ドラマや映画などで「時効」という言葉を耳にすることがあります。罪を犯しても一定の時間が過ぎれば、検察官が起訴できないために時効が成立すると、罪に問われることはありません。
税金を正しく納めていない状態も、一般的に脱税と呼ばれる犯罪に該当します。では、脱税も時効が成立すれば、罪に問われることはないのでしょうか?
夜のお仕事に就いている人の中には、確定申告を正しく行っていない人も少なくありません。脱税をしても時効が成立するのであれば、税務署から指摘を受けるまで逃げきりたいと考えるケースもあるでしょう。
今回は、脱税と時効の関係について解説します。
目次
脱税ってどういう状態?
脱税の時効についてご説明する前に、まずは脱税とはどのような状態を指すのか、脱税が示す意味から確認をしていきましょう。
脱税とは
脱税とは、納付しなければならない税金があるにもかかわらず、納税の義務を怠って税金を納付していない状態や納税額を不当に低く装い、意図的に納税を逃れる行為です。納税は国民の義務であり、国民の義務に反する行為である脱税は、犯罪行為となります。したがって、脱税行為が発覚した場合は、裁判に問われ、刑事罰が科されます。
脱税と無申告、申告漏れの違い
脱税は、意図的に税金の負担を低く抑えようとする行為のことです。ナイトワークで働いている人の場合は、お店の社員ではなく、個人事業主として働いているケースが多いため、本来、確定申告をして税金を納めなければなりません。
しかし、確定申告をしなければならないことを理解していなかったために、確定申告をせず、税金を納めていない状態になるケースもあるでしょう。この場合も税金を納めていない状態となりますが、わざと確定申告をしていなかったわけではないため、この状態は脱税ではなく、無申告に該当します。
また、確定申告はしたけれど、計算方法が良く分からなかったために、経費には計上できない支出まで経費にしてしまい、結果として納めた税金が不足してしまったという場合もあるでしょう。この場合は、納付税額は不足しているものの、わざと税金の納付を逃れたわけではなく、ミスによって納税額が少なくなってしまった状態であるため、脱税ではなく、申告漏れと呼ばれる状態に該当します。
つまり、脱税とは、申告の必要性を理解していながら、意図的に所得を隠すなどして本来よりも低い額の税金を納付している場合やそもそも納税をしていない場合などを指すのです。
申告漏れや無申告も、税金を正しく納付していない状態に当たるため、脱税同様、行政罰が課されます。しかし、脱税の場合と、申告漏れや無申告の場合、課されるペナルティの重さには大きな違いがある点を理解しておかなければなりません。
脱税の時効は何年?
正しく納税をしていないという自覚がある人の場合、脱税の時効は何年なのか、あと何年バレなければ時効が成立するのかと、脱税の時効期間が気になるでしょう。では、脱税の時効は何年なのでしょうか。
脱税の時効という考え方
日本では、国から所得税の納付額が通知され、通知された額にしたがって税金を納付するのではなく、納税者が自ら納税額を計算して、税金を納付する申告納税制度が採用されています。したがって、納税者の中には、自分が支払うべき税金について正しく申告をしない人がいてもおかしくはありません。また、計算ミスなどによって納付額が不足するケースも考えられるでしょう。
そのため、税務署や国税局では正しい申告と納税を推進し、不正を是正するために、納税者に対して申告内容を確認する税務調査を実施しています。脱税は、この税務署や国税局によって実施される調査によって発覚するケースがほとんどです。したがって、一般的には脱税の時効は、税務調査の調査対象期間を指すことが多くなっています。
脱税の時効は7年
税務調査では、基本的には過去3年分の申告内容について調査がなされます。しかし、調査を進める中で、何度も同じミスが繰り返されているような場合や申告漏れの額が大きい場合などは、5年分についての調査が行われるケースがあります。また、申告をしていない無申告の人に対して実施される税務調査の期間も5年です。
また、意図的に多額の税金を納付していなかったケースや所得額を不正に低く装っていたケースなどは、過去7年分に遡って調査が実施されます。したがって、脱税の時効は7年と考えることができるでしょう。
7年間、税務調査が実施されず、不足分の税金やペナルティである附帯税の納税を求められなければ、脱税の時効が成立することとなります。
脱税の時効が成立する可能性はある?
