スナックの開業を検討している方のなかには、「利用できる助成金にはどのようなものがあるのか気になる」という方も多いのではないでしょうか。

スナックは一般的に飲食店業に分類されるため、活用できる助成金や補助金の種類が比較的豊富です。とくに、創業支援や雇用促進、IT導入、店舗改装などに関する制度に該当するケースがほとんどです。

本記事では、助成金と補助金、融資との違いや、スナック開業に利用できる助成金・補助金一覧、注意点などを解説します。

この記事を読めば、どのような補助制度があるのか、補助金額の目安や申請時のポイントが理解できるようになり、開業に向けた資金計画を効率良く進められるようになるでしょう。

助成金とは?

助成金とは、国や自治体などの公的機関から支給される資金のことで、主に企業や個人事業主の取り組みを支援する目的で設けられています。財源は税金などの公的資金であるため、申請には所定の条件を満たす必要があります。

多くの場合、助成金は返済不要であることが大きなメリットです。資金調達後に返済義務が発生しないため、資金繰りに余裕を持たせやすくなります。

ただし、助成金は原則として後払いで支給されるため、開業前の初期資金としての活用は難しいケースが一般的です。

そのため、開業後にかかった経費の一部補填や、従業員の雇用、人材育成、設備投資など、事業運営における資金負担を軽減する目的で活用できます。

助成金と補助金の違い

助成金 補助金
提供機関 厚生労働省、自治体 経済産業省、自治体
目的 雇用、教育、労働環境の改善 事業の強化
財源 雇用保険料、労働保険料 税金
支給額 数万円〜数百万円 数十万円〜1億円超
受給条件 要件を満たせば支給 要件を満たせば支給

(審査あり)

支給時期 申請から数か月〜1年半以上 申請から数か月〜1年以上
返済義務の有無 原則不要 原則不要(補助金の種類により異なる場合あり)

助成金は従業員の雇用促進や人材育成、職場環境の改善など「人」に関する取り組みを支援する制度です。支給額は補助金に比べて少額であることが多いものの、一定の条件を満たせば原則として受給可能で、審査による不採択のリスクは比較的低くなっています。

一方、補助金は、主に設備投資やシステム開発など、事業者による「事業活動」を支援することを目的とした制度です。支給額は数千万円から1億円を超えることもあります。ただし、補助金は審査制であり、申請すれば必ず採択されるわけではありません。一般的な採択率は30〜50%程度とされています。また、申請受付期間が決められているため、公募スケジュールを確認のうえで申請しないといけません。

参照:日本政策金融公庫|事業者 Support Plus|補助金・助成金の活用による経営改善

助成金と融資の違い

助成金 融資
提供機関 厚生労働省、自治体 日本政策金融公庫、地方自治体、金融機関
目的 雇用、教育、労働環境の改善 資金調達(開業、経営、設備など)
財源 雇用保険料、労働保険料 銀行等の貸付資金、公的資金
支給額 数万円〜数百万円 数十万円〜数億円規模
受給条件 要件を満たせば支給 信用・返済能力などの審査あり
支給時期 申請から数か月〜1年半以上 申請から数週間〜数か月
返済義務の有無 原則不要 必要

融資は助成金と異なり、開業前の資金調達に活用できる点が大きな特徴です。また、融資金額の幅も広く、返済能力が認められれば数億円規模の融資を受けることも可能です。

融資を受けられるスピードも早く、審査に通過すれば数日から数週間で借りられるケースもあるため、開業準備や急な資金ニーズに対応しやすい手段といえます。

さらに、融資は資金の使途が比較的柔軟であり、開業資金に限らず、設備投資、広告費、運転資金など、さまざまな用途で活用可能です。

ただし、融資は原則として返済義務があり、利息(金利)も発生するため、総返済額は借入額を上回ることになります。助成金のような返済不要の制度とは根本的に異なります。

融資のなかでも銀行は審査が厳しく、過去の実績や財務内容が重視されるため、開業直後や創業前では通過が難しい場合もあるでしょう。

そのため、最初は日本政策金融公庫や地方自治体の融資の活用を検討してください。銀行よりも比較的金利が低く、無担保・無保証での借入が可能な公的融資もあります。

スナック開業時に利用できる助成金・補助金一覧

スナック開業時に利用できる助成金や補助金を紹介します。

ただし、助成金と補助金には申請受付期間(公募スケジュール)が定められているため、気になる助成金や補助金を見つけたら、まずは最新の公募情報を確認してください。

創業助成金

創業助成金は、東京都内で創業予定の個人または創業から5年未満の中小企業に対して助成される制度です。創業初期に必要な経費(従業員人件費、賃借料、広告費等)の一部を助成する目的があります。

