「ゼロ申告」や「0円申告」という言葉を聞いたことがありますか?原則として、仕事をしておらず、前年の収入が0円の人は所得税が課税されないため、確定申告をする必要はありません。しかし、収入が0円であっても確定申告をすることでメリットが生じる場合があります。
では、仕事に就いていない人や収入が0の人でも確定申告をしておいた方がよいのはどのようなケースなのでしょうか。
今回は、ゼロ申告とは何を指すのか、また、収入がなくても確定申告が必要なケースなどについて分かりやすく解説します。
目次
ゼロ申告とは
ゼロ申告とは、所得税や住民税などの納税義務がない人が申告を行うことです。日本では、納税者が自ら課税所得額などを算出して納付税額を求め、納税をする申告納税制度が採用されています。この仕組みの中で納税額は0になるけれど、確定申告書を提出するという行為や住民税の申告を行う行為をゼロ申告と呼んでいますが、ゼロ申告という正式な制度があるわけではありません。
ゼロ申告をする可能性がある人とは
ゼロ申告の対象となる人は大きく分けると次の3つに分けられます。
・仕事をしておらず、収入がない
・所得額が基礎控除額のため納税額が0円
・個人事業主で赤字の繰り越しをしたい
そもそも仕事をしていないために収入がない人の場合、課税所得が0円であるため、納付すべき所得税の額も0円となります。また、仕事や投資などによって所得を得た人でも、所得額が基礎控除額以下の場合は、課税所得額が0円になります。
そのほか、個人事業主で青色申告をしている人の場合、事業所得が赤字になった場合、最大で3年間に渡って赤字を繰り越すことができます。黒字化した際に、赤字分を差し引くことで、黒字の年分の所得税額を抑えることができるのです。この赤字の繰り越しを受けるためには、所得税の納付額が0であっても確定申告をしなければなりません。
個人事業主としてスナックなどを経営している人の場合、経費がかさみ、赤字になることもあるでしょう。この場合に、赤字の繰り越しを受けるためには納税額が0円であってもゼロ申告をしなければならないのです。
ゼロ申告をする目的
ゼロ申告の目的の1つは、前述したように、青色申告の個人事業主が赤字の繰り越しを行うためです。そのほか、ゼロ申告をする理由としては次のようなケースが考えられます。
- 国民健康保険料の負担を軽減する
- 住民税の負担を軽減する
- 所得証明書の発行を求めるため
国民健康保険料や住民税は、確定申告書に記載された課税所得額をもとに計算されます。所得額が0円だからという理由で確定申告書を提出しない場合、自治体でも正確な保険料や住民税額の計算ができなくなってしまいます。そのため、本来よりも高い保険料や納税額の納付を求められる恐れがあるのです。ゼロ申告をしておくと、課税所得額が0円であることの証明となり、国民健康保険料の軽減や減免、住民税の非課税の判定などに影響を与え、負担を軽減できる可能性があります。
また、ゼロ申告をすることで、住民税が非課税であることを証明できる非課税証明書の発行を受けられるようになります。医療費や保険料の算定に非課税証明書が必要になるほか、公営住宅への入居申請時にも非課税証明書の提出が求められるケースもあります。そのほか、住民税の非課税世帯を対象とした給付金を申請する際にも証明書の提示が必要になる場合があるようです。
無職でも確定申告が必要な人
前年の収入が0円の場合でも、ゼロ申告を行うことによってさまざまなメリットを得られる可能性があることをご紹介しました。では、無職の人で、確定申告が必要になるのはどのような人なのでしょうか。
本章では、無職でも確定申告が必要な人についてご説明します。
年の途中まで働いていて、収入があった人
現在は退職し、収入がない人でも、1月1日から12月31日までの間に収入を得ていたケースもあるでしょう。お店の社員として働いていたものの、年の途中で退職し、年末調整を受けていない人は、たとえ、現在無収入であっても確定申告をしなければなりません。
所得税は1年間の所得額に応じて課される税金です。給与からは所得税が源泉徴収されていますが、これは概算の計算となっているため、1年間の総所得額が確定しなければ、正しい所得税の額を確定することができません。また、所得額を確定するためには扶養控除や配偶者控除、生命保険控除、地震保険料控除など、適用できる所得控除についても申告する必要があります。
年の途中で退職していた人の場合は、確定申告をすることで、納め過ぎていた税金が還付されるケースも少なくありません。確定申告には、退職後にお店から発行された源泉徴収票が必要です。確定申告のタイミングまでなくさないよう、保管をしておくようにしましょう。