脱税の時効が7年であれば、このまま7年が過ぎるのを待てばよいと思う人もいるかもしれません。では、実際、脱税の時効は成立するものなのでしょうか?
脱税の時効が成立する確率はほぼ0に近い
税務署では、さまざまなルートから納税についての情報を収集しています。
ナイトワークの場合は、お店が税務署に対し提出する支払調書と呼ばれる書類で脱税が発覚するケースが見られます。支払調書とは、業務委託契約を結んでいる個人に報酬などを支払った場合に、お店側が税務署に提出しなければならない書類です。
支払調書には、誰に、どのような費用を、年間いくら支払ったのかが記載されています。また、支払調書には報酬を受け取る側のマイナンバーの記載が義務付けられているため、報酬を受け取った人の申告内容と簡単に照合することが可能です。お店側が報告している支払報酬額と、キャスト側が申告している収入の額に大きな差が生じている場合、脱税が疑われます。
そのほか、事情を知る人から脱税の疑いがあるという密告がなされるケース、SNSにアップした派手な生活の様子がきっかけとなって税務調査に発展するケースなどもあります。また、税務署では調査のために必要があれば、金融機関に依頼し、口座の入出金記録を調べることも可能です。
したがって、7年間、脱税がバレずに税務調査が実施されないケースはほぼ0に近く、脱税の時効が成立するケースはほとんどないといえます。
時効の更新も脱税が成立を難しくする理由の一つ
時効の更新とは、一定の事由が発生することでそれまでの時効期間が一旦リセットされ、また0からスタートすることです。具体的には、督促状が届いたり、税金の一部を納付したりすると、時効は更新されます。
時効が更新されると、7年に向けたカウントダウンが振り出しに戻ることとなりますが、税務署では、督促状を送付したまま放置することはありません。督促状を受け取っても納税をしない場合、最終的には預金や不動産などの差し押さえが行われる恐れがあります。
したがって、この点からも脱税の時効が成立する可能性は極めて低いといえます。
脱税が発覚した際のリスクとは
脱税の時効が成立する可能性は極めて低く、正しく納税をしていない場合、税務調査で不正が指摘され、重いペナルティが課されることとなります。
脱税が発覚した場合に課されるペナルティは次のとおりです。
重加算税が課される
重加算税は、収入の隠蔽や経費の架空計上などをし、不正に所得額を低く装った場合に課される付帯税です。確定申告をしていない無申告状態であった場合に課される税率は40%、期限内に確定申告はしていたものの納付額が不足していた場合に課される税率は35%となります。
確定申告の必要性を理解していないために、確定申告をしていなかった場合に課される無申告加算税やミスによって納付額が少なくなってしまった過少申告加算税に比べると、非常に重い税率となっています。意図的に税を逃れようとする脱税行為が、いかに悪質なものとして扱われるのかがお分かりになるでしょう。
延滞税が課される
延滞税とは、税金の納付が遅れたことに対して課されるペナルティです。個人事業主として所得を得ている場合、所得税の確定申告の期限は原則として翌年の3月15日までとなっています。この期限より納付が遅れた場合、翌日から納付が完了する日まで延滞税が課されることとなります。
延滞税は、納税が遅れたことに対する利子のような意味合いがあり、税率は毎年見直される可能性があります。また、法定納期限の翌日から2ヶ月までとそれ以降で税率が変わる点も延滞税の特徴です。
延滞税の税率は、法定納期限の翌日から2ヶ月までを①、それ以降を②とした場合、2026年現在では次のように定められています。
・2021年1月1日~2021年12月31日 ①2.5% ②8.8%
・2022年1月1日~2025年12月31日 ①2.4% ②8.7%
・2026年1月1日~2026年12月31日 ①2.8% ②9.1%