創業助成金は、各地域の自治体でも用意されていることが多いため、東京都以外で創業予定の方は、その地域に似たような「創業助成金」がないか調べてみると良いでしょう。

支給申請期限 個人:創業前
中小企業:創業から5年未満
補助金額 100400万円
助成率 助成対象と認められる経費の2/3以内
URL 東京都産業労働局「創業助成金(東京都中小企業振興公社)」

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、スナックにおいて非正規雇用(アルバイト・パート等)のキャストを正社員へ転換したり、処遇を改善したりすることで受給できる助成制度です。厚生労働省が所管する制度で、安定した雇用の促進を目的としています。

この助成金には複数のコースが設けられており、正社員化が難しい場合でも、賃上げや待遇改善に取り組むことで助成金を受けられる可能性があります。

コースの種類 ・正社員化コース
・賃金規定等改定コース
・賃金規定等共通化コース
・賞与・退職金制度導入コース
・社会保険適用時処遇改善コース
支給申請期限 正社員化または賃金規定等改定などの取り組み後6か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内
補助金額 20万円〜(企業規模や従業員数などによる)
URL 厚生労働省「キャリアアップ助成金」

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、スナックのような小さな事業者が売り上げアップや集客力向上につながる取り組みを行う際に、その費用の一部を補助してくれる制度です。ただし、スナックの場合は、常時使用する従業員の数が5名以内である必要があります。

申請枠の種類 ・通常枠
・賃金引上げ枠
・卒業枠
・後継者支援枠
・創業枠
補助対象の経費科目 ・機械装置等費
・広報費
・ウェブサイト関連費
・展示会等出展費
・旅費
・開発費
・資料購入費
・雑役務費
・借料
・設備処分費
・委託、外注費
補助金額 50250万円
補助率 2/33/4
URL 商工会議所地区「小規模事業者持続化補助金(一般型)」

参照:小規模事業者持続化補助金<一般型>ガイドブック

IT導入補助金

IT導入補助金は、スナックのような小規模事業者と中小企業が、業務効率化や売上向上を目的としてITツールを導入する際に、その費用の一部を補助する制度です。

スナック経営に適しているITツールは以下のようなものがあります。

・顧客管理システム
・会計ソフト
・勤怠管理ツール
・給与計算システム
・キャッシュレス決済対応のPOSレジ
・予約管理システム

申請枠の種類 ・通常枠
・インボイス枠(インボイス対応類型)
・インボイス枠(電子取引類型)
・セキュリティ対策推進枠
・複数社連携IT導入枠
補助金額 53,000万円
補助率 最大1/24/5
URL IT導入補助金2025

インバウンド対応力強化支援補助金

インバウンド対応力強化支援補助金は、東京都内の事業者が、訪日外国人観光客(インバウンド)に対する利便性や快適性の向上を目的として行う取り組みを支援する補助金です。

補助対象の経費科目 ・多言語対応(施設の利用案内・マナー啓発・HPの多言語化等)
・外国人用グルメサイトへの登録・掲載
インバウンド対応に係る人材育成(研修会開催等)
・公衆無線LANの設置
・キャッシュレス機器の導入(クレジットカード・電子マネー・多通貨決済等)
・ロッカー、セルフクローク等手荷物預かり設備の導入
・トイレの多機能化(男女共用多機能トイレの設置)
・ムスリム、ベジタリアン等の受入対応に係る整備
・災害時における外国人旅行者の受入対応(防災マップの作成等)
・防犯カメラの設置
補助金額 901,000万円
補助率 1/2以内(多言語対応の場合2/3以内)
URL 公益財団法人 東京観光財団「インバウンド対応力強化支援補助金」