なお、年の途中で退職をしても、年内に再就職し、新たな勤務先に前職の源泉徴収票を提出して年末調整を受けた場合は、確定申告は不要です。
無職でも年間400万円を超える年金を受給している人
年金も所得税の課税対象となるため、仕事をリタイアし、年金を受給している人も原則として確定申告をしなければなりません。また、iDeCoを年金として受給する場合は、iDeCoの収入も所得税の課税対象に含まれる点に注意が必要です。
しかし、年間の年金受給額が400万円以下で、かつ、年金以外の所得が20万円以下であれば、確定申告は不要です。年金受給額が400万円以下であっても、年金以外の所得額が20万円を超えていれば確定申告が必要となります。
無職だけれど給与以外に収入を得ている人
会社員としては働いていないものの不動産を保有しており、賃貸収入を得ている人、株式の売却益や配当金がある人などは、確定申告が必要です。例えば、アパートを1棟保有しており、年間で200万円の不動産所得を得ている人などは、無職であっても確定申告をし、納税をしなければなりません。仕事をせずに源泉徴収なしの特定口座や一般口座で株式投資を行っており、年間300万円の利益を得た場合なども、無職ですが収入が発生しているため確定申告が必要です。
ただし、それらの収入が基礎控除の額を超えていなければ確定申告をする必要はありません。基礎控除の額は、納税者の合計所得金額によって変わります。基礎控除の額は、以下のとおりです。
|
納税者本人の合計所得金額 |
控除額 |
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|
令和6年分 |
令和7年分 令和8年分 |
令和9年分 以後 |
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132万円以下 |
48万円 |
95万円 | 95万円 |
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132万円超 336万円以下 |
88万円 |
58万円 |
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|
336万円超 489万円以下 |
68万円 | ||
|
489万円超 655万円以下 |
63万円 |
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|
655万円超2,350万円以下 |
58万円 |
||
| 2,350万円超2,400万円以下 |
48万円 |
48万円 | |
|
2,400万円超2,450万円以下 |
32万円 | 32万円 | 32万円 |
|
2,450万円超2,500万円以下 |
16万円 |
16万円 |
16万円 |
| 2,500万円超 | 0円 | 0円 |
0円 |
参照元:「国税庁No.1199 基礎控除」
無職でも確定申告をした方がよい人
今現在は無職でも、年の途中まで働いていた人や年金を受給している人、給与所得ではない収入がある人は確定申告が必要です。また、無職の人の中には確定申告の義務はないものの、確定申告をした方がメリットを得られる人もいます。
ここでは、無職でも確定申告をした方がよい人の例をご紹介します。
年間の医療費の額が10万円を超えている人
1月1日から12月31日までの医療費が10万円を超えた場合、確定申告をすると医療費控除を受けられます。医療費控除とは、確定申告によって税金の一部を還付する制度です。
医療費控除の対象となるのは、納税者自身が支払った医療費だけではありません。生計を共にする配偶者や子どもの医療費も対象です。
また、医療費控除の対象は、病院やクリニックに支払った医療費だけではありません。ドラッグストアでのOTC購入費用、入院中の食事代、通院のためにかかったバスや電車の費用、介護が必要な人のおむつ代なども対象になります。
年間10万円以上の医療費を支払った場合、確定申告によって、支払った医療費から保険金などで補填された金額と10万円を差し引いた額を基に所得控除を受けられます。ただし、総所得金額が200万円未満の場合は、還元される金額は総所得金額の5%です。
無職であっても、賃貸収入や株式投資の利益、年金収入などがあり、所得税を納付している人は、医療費の額が10万円を超えた時には、義務ではないものの、医療費控除のために確定申告をした方がよいでしょう。
ふるさと納税をしていた人
