ホストクラブでは「売掛」と呼ばれる、代金をその場で支払わずに、後日、支払うという遊び方が多く行われています。売掛が抱える問題点は国会でも議論され、2025年には風営法の改正に至りました。しかし、売掛の仕組み自体が禁止されているわけではないため、今なお売掛でホストクラブを楽しむお客様は少なくありません。

売掛はお客様の立場から、問題を引き起こすとみなされていましたが、実はホスト側にもある問題を引き起こしています。売掛で飲食をしたお客様が最終的に代金を支払わなかった場合は、ホスト自身がその金額を立て替えているケースが多いのです。そのような場合は、回収できなかった売掛を経費として計上すると税務署から指摘を受ける可能性が高くなります。

今回は、ホストとして働く人が知っておきたい未回収の売掛と経費の関係や誤った処理をした場合の税務上のリスクなどについて解説します。

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ホストの売掛と売上・経費の関係

ホストとして働く人の多くは、お店の従業員ではなく、個人事業主という形で仕事をしています。個人事業主の場合、会社員のように会社が年末調整をして、1年間の所得にかかった税金を納めてくれるわけではありません。そのため、ホストは確定申告をして、1年間の所得にかかった税金を納める必要があります。ここで問題となるのがホストならではの売掛の問題です。

ホストの売掛の税務上の問題点

確定申告をする際には、お店からもらった報酬の合計額から仕事のためにかかった支出である経費を差し引いて所得額を求めます。

ホストクラブ(お店側)では、売掛も含めて売上として計上しています。なぜなら、日本では「発生主義」と呼ばれるルールが用いられるからです。発生主義では、お金を受け取ったときではなく、サービスや商品を提供し、代金を受け取る権利が発生したタイミングで売上を計上します。つまり、お店側では売掛を売上として計上し、ホストに報酬を支払っていることになるのです。

お店によっては売掛をお店が管理しているケースもあります。しかし、売掛を作ったホスト自身が売掛を管理するケースも少なくないでしょう。

ホストが売掛を管理する場合、お客様の代金をホスト自身が立て替えてお店に支払いをすることとなります。お客様は、ホストにお金を借りている状態になるわけです。

ホストの売掛は経費になる?

ホスト側としては、自分の売上につながる売掛ですが、実際にはお客様がお金を支払っていないため、ホスト自身がお店側にお金の立替払いをしている状態となります。そのため、ホストの方にとって売掛の立て替えは、仕事のためにかかった費用だという意識があり、確定申告時に売掛を経費として計上してしまうケースも見られます。

しかし、売掛は経費にはなりません。売掛は、将来お金を受け取る権利をもっていることから資産として扱わなければならないのです。後から回収できる可能性があるお金を経費に含めることはできません。

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ホストが未回収の売掛を経費として計上した場合のリスク

お客様の売掛を立て替えたからといってその金額を経費に計上するという方法は、税務上正しくありません。万が一、ホストが売掛を経費として処理していた場合、次のようなリスクが生じます。

売掛を経費として捉え、確定申告をしなかった場合のリスク

売掛は経費として扱えると思い込み、お店から受け取った報酬から売掛を含めた経費を差し引くと、課税対象となる所得額は低くなってしまいます。自分が立て替えた売掛が多い場合、売掛を経費として計算すると、課税所得額が基礎控除額を超えていないから、確定申告はしなくてもいいという誤った判断につながります。

2026年分については、ホストのような個人事業主の場合、年間の所得額が104万円を超えなければ確定申告は不要です。そのため、売掛を経費に入れて計算をすると、所得額が104万円以下だから確定申告をしないという事態が発生する恐れがあります。

しかし、先ほどご説明したように、売掛は未回収であっても経費にはできません。そのため、確定申告は、お店から受け取った報酬から、売掛を含まない営業活動の経費を差し引いた額を所得額として計算しなければならないのです。

売掛を経費に含まなければ年間の所得額が104万円を超えるにもかかわらず確定申告をしなかった場合は、無申告加算税が課される恐れがあります。無申告加算税は、期限までに確定申告をしなかったことに対するペナルティです。

