確定申告には、税務の知識も求められます。初めて確定申告書を作成する場合などは特に、専門用語が理解できず、作成に時間がかかることもあるでしょう。そのため、「せっかく頑張って確定申告をしたのに、後から見直したら間違いだらけだった!」という事態が発生する場合もあります。
確定申告が間違いだらけになった場合は、気が付いた時点で正しく申告をし直すことが大切です。間違いだらけの確定申告書を提出したまま放置しておくと、後々、ペナルティが課される恐れがあります。
間違いだらけの確定申告書が出来上がる理由や提出した確定申告書が間違いだらけだったことに気が付いた場合の対処法、提出したまま放置するリスクなどについて解説します。
確定申告書が間違いだらけになる、よくあるミス5選
確定申告書が間違いだらけになってしまう一つの理由は、日本の税制度が非常に複雑だからです。特に、医療費控除や扶養控除など、さまざまな控除が用意されているものの、それぞれの適用条件は異なるため、間違いが発生しやすくなります。また、毎年税制改正が行われているため、常に情報をアップデートしないと過去のルールにしたがったまま計算をしてしまい、間違った確定申告書が出来上がってしまうケースもあります。
ここでは、確定申告書が間違いだらけになる、よくあるミスを5つご紹介します。
- ●収入の申告漏れ
- ●医療費控除に対象外の費用を含めている
- ●雑所得にも青色申告特別控除を適用している
- ●収入と所得を混同している
- ●源泉徴収税額の記入漏れ
収入の申告漏れ
夜職で働く人の場合、多くはお店の従業員ではなく、業務委託契約という形で仕事をします。従業員として雇用されている場合、会社が年末調整を行うため、確定申告をする必要はありません。しかし、お店がキャバ嬢やラウンジガール、ホストとして働く人などと雇用契約を結ぶケースはほとんどない状況です。そのため、夜職で働く人は確定申告を行う必要がありますが、会社員のように1年間に支払った給与や徴収された所得税の額が記載された源泉徴収票は発行されません。
したがって夜職の場合、報酬の支払明細書などをもとに、1年間に得た収入を自分で管理する必要があります。報酬が銀行に振り込まれる場合は、銀行の入出金履歴を見れば金額を確認できますが、現金で受け取っている場合などは明細を紛失すると、金額を把握しにくくなるでしょう。そのため、確定申告を行う際に、収入の申告漏れが発生し、確定申告に間違いが生じる場合が見られます。
そのほか、昼間に会社員として働き、夜に副業として夜職に就いている人もいるでしょう。副業の所得が年間20万円を超える場合は、副業の所得について確定申告をしなければなりません。副業の所得を申告しないという事例も多く見られます。
医療費控除に対象外の費用を含めている
医療費控除とは、1年間に支払った医療費が年間10万円(総所得金額が年間200万円未満の場合は総所得金額の5%)を超える場合に、税金が軽減される制度です。
病気になって病院やクリニックを受診した際に発生した診療費や薬局での薬代、通院にかかった交通費などは、医療費控除の対象となります。しかし、医療費控除の対象には含まれないものもあります。
夜職で働く人には美容意識が高い人が多くいます。しかし、美容目的で行う美容整形や肌を美しくすることを目的とした美容皮膚科での治療、医療脱毛などは、病気の治療を目的としていないため、医療費控除の対象に含めることはできません。医療費控除に、美容外科や美容皮膚科での治療費を誤って含めて計算をしてしまう間違いも確定申告書作成時によく起こるミスの一つです。
雑所得にも青色申告特別控除を適用している
確定申告の申告方法には、白色申告と青色申告の2種類があります。このうち青色申告は、最大65万円の青色申告特別控除を受けられるなど、節税効果を得られる申告方法です。
キャバクラやホストクラブ、ラウンジなどでの仕事を本業としている夜職の人であれば、お店から得る報酬は「事業所得」に該当し、青色申告承認申請書を税務署に届け出ていれば青色申告ができます。また、条件を満たすことで青色申告特別控除を適用させることも可能です。
しかし、副業として夜職に就いている人の場合、お店から得る報酬は「雑所得」に該当します。青色申告特別控除が認められるのは、事業所得、不動産所得、山林所得の3つに限定されています。つまり、雑所得は青色申告特別控除の適用対象にはならないのです。副業で夜職に就いている人が、雑所得であるにもかかわらず青色申告特別控除を適用させるという間違いもよく見られます。
収入と所得を混同している
