収書を発行してくれます。必ずもらって保管しましょう。
給料天引きタイプ:お店と契約している美容室やお店にヘアメイクが常駐している場合は、給料から天引きされるケースが大半です。この場合、お店に明細や証明書類の発行が可能かどうかを確認しましょう。

また、領収書は最大で7年間保管しておく必要があるので、処分せずに取っておきましょう。年別で分けて保存しておくと紛失防止にもなり、あとで見直す際にも便利です。

確定申告で美容代を経費とする際の注意点

確定申告で経費として申告する美容代は、ホステスやキャバ嬢の仕事に直接関連していることが前提となります。

たとえば、出勤前のヘアセット代は接客のために必要で、お店からも義務化されていることが多いため必要経費として認められる可能性が高いですが、ヘアカラーやカットはプライベートの支出となることが一般的です。プライベートの支出は経費として計上できないので注意しましょう。

もし過去に、プライベートの美容代を「美容費」として申告している場合は、修正申告を行う必要があります。修正申告では、追加の所得税や住民税のほか、延滞税や加算税(ペナルティ)が課されることがあります。

ただし、税務調査で申告ミスを指摘されたあとのほうがペナルティは重くなるため、過去の申告に間違いがあると気付いた時点で、修正申告をしておいたほうが安心です。

経費として落とせるのか迷ったら税理士に相談!

ホステスやキャバ嬢の美容代やそのほかの支出が「経費として落とせるのか」と、迷う場合は税理士に相談しましょう。

とくに、美容整形費用やエステサロン代などは税理士によって経費に含められるか見解がさまざまです。このように、税務のプロでも迷う項目があるため、自己判断で経費計上しないほうが安全です。

また、確定申告の際に税理士の署名がある申告書は、税務署からの信頼性が高まる傾向にあります。これは、税務のプロである税理士が内容を確認・監修していることが明らかだからです。水商売は税務署から目をつけられやすい職業なので、税理士に確認してもらうことで税務調査の対象になりにくくなるメリットもあります。

税理士法人松本は、国税OBが10名以上在籍している実績豊富な税理士事務所です。水商売に特化した税務サポートを行っており、夜職ならではの経費や節税、税務調査の対応にも強みがあります。

水商売に対応してくれる税理士事務所は限られているため、小さなことでも税務関連で不安なことがある方は、気軽にご相談ください。


まとめ

ホステスやキャバ嬢の美容代が経費として認められるかどうかは、それが売り上げや仕事に直結しているかどうかがポイントになります。たとえば、仕事だけでしか利用しないリップやハンドクリームなどの化粧品や、ヘアセット代などは必要経費として認められます。また、グレーゾーンに入る美容整形も、整形によって売り上げが上がったことを証明できれば経費として認められることもあるでしょう。このように、水商売の仕事に必要なものであることが証明できる場合は経費として計上可能です。

また、迷った場合や判断がむずかしい支出については、必ず税理士に相談することをおすすめします。夜職に詳しい税理士であれば、節税のアドバイスや税務調査のリスク対策まで幅広くサポートしてくれるでしょう。