無申告加算税の税率

無申告加算税の税率は、期限後申告のタイミングと対象税額によって次のように変わります。

50万円以下の部分 50万円超~300万円以下の部分 300万円を超える部分
税務署の事前通知前に自主的に期限後申告をした場合 5%
税務署の事前通知を受けてから期限後申告をした場合 10% 15% 25%
税務調査の決定を受けてから申告をした場合 15% 20% 30%

参照元:財務省「加算税制度の概要

税務署では納税者が正しく確定申告をしているかを調べるため、税務調査を実施しています。ホストは適切に納税をしていない人が多い職種として知られているため、他の職種に比べると税務調査の対象になるリスクは非常に高い状態にあるといえます。

税務調査を行う前には原則として「事前通知」がなされており、税務調査を実施する旨や実施日時についての連絡が入ります。この事前通知を受ける前に、ホストが自ら確定申告をした場合の無申告加算税の税率は税額にかかわらず5%です。

しかし、税務調査の事前通知を受けて、調査が実施される前に期限後申告をした場合は、納税額ごとに違う税率が適用されます。その場合の税率は50万円以下の部分は10%、50万円超~300万円以下の部分が15%、300万円を超える部分は25%です。さらに、税務調査を受けて税務署から決定を受けた場合、無申告加算税の税率はより高くなります。

売掛を経費に含めて確定申告をした場合のリスク

売掛を経費に含めて確定申告をしているホストの方もいるのではないでしょうか。確定申告をしていれば、問題はないだろうと思う人もいるかもしれません。しかし、売掛を経費に含めて確定申告をしていた場合、課税所得額は本来より少ない額に計算されているため、納付した税額が不足している状態となります。そのため、この場合は過少申告加算税と呼ばれるペナルティが課されます。

過少申告加算税の税率

過少申告加算税の税率も正しく申告をし直すタイミングと税額によって次のように変わってきます。

期限内申告額と50万円のいずれか多い額を下回る部分 期限内申告額と50万円のいずれか多い額を超える部分
税務署の事前通知前に自主的に修正申告をした場合 不適用
税務署の事前通知を受けてから修正申告をした場合 5% 10%
税務調査の指摘を受けてから修正申告をした場合 10% 15%

参照元:財務省「加算税制度の概要

意図的に売掛を経費にしていた場合のリスク

ホストが売掛を経費にしていた場合、確定申告をしていなければ無申告加算税、確定申告をしていれば過少申告加算税が課される可能性があります。しかし、これらは、売掛は経費には含めてはいけないというルールを理解しておらず、確定申告をしていなかったり、申告税額が不足してしまったりといった場合に課されるペナルティです。

売掛は経費にできないというルールを理解していながら、意図的に売掛を経費に計上していた場合は、「重加算税」と呼ばれるより厳しいペナルティが課されます。無自覚に確定申告をしなかった、売掛を経費に含めてしまったという場合と異なり、わざと売掛を経費に含める行為は、納税の義務を故意に免れようとする違法行為とみなされるのです。この場合は、無申告加算税や過少申告加算税に代えて重加算税が課されます。

無申告加算税に代えて重加算税が課される場合の税率は40%、過少申告加算税に代えて重加算税が課される場合の税率は35%です。

ホストの税金に関しては以下の記事でも詳しく解説しています。合わせてご一読ください。

<関連記事>ホストが手渡しでもらった報酬に税金はかかる?納税の方法とは

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ホストが売掛を経費にできるケース

ホストが未回収の売掛を経費にできるケースもあります。ただし、売掛を経費にするには非常に厳しい要件があります。

回収できない売掛を経費にできるのは次のような場合です。

お客様が自己破産をした場合

未回収の売掛は、貸倒損失として経費に計上できる場合があります。貸倒損失とは、取引先からの債権を回収できなくなった場合に経費として計上できる損失のことです。しかし、ホストが個人のお客様の売掛を貸倒損失として扱うには、厳しい要件を満たす必要があります。まず、お客様が裁判所で自己破産が認められ、売掛が法的に消滅した場合は、経費として計上が可能です。ただし、その際には免責決定通知書等の公的書類の保管が必要になります。

