税務調査というと、法人に対して実施される調査をイメージする人が多いかもしれません。しかし、個人にも税務調査は実施されています。税務調査は、申告内容の確認と是正を目的とした調査であり、納税の義務があれば、法人、個人を問わず調査の対象に選ばれる可能性があります。

しかし、個人に対する税務調査の場合、ランダムに調査対象となる人が選ばれているわけではありません。実は、税務調査の対象に選ばれやすい個人にはいくつかの特徴が見られます。

今回は、個人に対する税務調査に焦点を絞り、対象となりやすい人の特徴や税務調査の流れなどについて解説します。

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個人に対する税務調査とは

税務調査とは、申告が正しく行われているかをチェックする税務署や国税局による調査です。税務調査は大きく分けると「任意調査」と「強制調査」の2つに分けられます。

任意調査

一般的に税務調査と呼ばれる調査が任意調査です。任意調査は税務署の調査官によって実施される調査であり、事前に税務調査を行う旨の連絡が入り、納税者の同意を得たうえで実施されます。

ただし、任意調査といっても調査自体を拒否することはできません。納税者は、調査官の質問や検査に応じる義務があるのです。しかしながら、任意調査の場合は、調査日程については納税者の都合を伝えたうえで調整してもらうことができます。

強制調査

強制調査は、国税局査察部によって実施される調査です。任意調査とは違い、事前の連絡が行われることはなく、裁判所の令状をもとに、抜き打ちで調査が開始されます。強制調査は、刑事告発を目的とした調査であり、多額の所得隠しなど、脱税が疑われる場合に実施される調査です。

個人であっても、多額の所得を隠蔽している場合などは強制調査が実施される可能性はあります。しかしながら、個人を対象に実施する税務調査の多くは任意調査であり、ここでは、任意調査=税務調査として解説します。

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個人に対する税務調査の実施状況

個人に対する税務調査はどのくらい実施されているのでしょうか。国税庁が2025年12月に公表した「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」から、個人に対する税務調査の実施状況を確認してみましょう。

所得税の税務調査実施状況

令和6事務年度の所得税の税務調査の実施数は、8,024件です。前事務年度の税務調査の実施数も8,045件であったことから、個人に対する所得税の税務調査は毎年約8,000件程度、実施されていると考えることができるでしょう。

また、税務調査で申告漏れなどの非違が発覚した件数は6,797件となっており、非違割合は84.7%にも上っています。申告漏れ所得金額は867億2,000万円、追徴課税額は合計150億8,500万円であったと報告されています。

参照元:国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況

法人と個人の税務調査の実施状況の違いは?

国税庁が公表している「令和6事務年度 法人税等の調査実績の概要」を見ると、法人に対する法人税と消費税の税務調査の実施件数は、令和6事務年度は54,000件となっています。個人に対して実施された所得税の税務調査の実施件数に比べると、6.7倍の開きがあります。また、追徴課税額の合計も3,407億円と、個人を対象とした税務調査と比べて非常に大きな額となっています。

調査件数だけを見ると、法人に比べれば個人を対象とした税務調査の実施件数は少ないですが、それでも個人を対象とした税務調査も毎年8,000件のペースで行われているという点を理解しておいた方がよいでしょう。

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税務調査の対象となりやすい個人の特徴

個人に対して実施された所得税の税務調査結果を見ると、非違割合が非常に高いことが分かります。8割以上の人が税務調査によって申告漏れなどを指摘されていることから、税務署では無作為に税務調査の対象者を選ぶのではなく、何らかの基準に基づいて対象者を選んでいると考えることができるでしょう。

税務調査の対象に選ばれやすい個人の特徴は以下のとおりです。

  • 確定申告をしていない人
  • 売上1,000万円以下を維持している個人事業主
  • 現金取引を中心とした業種を営んでいる人
  • 申告漏れが多い業種を営んでいる人
  • 経費計上額が多い個人事業主
  • 多額の資産を保有する富裕層