「収入」と「所得」は似ていますが、全く異なるものを指す言葉です。夜職の場合は、お店から受け取る報酬は収入に該当します。しかし、所得は、収入から収入を得るためにかかった費用(経費)を差し引いた利益を指す言葉です。夜職では、衣装の購入代やレンタル代、お店までの交通費、帰宅時の交通費、仕事用のスマートフォンの利用料金、お客様へのプレゼント代などを経費にできます。
収入と所得の違いを認識しておらず、所得欄に収入額を記載してしまうと課税所得額が高くなってしまいます。
源泉徴収税額の記入漏れ
夜職がお店から受け取る報酬からは、所得税が天引きされている場合があります。お店では、夜職のキャストなどに報酬を支払うときは、報酬から所得税と復興特別所得税を源泉徴収しなければならない義務があるためです。源泉徴収とは、事業主が報酬から税金を差し引いて、本人に代わって国に納付する制度のことです。
源泉徴収された税額があるにもかかわらず、確定申告書に源泉徴収税額の記入を忘れてしまうと、税金が二重に課される、所得税を支払い過ぎる事態となります。源泉徴収税額の記入漏れも確定申告でよくある間違いです。
提出済みの確定申告書が間違いだらけだった場合の対処法
提出済みの確定申告書が間違いだらけだった場合には、正しく申告書を作成し直す必要があります。ただし、間違いに気が付いたタイミングや間違いの内容によって対処法が異なります。
申告期限内なら「訂正申告」をする
確定申告の期間内であれば、確定申告書を正しく作り直し、提出することで訂正申告を行えます。紙の確定申告書を提出する場合には、確定申告書をもう一度作成し直し、税務署の窓口に提出するか郵送します。また、パソコンやスマートフォンを使い、e-Taxで申告した場合は、保存しているデータを読み込み、間違いを修正して正しい申告書を送付します。期間内であれば、最後に提出したものが有効な申告書として扱われます。
申告期間内であれば、間違いによって申告額が少なかった場合にも、申告額が多過ぎた場合にも訂正申告によって間違いを訂正できます。添付書類については、追加で提出が必要な書類がある場合のみ提出すれば問題ありません。
申告期限後で申告税額が不足していた場合は「修正申告」をする
申告期限内に間違いに気が付いた場合は訂正申告を行いますが、申告期限後になると、間違いの内容によって必要な手続きが変わってきます。申告税額が不足していた場合には、修正申告という手続きを行います。
訂正申告では、確定申告書を作成してもう一度申告をしましたが、修正申告では訂正する年分の修正申告書を作成します。修正申告書は、税務署の窓口で入手するか、国税庁のホームページからダウンロードできます。
提出するのは確定申告書(第一表・第二表)です。その際、第一表の表題の空白箇所に「修正」と記載し、種類欄の「修正」を丸で囲み、「修正申告」の欄に当初の申告税額や修正申告税額、税額の増加額などを記載します。また、第二表にも表題部分の空白箇所に「修正」と記載し、「特例適用条文等」の欄に修正申告によって修正する事項と修正した理由について記載します。
申告書のダウンロード先はこちらです。国税庁「確定申告書(令和6年分以前用)」
また、e-Taxの場合は、確定申告書等作成コーナーにログインし、紙の確定申告書と同様に、対象の年分の修正申告書を作成し、送信します。
参照元:国税庁「申告に誤りがあった場合など」
申告期限後に「更正の請求」で払い過ぎた税金の還付を求める
申告期限後に、間違いによって税金を払い過ぎたことに気が付いた場合は、更正の請求と呼ばれる手続きをします。更正の請求は、更正の請求書を税務署に提出することで申請します。
更正の請求書は、税務署の窓口または国税庁のホームページからダウンロードが可能です。申告書のダウンロード先はこちらです。
国税庁「A1-2、H1-1 所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続」
更正の請求書には、請求の理由を具体的に記載しなければなりません。また、更正の請求の内容を証明する領収書や控除証明書などを添付しなければならない点に注意が必要です。
確定申告書等作成コーナーでも更正の請求を行うことができます。
更正の請求の場合、申告額が不足しているわけではないため、ペナルティが課されることはありません。しかし、更正の請求ができるのは過去5年分の間違えた申告についてです。それ以上は遡れず、税金を払い過ぎても還付は受けられない点に注意しましょう。
参照元:国税庁「申告が間違っていた場合」
間違いだらけの確定申告を提出したままにしているとどうなる?