事実上の回収が不可能な状況にあると認められる場合

お客様が行方不明になって電話が不通になるなど、完全に連絡が付かなくなったり、収入や財産がなく、返済が難しい状態にあることを証明できれば、貸倒損失として計上が可能です。

しかし、連絡が取れないという事実を証明するためには内容証明書を郵送したり、お客様の自宅や就業先を訪問して督促をするなど、回収に向けたアクションを起こし、その証拠を残す必要があります。ホストクラブでは、初回に身分確認はするものの、お客様の自宅住所まで管理しているケースは多くありません。したがって、内容証明書を送付することは難しいでしょう。また、電話番号は知っていても勤務先の名称や場所までは知らないケースも多いのではないでしょうか。したがって、事実上、回収が不可能な状況にあるという立証は極めて難しいと言わざるを得ません。

取引停止から1年以上が経過している場合

継続的な取引関係があった場合は、取引停止から1年以上が経過したタイミングで、売掛金から備忘価額を差し引いた残額を経費にすることが可能です。(備忘価額とは、帳簿上に記録を残すために必要な額で、一般的には1円とするケースが多くなっています。)しかし、ホストと顧客の関係では、継続的な取引関係を証明することは簡単ではありません。

もし、取引停止から1年以上が経過しているという事実を証明できた場合であっても、経費として計上する前に必ず申告期限がやってきます。個人事業主の確定申告は、1月1日~12月31日までの1年間の所得額と所得にかかる税金を、2月16日から3月15日までに申告するルールです。

したがって、取引停止から1年以上が経過しているという事実を立証して、売掛を経費化する場合も、確定申告の期限が先に訪れてしまいます。したがって、まずは、回収できなかった売掛があった場合でも、売掛は経費としてではなく、資産に含めて確定申告をしなければならないのです。

未回収の売掛の経費計上に悩む場合は税理士に相談を

ホストが未回収の売掛を経費に計上するためには、客観的な証拠と手続きが必要です。もし、自己流の判断で経費に計上すれば、税務調査の対象となるリスクが高くなります。税の専門家である税理士であれば、未回収の売掛を貸倒損失として経費に計上するためのさまざまなアドバイスを受けることができるでしょう。また、万が一、税務調査の対象になった場合でも、税法の知識をもとに経費として扱える理由を説明してもらえる可能性があります。

お客様の売掛の未回収に悩む場合は、税理士への相談をおすすめします。

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売掛回収のためにかかった費用は経費にできる

回収できなかった売掛を経費として計上するには、非常に厳しいハードルをクリアしなければなりません。しかし、未回収の売掛を回収するためにかかった費用は経費に計上できます。

例えば、売掛回収のために電話をかけた際の通話料金、話し合いをするためにお客様と会ったときにかかった飲食代、話し合いのために指定の場所に移動した際の交通費などは、経費計上が可能です。ただし、税務調査時にはプライベートの支出ではないことを明確に示す必要があるため、領収書などの裏に目的やお客様の名前を記載したり、話し合いを行った日や場所を記録しておく必要があります。

また、売掛の回収が難しいために、弁護士などの専門家に対応を依頼した場合の費用も経費に計上が可能です。

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まとめ

ホスト業界では、売掛と呼ばれる後日に代金を支払う方式でビジネスが行われています。風営法の改正などによって、売掛は規制されつつあるものの、売掛自体は禁止されていません。

売掛を回収できない場合もありますが、回収できない売掛を経費にすることはできず、売掛を経費にした場合は税務調査で指摘され、ペナルティが課される恐れもあります。未回収の売掛に悩む場合は、自己判断で経費にはせず、税理士に相談しましょう。

税理士法人松本は、ホストクラブなど、水商売業界に強い税理士法人です。売掛にお悩みの場合はお気軽にご相談ください。


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