確定申告をしていない人

税務署では、確定申告をしていない無申告者に対し「無申告は、申告納税制度の下で自発的に適正な納税をしている納税者に強い不公平感をもたらすこととなる」とし、厳しい調査を実施すると宣言しています。

令和6事務年度の無申告者に対する所得税の税務調査件数は995件です。税務署では、さまざまな資料や情報などを収集し、無申告者の把握に積極的に取り組んでいるといいます。

特に、昨今ではフリマサイトでの転売やアフィリエイト、インターネット動画の配信、暗号資産取引などによって収入を得ている個人に対する税務調査も増加中です。確定申告の義務がありながら、申告の義務を怠っている個人は、税務署の目に留まりやすく、税務調査の対象となる可能性が高いといえます。

売上1,000万円以下を維持している個人事業主

売上1,000万円以下を維持している個人事業主も税務調査の対象として選ばれる確率が高くなります。これには、消費税の納税義務が関係しています。

2024年10月にスタートしたインボイス制度によって、課税売上高が1,000万円以下の個人事業主でもインボイス発行事業者として登録し、消費税の課税事業者として活動しているケースもあります。しかし、個人事業主の場合、基準期間である前々年の課税売上高が1,000万円を超えなければ、消費税の納税義務は生じません。そのため、毎年、売上の額がギリギリ1,000万円に到達しない状態を維持していると、消費税の納税義務を回避するために、何らかの操作を行い、売上額を調整しているのではと疑われる可能性があるのです。

したがって、毎年のように売上高が1,000万円をわずかに下回る900万円台となっているような個人事業主は、税務調査の対象に選ばれやすいといえるでしょう。

現金取引を中心とした業種を営んでいる人

現金での取引を中心とした飲食業や小売業、サービス業などを営んでいる個人事業主も税務調査の対象に選ばれやすい傾向があります。

法人を対象としたBtoBビジネスの場合、取引が現金で行われるケースはそれほど多くありません。振替取引の場合、銀行口座に取引の記録が残るため、売上の隠蔽などは難しいものの、現金取引では客観的な取引記録が残りにくいため、簡単に売上の除外を実行できてしまいます。

例えば、キャバクラやスナックなどでも、お客様から現金で支払いを受けるお店もあるでしょう。POSレジなどを導入していなければ、伝票を破棄するだけで、売上の一部をなかったことにしてしまえるのです。そのため、現金取引を中心としたビジネスを営んでいる人も税務調査の対象になりやすいといえるでしょう。

申告漏れが多い業種を営んでいる人

申告漏れが多い業種を営んでいる人も税務調査の対象に選ばれやすくなります。国税庁では、所得税及び消費税調査等の状況によって、事業所得のある個人の1件あたりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種を公表しています。

令和6事務年度の場合、最も多かったのは「キャバクラ」です。また、4位に「バー」、6位に「酒場」がランクインしています。毎年のようにナイトワークに関する業種がランクインしており、税務署には、水商売の仕事に就いている人は申告漏れが多いと認識されています。そのため、キャバクラやホスト、スナック、ガールズバーなど、夜の仕事に就いている人も税務調査の対象に選ばれやすいと考えておいた方がよいでしょう。

経費計上額が多い個人事業主

経費の計上額が多い個人事業主も税務調査の対象に選ばれる確率が高くなります。例えば、キャバクラのキャストとして働いている場合、衣装代や衣装のクリーニング代、仕事用のスマートフォンの料金、通勤のための交通費、お客様へのプレゼント代などは、経費として計上が可能です。

しかし、プライベートでも使用している衣類や靴、バッグなどの購入代は経費には計上できません。また、営業のために必要だったお客様との食事代は経費にできるものの、プライベートな食事会の費用についても、経費計上は認められません。

お店から受け取った報酬から経費を差し引けば、課税対象となる所得額が低くなり、納税額を低く抑えられます。そのため、キャバ嬢など、個人事業主として働いている夜職の人の中には、経費を過剰に計上しているケースも見られるのです。収入に対して経費の額が明らかに多すぎる場合などは、経費の過剰計上による不正が疑われるため、税務調査が実施されやすくなります。