また、延滞税は納付が完了する日まで、1日単位で計算される点にも注意しなければなりません。脱税の時効が成立するまで待ち続け、7年近く納税を怠っていた場合、7年分の延滞税の納付も求められることになるのです。
参照元:国税庁「延滞税の割合」
刑事罰が科される
脱税の罪に問われると、裁判にかけられることとなります。裁判で有罪が確定した場合、重加算税や延滞税などの行政罰に加え、刑事罰も科されます。
所得税法違反の罪の刑罰は、10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科です。ただし、脱税額が1,000万円を超える場合は、罰金の額も1,000万円を超えるケースがある点も理解しておく必要があります。
脱税は、「税金を支払っていないだけ」、「周りのみんなも納税していないから自分もきっと大丈夫」、と軽く考えている人もいるかもしれません。しかし、脱税は犯罪です。裁判で罪が確定すれば、刑事罰が科され、前科が付くことになることを覚えておかなければなりません。
脱税の時効は成立しないからこそ早めの対応を
脱税の時効が成立することは、ほぼありません。時効を待っていれば、待っているだけ延滞税の額も膨れ上がり、多額の税金の納付を求められることになります。脱税によるリスクを少しでも軽減したいのであれば、早めに期限後申告や修正申告を行うことが大切です。
自主的な修正申告で過少申告加算税が免除されるケースも
確定申告はしていたものの、きっとバレないと思って、所得額を実際よりも低く装っていた人もいるかもしれません。そのような場合は、税務調査の事前通知を受ける前に、自主的に修正申告をすれば過少申告加算税の納付が免除されます。
過少申告加算税とは、申告した納税額が少なかった場合に課されるペナルティです。過少申告加算税の原則税率は、不足分の税額が期限内申告税額と50万円のいずれかより小さい部分については10%、期限内申告税額と50万円のいずれかを超える部分については15%となっています。
税務調査の事前通知を受けてから自主的に修正申告をする場合、過少申告加算税の税率はそれぞれ5%と10%に軽減されますが、事前通知の前に修正申告をすれば過少申告加算税が免除されるのです。延滞税の納付は必要になるものの、過少申告加算税が免除されれば、納税の負担額を大きく軽減できるでしょう。
無申告加算税も自主的な期限後申告で大幅に軽減
期限までに確定申告をしていない場合に課されるペナルティが無申告加算税です。無申告加算税の原則税率は以下のように定められています。
・納付税額が50万円以下の部分 15%
・50万円超300万円以下の部分 20%
・300万円超の部分 30%
しかし、税務調査の事前通知を受けてから調査が実施される前までに自主的に期限後申告をした場合は、税率が次のように軽減されます。
・納付税額が50万円以下の部分 10%
・50万円超300万円以下の部分 15%
・300万円超の部分 25%
さらに、税務調査の事前通知を受ける前に、自主的に期限後申告をした場合、無申告加算税の税率は、納税額にかかわらず一律5%にまで軽減されます。
まとめ
脱税は待っていても時効が成立する確率はほぼ0に等しいといえます。たとえ確定申告をしなかった年の翌年に税務調査を受けなかったとしても、脱税の場合、過去7年に遡って調査が行われる可能性があるため、7年間は脱税の発覚におびえながら生きていかなければなりません。
脱税は犯罪です。成立するとは言い難い時効を待っていても、課されるペナルティが大きくなるだけであり、脱税犯として刑事罰も受けるリスクも高まるだけとなります。
これまで確定申告を正しくしてこなかった場合は、税務調査の事前通知を受ける前に、早めに期限後申告や修正申告を行うことをおすすめします。申告方法が分からない場合には、税理士法人松本までお気軽にご相談ください。
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