ガールズバーは、キャバクラなどに比べて初期資金を抑えて開業でき、さらに一般的な飲食店と比較すると高い利益率を狙えます。初めてナイトワーク関連の事業を始めたい人にとってハードルが低い業種です。
しかし、ガールズバーをはじめとした水商売のお店は、他の業種に比べて正しく申告していないケースが多いことから、税務署から厳しく目を付けられています。万が一、税務調査の対象となり、税金の処理について指摘を受ければペナルティが科される恐れがあります。そのため、ガールズバーを開業するうえでは、税金についての正しい知識を身につけ、正確な申告をすることが大切です。
今回は、ガールズバーを開業した際に納付義務が発生する税金の種類や経営者が知っておきたい節税対策について解説します。
目次
ガールズバーに課される税金の種類
ガールズバーを経営する場合は、さまざまな税金が発生します。しかし、個人事業主として開業する場合と法人を立ち上げてガールズバーを運営する場合では課される税金にも違いがあります。ここでは、個人事業主の場合と法人の場合に分けて納付義務が生じる税金をご紹介します。
ガールズバーを個人事業主として運営する場合にかかる税金
個人事業主としてガールズバーを運営する場合には、次のような税金の負担が発生します。
・所得税
個人事業主の場合、お店の利益が個人の利益となり、所得税の課税対象となります。ガールズバーの場合は、お店の売上から店舗の家賃、キャストに支払った報酬、お酒やおつまみの仕入れ代、水道光熱費などの経費を差し引いて所得額を算出します。
所得税は、課税所得額に応じて税率が変わる累進課税制度が採用されており、利益が多くなるとその分適用される税率も高くなる仕組みです。
・住民税
所得税は国に納める国税ですが、住民税は住んでいる都道府県と市区町村に納付する地方税です。前年の所得額をもとに計算されるため、開業初年度については税金を納める必要はありませんが、利益が出た場合、翌年の住民税は高くなる可能性があるため注意が必要です。
・個人事業税
個人事業税は、個人事業主が営む事業に対して課される税金です。行政が提供するサービスの費用負担を目的とする税金で、1年間の事業所得の額が290万円を超えた場合に納税が必要になります。これは、事業主控除が290万円に設定されているためです。ただし、年の途中で開業した場合は、開業月からの月数に応じて事業主控除の額を計算しなければなりません。
ガールズバーの場合、第1種の飲食業に該当するため、5%の税率が適用されます。また、個人事業税は所得税など、その他の税金とは異なり、全額を経費として計上することが可能です。
・消費税
消費税は、2年前の売上額が1,000万円を超える場合に納税の義務が生じます。したがって開業した年は消費税の納税義務は生じません。
しかし、インボイス制度のスタートにともない、開業と同時にインボイス発行事業者として登録する場合は、売上の額にかかわらず消費税の納税が必要になるルールへと変更されています。したがって、インボイスの発行事業者として登録をする予定の場合は、消費税の納付が必要です。
・源泉所得税
ガールズバーの開業をするのであれば、当然、キャストやスタッフに支払う報酬や給与が発生します。キャストやスタッフをアルバイトとして雇用する場合も業務委託契約を締結する場合も、支払う給与や報酬からは所得税を天引きして、本人に代わって国に納めなければなりません。これまで事業を営んでいない場合は忘れがちになりますが、源泉所得税は原則として給与や報酬を支払った月の翌月10日までに納付する必要があります。
ガールズバーを法人として運営する場合にかかる税金
会社を設立し、法人としてガールズバーを運営する場合は納付すべき税金も変わってきます。法人に課される税金は以下のようなものです。
・法人税
お店の所得に対して課される税金です。所得税は、課税所得額に応じて5%~45%が適用され、所得額が高くなるほど税率も高くなります。しかし、法人税には所得税のような累進課税制度は採用されていません。資本金1億円以下の法人に課される法人税の税率は、年800万円以下の部分は15%、年800万円を超える部分は23.2%となります。
所得税の税率は最大で45%になるのに対し、法人税は23.2%を超えることはありません。この点は、法人を設立してガールズバーを運営する最大のメリットになるといえるでしょう。
