世界各地で紛争が起こり、経済の先行きの不透明感が増している中、金の価格が高騰しています。金のニーズが高まり、金相場が上昇しているタイミングで売却すれば、高い利益を得られるからです。
しかし、金を売却して利益が出た場合、確定申告をして、税金を納めなければならない可能性があります。金の売却で得た利益にかかる税金のルールをしっかり把握しておかないと、後から税務調査の対象となり、ペナルティを課される恐れがあるため注意が必要です。
そこで今回は、金の売却によって利益を得た場合の確定申告のルールや税額の計算方法、節税方法などについて解説します。
金の売却をして確定申告が必要になるケースとは
金を売却しても必ず確定申告が必要になるわけではありません。確定申告が必要になるのは、売却によって一定額を超える利益を得た場合です。
金の売却で得た利益とは
金を売却して利益を得た場合には、確定申告をして、納税をしなければならない場合があります。しかし、確定申告の対象となるのは、金を売却したときの「売却額」ではありません。
課税対象となるのは、金の「売却益」です。つまり、売却によって得た儲け部分が課税の対象となります。
したがって、金の売却額から、金を取得した際の費用、取得時の手数料、売却時の手数料など、取得と売却にかかった費用を差し引いた額が課税対象の売却益となります。誤って売却額を課税対象額として計算すると納税額が大きくなってしまうため、売却額と売却益の違いを正しく理解しておくようにしましょう。
原則として年間50万円を超える利益を得た場合に確定申告が必要
金の売却で発生した利益は、譲渡所得に分類されます。譲渡所得とは、土地や建物、株式、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することで生じた所得のことです。
譲渡所得には、50万円の特別控除が設定されているため、金の売却で年間50万円を超える利益を得たときに確定申告をし、譲渡所得税を納める義務が生じます。しかし、ここで注意しなければならないのは、譲渡所得の50万円は金の売却によって得た所得だけに適用されるものではなく、ほかに資産を売却して得た譲渡所得とも合算して考えなければならない点です。
例えば、金の売却で40万円の利益を得たとします。このとき、金以外に譲渡所得が発生していなければ、特別控除の50万円より売却益が低いため、確定申告は不要です。しかし、同じ年に金の売却に加え、ゴルフ場の会員権を50万円で売却した場合、譲渡所得90万円になります。この場合は、特別控除の50万円を差し引いても課税対象額が40万円となるため、確定申告が必要です。
年収2,000万円以下の会社員の場合の確定申告
年収2,000万円以下の会社員で、年末調整を受けている人は、給与所得以外に所得を得ていてもその額が年間20万円以下であれば、確定申告をする必要はありません。
金の売却益が70万円だった場合、譲渡所得の特別控除を差し引いた後の額は20万円となります。したがって、この金の譲渡所得以外に所得がなければ、給与所得以外の所得額が年間20万円以下となるため、確定申告は不要です。
ただし、金の売却益以外に副業所得があり、合計すると年間の給与所得以外の所得額が20万円を超える場合は、確定申告をしなければなりません。
年金受給者や専業主婦の場合の確定申告
一方、給与所得のない年金受給者や専業主婦の人が金を売却した場合は、給与所得がないため、金の売却益を含めた譲渡所得額が50万円を超えていれば確定申告が必要です。
個人事業主の場合の確定申告
譲渡所得には、分離課税と総合課税の2種類があります。分離課税とは、ほかの所得とは合算せず、その所得だけで税額を計算する課税方式です。具体的には土地や建物、株式を売買して得た譲渡所得が分離課税に該当します。分離課税の場合、所得ごとに譲渡所得税率が定められており、事業所得や給与所得等とは分けて計算しなければなりません。
一方、総合課税とは、異なる種類の所得とも合算し、合計所得額を算出してから税額を計算する方法です。金の売却によって得られた所得は、総合課税の対象です。そのほか、ゴルフ会員権や骨とう品、宝石、書画などを売却して得た譲渡所得も総合課税に含まれます。
したがって、個人事業主の場合は、金の売却によって年間50万円を超える譲渡所得を得た際には、確定申告時に事業所得と合算して、所得税を計算することになります。
金を売却して確定申告をする際の注意点
金を売却した際に確定申告が必要となる条件についてご紹介しましたが、確定申告の際にはいくつか気を付けなければならない点があります。それは、金の所有期間によって、課税対象額の計算方法が変わってくる点です。
長期譲渡所得と短期譲渡所得
譲渡所得の中には、資産の所有期間によって「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」の2つに区分されるものがあります。一般的には、土地や建物などの不動産を売却したときの所有期間による税率の違いが知られていますが、総合課税の対象となる金の売却による譲渡所得も、所有期間によって課税額の算出方法が変わります。
まず、短期譲渡所得とは所有期間が5年以下の場合を指します。一方、所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得に該当し、長期譲渡所得の方が課税対象となる金額を算出する際に有利に働くという特徴があります。
長期譲渡所得と短期譲渡所得の判断タイミング
長期譲渡所得に該当するか、短期譲渡所得に該当するかは、取得した日と売却した日で判断するのではなく、売却した年の1月1日時点での所有期間で判断します。例えば2026年中に金の売却をしていた場合、2022年の1月1日以降に取得したものであれば得られる所得は短期譲渡所得、2021年の12月31日より前に取得していたものであれば得られる所得は長期譲渡所得となります。
所有期間による課税対象額の計算方法の違い
所有期間が5年以内の金を売却して得た利益は、短期譲渡所得に該当します。短期譲渡所得の課税対象額は、以下の式で求められます。
課税対象額=売却益-特別控除(50万円)
つまり、売却益から特別控除の50万円を差し引いた金額が課税の対象となります。例えば、金の売却で200万円の利益を得た場合の課税対象額は、200万円-50万円=150万円と計算できます。
一方、所有期間が5年を超える金を売却して得た利益は長期譲渡所得に該当し、長期譲渡所得の課税対象額は、以下の式で求められます。
課税対象額=(売却益-50万円)×1/2
長期譲渡所得の課税対象額は、売却益から特別控除の50万円を差し引いた額の1/2になるのです。
金の売却にかかる税金に関しては、以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひ併せてご一読ください。
<関連記事>金の売却には税金がかかる?無申告の場合は税務署にばれるって本当?