間違いだらけの確定申告書を提出してもそのまま訂正申告や修正申告をせず、放置していた場合は、税務署から指摘を受け、ペナルティが課される恐れがあります。
過少申告加算税が課される
税務調査によって確定申告の間違いによる申告税額の不足を指摘された場合は、過少申告加算税が課されます。過少申告加算税の税率は、期限内申告額と50万円のいずれか多い金額までは10%、期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分は15%となります。
ただし、税務調査の事前通知を受ける前に、納税者が自ら修正申告を行った場合は、過少申告加算税は免除されます。また、税務調査の事前通知を受けた後でも、税務調査が実施される前に自主的に修正申告を行えば、税率はそれぞれ5%と10%に軽減されます。
申告漏れが税務署にバレる理由などについては次の記事で詳しく解説しています。
<関連記事>少額でも確定申告の申告漏れは危険?税務署にバレる仕組みと対応策
延滞税が課される
過少申告加算税は、期限内の確定申告での申告税額が不足していたことに対して課されるペナルティです。また、間違いだらけの確定申告書を提出していたことによって、税額が不足していると、納税が完了していない状態となります。延滞税は、納税が遅れたことに対して課されるペナルティです。自主的に修正申告を行った場合でも、納期限を過ぎているため、延滞税は課されます。
延滞税は、納税が完了する日までの日数に応じて日割りで計算される付帯税となります。納期限の翌日から2ヶ月までとそれ以降で税率が大きく変動しており、納税が遅れるほど延滞税の額は増える仕組みです。修正申告の場合は、修正申告書を提出した日が納付期限となります。修正申告書の提出時に延滞税も納付しないと、修正申告書を提出した日の翌日から高い税率が適用されるため、注意しましょう。
納め過ぎた税金が還付されない
間違いによって納税額が多過ぎた場合は、ペナルティを課されることはありませんが、放置していても税務署から納め過ぎた税金が還付されることもありません。税金を納め過ぎていたことに気が付いたときには、納税者が自ら更正の請求書を提出しない限り、税金が還付されることはないのです。
更正の請求ができる期限は、法定申告期限から5年以内です。間違いに気が付いたときには早めに更正の請求の手続きを行いましょう。
まとめ
間違いだらけの確定申告書を提出したことに気が付いたときには、早めに訂正申告や修正申告を行うことが大切です。間違えたまま放置していると税務調査の対象となり、修正申告を求められ、過少申告加算税の納付を求められる可能性があります。少しでも税負担のリスクを軽減したいのであれば、間違いに気が付いたタイミングで早めに訂正申告や修正申告を行うことが大切です。
また、間違いだらけの確定申告書を防ぐためには日頃から収入や経費をこまめに記録するなどの対応が必要です。しかし、確定申告書の作成は複雑であり、チェックをしてもミスが生じる場合があります。正確な確定申告書の提出によって税務調査やペナルティのリスクを抑えたい場合には、税理士法人松本までお気軽にご相談ください。
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