一般的な業種の場合は、個人事業主として開業した後、法人化をして事業を法人に引き継ぐことが可能です。しかし、ガールズバーのように飲食店営業許可を取得し、深夜酒類提供飲食店の届出を出して運営している場合は、名義変更によって事業を継続することはできません。個人事業を廃業し、新たに保健所に飲食店営業許可の申請をし、警察に深夜酒類提供飲食店営業開始届出書を提出しなければならないのです。そのため、個人事業主からスタートし、後々法人化する場合は、営業できない期間が生じる恐れがある点を理解しておいた方がよいでしょう。
・法人住民税
個人の住民税同様、法人も住民税を納めなければなりません。法人住民税は、都道府県と市区町村に納める地方税ですが、均等割と法人税割の2段階で構成されています。法人税割は、法人税の額に応じて課される税金であるため、万が一、利益が出ない赤字の状態であった場合は納税の負担は発生しません。一方で、均等割は資本金の額と従業員の数に応じて一定の額が課される税金です。そのため、赤字の場合でも納税の義務が生じます。
参照元:総務省「法人住民税」
・法人事業税
法人も事業活動のために行政サービスを利用しているため、行政サービスの費用を負担する目的で課されるのが法人事業税です。法人事業税は、企業規模と事業内容によって変わってきますが、ガールズバーの場合は資本金1億円以下の普通法人に該当するため所得割が課されます。税率は、所得のうち年400万円以下の部分は3.5%、年400万円を超え、年800万円以下の部分は5.3%、年800万円を超える部分は7.0%です。
法人事業税も個人事業税と同様、全額を経費に計上できます。
参照元:総務省「法人事業税」
・消費税
法人の場合、資本金の額が1,000万円未満であれば、前々事業年度の課税売上高が1,000万円を超えるまで、消費税の納付は免除されます。しかし、個人事業主の場合と同じように、インボイス発行事業者を選択する場合は、設立当初から消費税の納税が必要です。
・源泉所得税
キャストやスタッフの給与や報酬から所得税を天引きして、国に納付をしなければならないルールは個人事業主の場合と同じです。しかし、法人の場合は、オーナーも会社から役員報酬という形で給与を受け取ることになるため、自分の報酬についても源泉徴収をしなければならない点に注意しなければなりません。
ガールズバーの経営については以下の記事で詳しく解説しています。
<関連記事>ガールズバー経営の失敗にはパターンがあるって本当?成功のポイントとは
ガールズバーが税務調査で指摘されやすいポイント
前述のようにガールズバーは税務調査の対象になるリスクが非常に高い業種です。税務調査が入った場合は、次のような点で指摘を受けることが多くなっています。
売上の申告漏れ
ガールズバーでは、お客様から現金を受け取るケースが多いため、レジを通さずに売上を除外していないかなど、売上の申告漏れを詳細に調べるケースが多くあります。おしぼりの使用数を見れば、おおよその客数を把握できるため、おしぼりの数やグラスの数と客単価から売上額を推測し、申告されている額と大きく乖離していないかが確認されます。
人件費の水増し
キャストの報酬も税務調査では指摘されやすいポイントです。まず、ナイトワークの場合、実際には仕事をしていない架空のキャストに給与や報酬を支払ったように見せかけ、人件費を水増ししている事例が見られます。そのため、キャストのタイムカードやシフトなどを確認し、人件費が正しく計上されているかが細かくチェックされます。
源泉徴収所得税の不納付
業務委託契約を結んだキャストへの報酬から源泉徴収をしたものの、実際には税金を納めていないケースも少なくありません。源泉徴収所得税の納付漏れがないかも詳しくチェックされるポイントです。
源泉徴収所得税の納付漏れがあった場合は、不納付加算税と呼ばれるペナルティが科されます。
キャストの報酬の扱い方
ガールズバーの税務調査では、キャストに支払う報酬を給与として扱うべきであると指摘されるケースが多くなっています。店側が指定したシフトで働き、店の指揮命令に基づいて仕事をしている場合、業務委託契約を結んでいると主張しても、給与とみなされる場合があるのです。
業務委託契約で支払う報酬は、外注費として処理するケースが一般的ですが、外注費は消費税の仕入税額控除の対象となります。一方、給与は消費税の課税対象外です。そのため、外注費を否認されると消費税の仕入税額控除が取り消され、外注費分の消費税額を追加で納付しなければならなくなります。