多額の資産を保有する富裕層

多額の資産を保有している点も税務調査の対象に選ばれやすい個人の特徴の一つです。そもそも、夜職は申告漏れが多い業種として知られているため、税務調査の対象に選ばれる確率は他の仕事をしている人よりも高くなります。さらに、高額な報酬を得ている人は、より税務調査が実施される可能性が高まります。

収入が少ない人に税務調査を実施しても、追徴税額はそれほど大きな額にはなりません。しかし、富裕層に対する税務調査では、追徴税額も多額に上るケースが少なくないのです。実際、令和6事務年度の所得税の税務調査(特別調査・一般調査)では、1件あたりの追徴税額が232万円であったのに対し、富裕層の調査の追徴税額は約3.3倍となる775万円となっています。したがって、夜職の人の中でも、多額の報酬を得ている人の方が、税務調査の対象に選ばれる可能性は高くなるといえます。

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個人に対する税務調査の流れ

個人に対して税務調査が実施される際の一般的な流れは次のとおりです。

  1. 事前通知
  2. 事前準備
  3. 実地調査
  4. 結果の連絡
  5. 修正申告と納税

1.事前通知

任意調査では、原則として調査を実施する前に、納税者に対し、税務調査に入る旨を知らせる事前通知を行わなければならないルールがあります。これを事前通知といいます。

事前通知では、調査対象となる税目や調査対象期間、準備が必要な書類などが伝えられます。日程については、提示された日程の都合が悪い場合は、事情を説明したうえで日程変更を申し出ることが可能です。

2.事前準備

税務調査の日程が決まったら、調査に必要な書類を準備します。調査は過去3年分を対象とするケースが一般的ですが、ミスが多く見られる場合、確定申告をしていなかった場合などは過去5年に遡って調査が実施されます。したがって、少なくとも5年分の確定申告書や帳簿、領収書などの証憑書類を準備しておくとよいでしょう。

3.実地調査

個人に対して実施される税務調査は、1日から2日程度で終了するケースが一般的です。調査官からは、現在の収入の状況などについてヒアリングされ、その後、書類のチェックが行われます。調査中は調査官から質問がなされますが、質問には誠実に回答をしなければなりません。

4.結果の連絡

調査終了後、1ヶ月前後で税務署から調査結果の報告があります。調査の結果、申告内容に問題がなければそのまま調査は終了です。また、指摘事項がある場合には指摘事項が示されます。

5.修正申告と納税

税務署からの指摘を受け入れる場合は、指摘箇所を修正し、不足分の税金と附帯税を納付します。附帯税とは、申告が適切に行われなかった場合に課されるペナルティです。

確定申告の期間内に申告をしなかった場合は無申告加算税、申告額が不足していた場合には過少申告加算税、意図的に所得を隠すような行為が見られた場合には重加算税が課されます。さらに、税金の納付が遅れたことに対するペナルティとして、延滞税も納付しなければなりません。

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まとめ

法人に比べると件数は少ないものの、毎年8,000件程度は個人に対する税務調査が実施されています。夜職は正しく申告をしていない人が多い業種であり、特に多額の報酬を得ている人などは、税務調査の対象に選ばれる可能性が高くなります。

税務調査の対象に選ばれた場合は、早急に税理士に相談することをおすすめします。なぜなら、税理士には、税務調査に立ち会い、調査官とのやり取りを代行できる権利があるからです。個人を対象とした税務調査の非違割合の高さから、税務署では正しく申告をしていない可能性が高いと判断していると考えられます。

税務調査時に何らかの指摘を受けても、正当な主張ができれば、追徴課税のリスクを最小限に抑えることが可能です。税務署から税務調査の事前通知を受けた場合には、夜職の税務調査サポート実績を豊富に持つ税理士法人松本までお気軽にご相談ください。


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