中小企業新事業進出促進補助金

中小企業新事業進出補足補助金とは、既存事業と異なる新市場・高付加価値事業に進出する際に係る設備投資等を支援してくれる制度です。たとえば、不動産事業者が所有物件を活用してスナックを開業する際に利用できます。

要件の種類 ・新事業進出
・付加価値額
・賃上げ
・賃上げ特例
・事業場内最賃水準
・ワークライフバランス
・金融機関
補助対象の経費科目 ・機械装置、システム構築費
・建物費
・運搬費
・技術導入費
・知的財産権等関連経費
・外注費
・専門家経費
・クラウドサービス利用費
・広告宣伝・販売促進費
補助金額 7507,000万円
補助率 1/2
URL 中小企業新事業進出促進補助金

スナック開業の助成金交付までの流れ

スナックの開業時に助成金を活用する場合、交付までには以下のような8ステップを踏むのが一般的です。

1. 公募:助成金・補助金の募集が開始される
2. 審査:提出書類や事業計画書に基づき、支給の可否が審査される
3. 採択:審査を通過すると「採択通知」が届く
4. 交付申請:助成金の正式な交付を申請し、必要書類を提出する
5. 事業開始:交付決定後に、補助対象となるスナック事業を開始
6. 中間審査:事業の進捗状況について中間的な報告・確認が行われる
7. 報告書の提出:事業完了後、経費の明細や成果をまとめた報告書を提出
8. 補助額の確定・振り込み:報告書に基づき補助額が確定し、指定口座に助成金が振り込まれる

この流れはあくまでも一般的な手順であり、制度ごとに流れが異なる場合があります。実際に申請する際は、各助成金・補助金の公募要領を必ず確認のうえ、正確に手続きを進めてください。

スナック開業の助成金申請時の注意点

スナック開業に利用できる助成金を請求する際の注意点を紹介します。

申請資格と条件、期限を確認する

助成金には申請資格や受給条件があらかじめ定められており、これらを満たしていない場合は支給対象外となります。そのため、申請を検討する際は、事前に制度の要件を十分に確認しておくことが非常に重要です。

また、多くの助成金には申請期限が設定されており、期限を過ぎてしまうと、要件を満たしていても申請自体ができません。

これらの確認を怠ると、助成金を受け取れず、想定していた資金調達計画が崩れるリスクもあります。確実に活用するためにも、制度内容・要件・スケジュールの確認は早めに行いましょう。

税理士に依頼する

スナックを開業する際には、助成金の申請だけでなく、各種届出や許認可の取得、税務・会計の手続きなど、多くの業務が発生します。これらをオーナーがすべてひとりで対応するのは、時間的にも精神的にも大きな負担となるでしょう。

とくに、助成金や補助金の申請要件は専門的な知識が求められ、制度の文言もわかりにくいことが多いため、専門家である税理士に相談・依頼することで、申請の確実性が高まり、スムーズな開業につながります。

税理士法人松本は「水商売専門」の税理士事務所で、スナックの開業サポートから税務管理など幅広く対応しています。開業前から相談しておくことで、利用できる助成金や補助金の選定・申請も円滑に行うことが可能です。

スムーズで安心な開業を実現するためにも、専門知識を持つ税理士を活用しましょう。

まとめ

スナック開業に利用できる助成金・補助金の例は次のとおりです。

・創業助成金
・キャリアアップ助成金
・小規模事業者持続化補助金
・IT導入補助金
・インバウンド対応力強化支援補助金
・中小企業新事業進出補足補助金

これらの制度以外にも、開業予定地の自治体が独自に提供している補助金・助成金制度が存在する場合があります。地域によって対象業種や支給内容が異なるため、各自治体の公式サイトや商工会議所などを通じて最新情報を確認することが重要です。

また、助成金・補助金の多くには申請期間(公募期間)が設けられており、期限を過ぎると申請ができなくなるため注意が必要です。制度の内容を早めに把握し、計画的に準備・申請を進めるようにしましょう。