ガールズバーが実践できる節税対策
ガールズバーは税務調査の対象に選ばれやすいため、日頃から正しく帳簿を付け、正確な確定申告書を提出することが大切です。税務調査で何らかの不正が指摘されれば、過少申告加算税や不納付加算税、さらには重加算税が課される恐れもあります。
ペナルティが科されれば、多額の税金を納めなければなりません。納税の負担を最小限に抑えるためには、合法的な節税対策の実施が重要です。ここではガールズバーの経営者が実践できる節税対策を4つご紹介します。
経費は漏れなく計上する
基本的なことですが、経費として計上できるものは漏れなく経費に計上することが大切です。例えば、お店で着用する制服を用意している場合は、制服の購入代も経費に計上できます。また、キャストやスタッフとの打ち合わせにかかった飲食費用なども1人1万円以下であれば、会議費として経費に計上可能です。
そのほか、キャストの送迎代、イベント時の装飾品の購入代なども経費計上が可能です。
法人設立を検討する
法人を設立する際には、定款を作成し、出資金を準備して法務局に法人登記をするなどの手間が必要です。そのため手間が少ない個人事業主として開業する事例もありますが、ガールズバーの場合、開業にあたっては飲食店営業許可を取得し、深夜酒類提供飲食店営業開始届、防火対象物使用開始届を提出しなければなりません。
事業が軌道に乗ってから法人化する方法もありますが、先ほどご説明したように、その場合には再度、許可申請や届出をし直す必要があります。また、法人税と所得税の税率の違いにより、年間の売上から経費を差し引いた所得額が800万円~900万円程度になる場合、法人を設立した方が税金の負担を抑えられます。
したがって、ガールズバーの開業にあたり、ある程度の規模で事業を継続する予定があるのであれば、個人事業主としてではなく、法人を設立して経営した方が、節税につながる可能性があります。
共済制度を利用する
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)は、取引先の倒産によって中小企業が連鎖的に倒産することを防ぐための、独立行政法人中小企業基盤整備機構による制度です。
ガールズバーのような飲食店の場合、取引先の倒産が直接事業に影響するケースはそれほど多くはないと考えられます。しかし、掛金は全額経費として計上することができるため、大きな節税効果を得られます。
また、40ヶ月以上加入した場合は、解約時に掛金が100%還元される点も安心できるポイントでしょう。そのほか、取引先が倒産していない場合でも、設備投資や事業資金が必要になったときには、解約手当金の95%を上限として借入れが可能です。
参照元:中小企業基盤整備機構「経営セーフティ共済とは」
専門家のサポートを受ける
繰り返しになりますが、ガールズバーは税務署からチェックされる確率が非常に高い業種です。特に、法人は企業会計に則った処理が求められ、経理や会計の知識がなければ正しい申告書の作成にはかなりの労力が求められます。
節税をしながら税務調査のリスクを抑えるためには、ナイトワークに詳しい税理士のサポートがおすすめです。ガールズバーを開業する前から相談をすれば、キャストとの契約方法など、税務リスクを避けるアドバイスも受けられるでしょう。
まとめ
ガールズバーを経営すると、さまざまな税金の納付が求められます。正しく申告・納税をしない場合、税務調査でペナルティが科される恐れがあるため、納付すべき税金の種類を把握し、適切に納税することが大切です。
ただし、個人事業主として開業する場合と法人を立ち上げて運営する場合では、課される税金が変わり、納税額も変わってきます。また、法人を設立する際には、オーナーの報酬をいくらに設定するかによって会社が納める税金の額のほか、オーナー自身が負担する税金の額が変わってくるため、双方のバランスを考え、最適な金額に設定することが重要になります。
税理士法人松本はナイトワークに強い税理士法人です。上手に節税しながら税務調査リスクを抑えた経営を希望される際には、ぜひお気軽にご相談ください。
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