金の売却時に実践できる節税対策
金が高騰している中、所有している金を売却して利益が出ても、譲渡所得の課税対象となると、利益として手元に残る額が少なくなってしまいます。しかし、金の売却益は所有期間によって課税額が変わってくることを利用すれば、上手に節税することが可能です。
金の売却時に実践できる節税対策のポイントは以下のとおりです。
・5年以上保有してから売却する
・50万円の特別控除を上手く利用する
・購入時に発行された購入証明書を保管しておく
・相続した金を売却するなら相続開始の翌日から3年10ヶ月以内に売却する
5年以上保有してから売却する
金は購入してから5年以上保有していれば売却益は長期譲渡所得として扱うことができます。長期譲渡所得は、特別控除を差し引いた後の金額を1/2にできるため、課税対象となる所得額が少なくなり、結果として所得税の負担も軽減します。
所得税には、累進課税制度が採用されており、課税所得額が増えるほど適用される税率も高くなる仕組みです。金の売却によって生じた譲渡所得は総合課税の対象となるため、給与所得者や事業所得がある人は、本業の所得額と合算して所得税を求めることとなります。
2026年現在、所得税の税率は以下のようになっています。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
| 1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
| 1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
出典元:国税庁「No.2260 所得税の税率」
課税所得額が高くなると、適用される税率もアップする可能性があるため、金の売却によって生じる税負担を軽減したい場合には、5年以上の保有が節税対策として有効です。
50万円の特別控除を上手く利用する
譲渡所得の課税対象額を計算する際には、50万円の特別控除を差し引くことができます。この特別控除は、1年間の譲渡所得の合計額に対して適用される控除であり、特別控除を差し引くと、課税所得額を低く抑えられます。金の売却益が年間50万円以下であり、ほかの譲渡所得が発生していなければ、その年の譲渡所得は課税対象外となります。この制度を利用し、複数年に分けて少しずつ金の売却をすれば、課税対象額を低く抑えられ、節税効果を得られます。
例えば、売却益が100万円の金を保有している場合、1年にまとめて売却した場合は、短期譲渡所得の場合は50万円、長期譲渡所得の場合は25万円が課税対象となります。そのため、確定申告も、納税の負担も発生します。しかし、2年に分けて売却をすれば、1年あたりの譲渡所得額は50万円となるため、特別控除の50万円を差し引くと課税対象額は0円となり、税負担が発生しません。また、確定申告も不要になるのです。
ただし、金の相場は変動しています。現在はしばらく上昇傾向が続くと予想されていますが、売却時には税負担だけでなく、相場も考慮しながら売却のタイミングを見極めることを忘れないようにしましょう。
購入時に発行された購入証明書を保管しておく
金を購入した際には、お店から「購入証明書」や「明細書」が発行されます。これは、購入日や金の品位、重量、購入金額などが記載された書類であり、原則として再発行はされない書類です。
金の売却自体には購入証明書がなくても大きな影響が生じることはありません。しかし、確定申告時には購入証明書が重要な役割を果たします。購入証明書がなければ、購入時の金額を証明できるものがないため、正確な売却益を算出できません。購入時の金額を高く申告すれば、売却益を不正に圧縮でき、納税額も低く抑えることができてしまうのです。そのため、金を購入した際に発行される購入証明書がない場合は、取得費は売却額の5%として算出するルールが定められています。
取得費を売却額の5%として計算しなければならない場合、課税対象額が非常に大きくなり、課される税金の額も非常に高額になってしまいます。したがって、金を購入した際には必ず購入証明書を大切に保管しておくことも節税対策として重要なポイントです。
相続した金を売却するなら相続開始日から3年10ヶ月以内に売却する
自分で購入した金ではなく、相続した金を売却する場合は、相続開始日から3年10ヶ月以内に売却することも節税のポイントとなります。これは、相続税には「取得費加算の特例」という特例制度があるためです。取得費加算の特例とは、相続が開始された日から3年10ヶ月以内に相続した財産を売却した場合、相続税額の一部を取得費に加算することで、譲渡所得を圧縮し、税負担を軽減できる制度です。
取得費加算の特例を適用できる条件は、以下の3つを満たしている場合です。
・相続、遺贈により財産を取得した人である
・財産を取得した人が相続税を納めている
・財産を相続開始日から3年10ヶ月以内に譲渡している
相続税を納税しており、相続した金の売却を検討している場合は、相続から3年10ヶ月以内の売却を検討すると節税効果を期待できます。
参照元:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
まとめ
金の売却益は譲渡所得に該当し、売却益が50万円を超える場合には、確定申告をして、納税をしなければなりません。ただし、会社で年末調整を受けている年収2,000万円以下の会社員の場合は、給与所得以外の所得が20万円以内であれば確定申告が不要となるルールがあります。売却益が50万円を超えていても、特別控除の50万円を差し引いて算出した譲渡所得と、その他の副収入の合計額が20万円以下であれば確定申告は不要です。
また、金の売却によって得た譲渡所得は、金の所有期間によって課税対象額が変わってくる点に注意が必要です。5年以上所有してから売却をする、複数年に分けて売却するといった対策を実施すると節税効果を得られます。
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