ふるさと納税は、応援したい自治体に寄附をすることで、自己負担額2,000円を除いた寄附額が所得税や住民税から控除される制度です。また、返礼品として寄付先の自治体の特産品を受け取ることもできるため、多くの人が利用しています。
ふるさと納税をしている場合、ワンストップ特例制度を使用していなければ、確定申告をしないと寄付金控除を受けられません。ワンストップ特例制度は、確定申告が不要な給与所得者が利用できる制度です。キャバクラやホストクラブなどのキャストとして働いている人の多くはお店の社員ではないため、ワンストップ特例制度の利用が難しく、ふるさと納税をしていたのであれば確定申告が必要となります。
ゼロ申告のやり方
ゼロ申告には、2つの申告があります。1つは、税務署に確定申告書を提出し、課税所得額が0円であることを申告するゼロ申告です。そして2つ目が、自治体に対して収入が0円であることを申告し、国民健康保険料や住民税の軽減措置などを求めるゼロ申告です。
税務署へのゼロ申告の方法
税務署にゼロ申告をする場合、確定申告書の作成が必要です。税務署へのゼロ申告の手順を説明します。
1.確定申告の期間
確定申告は、いつでも自由に行えるわけではありません。確定申告期間は明確に定められています。所得税の確定申告期間は原則として2月16日から3月15日までです。ただし、開始日や終了日が土曜日や日曜日にあたる場合は、翌月曜日からまたは翌月曜日までに変更されます。
2.必要書類
確定申告には以下のような書類の準備が必要です。
・確定申告書
・源泉徴収票(年内に退職をした人のみ)
・マイナンバーカード
・各種控除証明書(生命保険料や地震保険料の払い込み証明書、医療費の領収書など)
・銀行口座が分かる通帳やカード(還付を受ける場合のみ)
3.確定申告書を作成する
確定申告書の作成方法には、紙に手書きで作成する方法とパソコンやスマートフォンから作成する方法があります。
紙の確定申告書を作成する場合には、税務署の窓口で配布されている申告書を受け取るか、国税庁のWebサイトから対象年分の申告書をダウンロードするところから開始します。必要事項を記入し、所得額や所得税額を計算して、所得税の額が0円になることを確認しましょう。
また、パソコンやスマートフォンから確定申告書を作成する場合は、国税庁が用意している確定申告書等作成コーナーを利用できます。確定申告書作成コーナーの場合、画面に表示される質問に回答していく形で、確定申告書を作成することが可能です。この場合も、所得税額が0円になることを確認しておきましょう。
4.確定申告書を提出する
紙の確定申告書の場合は、税務署に持参するか、郵送で提出をします。
パソコンやスマートフォンで作成した申告書は、e-Taxを使ってオンライン上で提出することが可能です。しかし、e-Taxで申告書を提出するには、マイナンバーカードとマイナンバーカードの読み取りができるスマートフォンやICカードリーダーの準備が必要となります。
自治体へのゼロ申告の方法
自治体にゼロ申告をする場合は、市町村役場に住民税の申告を行います。
1.住民税の申告期間
住民税の申告期間は原則として2月16日から3月15日までと、確定申告と同じ期間となります。申告先は1月1日時点で住民票を置いている自治体です。
2.申告書を作成する
住民税の申告書は、市区町村役場の窓口や市区町村のWebサイトからダウンロードが可能です。必要事項を記入し、所得金額を記載する欄に0円と記入します。
自治体によっては、地方税共同機構が運営しているeLTAXを使って申告書の作成と提出を行うことも可能です。
3.申告書を提出する
申告書が完成したら、自治体の窓口に持参するか、郵送で提出します。eLTAXを利用できる自治体の場合であれば、マイナンバーカードを利用し、eLTAXで提出することもできます。
まとめ
ゼロ申告とは、所得税や住民税の額を0円として申告する行為のことです。本来、課税所得額が0円であれば、所得税や住民税の納税義務が生じないため、申告の義務は発生しません。しかし、ゼロ申告を行うことで、住民税や国民健康保険料などの軽減を受けられたり、非課税証明書の発行を受けられたりといったメリットを得られます。また、青色申告をしている個人事業主の場合は、ゼロ申告をしなければ、赤字の繰り越しを受けることができません。
確定申告や住民税の申告は手間だと感じる場合もありますが、ゼロ申告を行うことで課税所得額が0円であることを証明できます。収入が0円の場合や課税所得額が0円となる場合もゼロ申告を行っておくと安心です。
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