
2024年、女風(女性用風俗)の運営会社と創業者が、東京国税局から3億円の所得隠しをし、不正に税金を逃れたとして、重加算税を含む追徴課税が行われたというニュースが流れました。また、男性セラピストの中にも高額の収入を得ながら所得税を申告していなかった人が複数いたとし、セラピストにも追徴課税が行われた報道されています。
女風と呼ばれる女性用風俗で、セラピストの仕事に就く男性が急増しています。しかし、このニュースのように、女風で働いている男性セラピストの中には税金を納めていない人が多いといわれています。また、男性セラピストの中には副業として女風の仕事をしている人も少なくないため、税金を支払うことで会社にバレるのではと心配する人も多いようです。
今回は、女風で働く男性セラピストが税金を納付すべき理由と納付しない場合のリスク、会社にバレる可能性などについてご説明します。
女風(女性用風俗)とは
これまで風俗といえば、女性が男性にサービスを提供するお店がほとんどでしたが、最近では女風と呼ばれる女性用風俗も増加しています。男性セラピストの多くは、副業として女風の仕事をしているといわれています。
女風で得られる収入は事業所得や雑所得になる
風俗業では、セラピストと正社員やアルバイトなどの雇用契約を結ぶケースはほとんどありません。女風の場合も、セラピストは運営会社と雇用契約ではなく、業務委託契約を結ぶ形となっています。そのため、コンビニや飲食店のアルバイトなどとは異なり、女風で得られる収入は、給与ではなく、報酬として受け取ることとなります。報酬として受け取ったお金は事業所得や雑所得となり、一定以上のお金を受け取っている場合、確定申告が必要です。
女風を本業としているセラピストと税金
もし、女性用風俗での仕事を専業としている人がいた場合、女風で得た所得が年間48万円を超えた場合に確定申告が必要です。所得とは、売上から経費を差し引いた額のことであり、女風の仕事の場合、お客様と待ち合わせをする場所まで向かう交通費がかかります。この交通費は、仕事のためにかかった費用となるため、経費として扱うことができます。そのほか、何かセラピストの仕事のために必要となったものがあった場合、購入のために支払った費用は経費計上が可能です。
したがって、本業でセラピストの仕事をしている場合、受け取った報酬から必要経費の合計額を差し引いた金額が年間48万円を超える場合に確定申告をし、税金を納めなければなりません。
女風を副業としているセラピストと税金
会社員の本業を持つ人が副業として女風でセラピストの仕事をしている場合、セラピストの仕事を専業としている人と確定申告が必要となる所得の額に違いがあります。副業の場合、確定申告が必要となるのは、年間のセラピストの所得が20万円を超える場合です。給与所得とは別に、年間20万円の所得を得た場合、確定申告をし、女風で得た分の収入に課される税金を納めなければなりません。
女風の男性セラピストが税金を納めないとどうなる?
女風の仕事をしている男性セラピストが、年間48万円、または年間20万円以上の所得を得ているにもかかわらず、確定申告をせず、税金を納めなかった場合、次のようなリスクが生じます。
税務調査が入る
税務調査とは、正しく確定申告を行い、税金を納めているかをチェックする税務署による調査です。税務調査は、会社などの法人だけを対象に実施する調査ではありません。納税の義務がある個人も、税務調査の対象になります。
冒頭でご紹介したように、2024年10月には、女性用風俗の運営元の会社に税務調査が行われ、追徴課税がなされました。その際、確定申告をしていなかった男性セラピストについても、追徴課税がなされています。これは、女風の運営会社に税務調査が入ったことで、セラピストとして働いていたスタッフの情報が税務署に伝わり、セラピストについても税務調査が行われた結果と考えられるでしょう。
正しく税金を納めていない納税者は、税務調査の対象として選ばれやすい傾向にあります。
税務署ではあらゆる角度から情報を収集しています。そのため、女風で収入を得ているにもかかわらず、税金を納めていない場合、税務調査が実施される可能性が高くなるでしょう。
追徴課税がなされる
追徴課税とは、本来納めるべき税金より納税した税金が不足していた場合に、その差額の納税を求められることを指す言葉です。また、追徴課税がなされる場合には、正しく申告しなかったことのペナルティとして、加算税の納付も求められます。
女性用風俗の所得について、確定申告をしていなかった場合に課される加算税は無申告加算税です。無申告加算税が課されると、納付税額が50万円までの部分については15%、納付税額が50万円を超え300万円以下の部分については20%、300万円超の部分については30%分の額の税金をプラスして納税しなければなりません。
また、納税が遅れたことに対するペナルティとして延滞税の納税も求められます。延滞税は、
納付期限から納付を完了した日まで課される税金です。長年にわたり女風の所得を申告せず、税金を納めていなかった場合、延滞税の額は相当な額になる可能性があるでしょう。
重加算税を課される可能性もある
重加算税とは、多額の税金を不正に納めていなかった場合に課される加算税です。無申告加算税に代えて重加算税が課される場合、その税率は40%にも上ります。
重加算税は、仮装隠蔽など悪質な行為がみられた場合に課されるもので、先にご紹介した女性用風俗の運営会社と創業者に対する税務調査では、重加算税も加算されています。所得隠しの額は約3億円であるものの、法人に課された法人税と創業者に課された追徴税額は、約半分の1億5千万円になるとみられると報道されているのです。このことから重加算税が課される場合、追徴課税の額はかなり大きくなることが分かるのではないでしょうか。
また、無申告状態であった場合、税務調査の際には最低でも過去5年分をさかのぼり、詳しい調査を実施します。そのため、前年分の女風の収入だけでなく、過去5年分の女風の収入について納税が求められることになる点も追徴課税額が多額になる要因となります。
税金を払うと会社に女風の仕事がバレるって本当?
副業で女風の仕事をしているセラピストの場合、本業の会社に副業がバレるのではと心配するケースも少なくありません。中には、税金を払うことで本業に副業がバレるから、確定申告をしていないという人もいるようです。では、税金を支払うことで、女風の仕事が会社にバレることはあるのでしょうか。
税金と副業の関係
副業が税金を納めることでバレるといわれる理由は、副業分の住民税を特別徴収にしている場合です。会社員として働いている人の場合、毎月会社から支払われている給与からは、所得税や住民税、社会保険料などが天引きされています。
住民税は、前年分の所得に応じて納税額が決定されます。副業をしていない場合、本業の所得額に応じた住民税の額が会社に通知され、会社は給料から天引きする形で、従業員に代わって自治体に住民税を納めるルールとなっています。この徴収方法を特別徴収といいます。
副業で女風の仕事をしていた場合、確定申告の際に住民税を特別徴収で納税すると選択すると、本業の勤務先に副業の所得も含めた住民税の通知書が郵送されます。勤務先では、住民税の額が高くなっていることから、副業をしていることに気が付くというわけです。
しかしながら、副業を解禁している企業の場合、副業がバレたからといって特に問題になることはありません。また、副業はバレたとしても、副業が女性用風俗のセラピストであるということまで、税金からバレることはないのです。
会社に副業がバレるのを防ぐためにできること
女性用風俗でかなりの収入を得ている場合などは、住民税の額も高額になります。そのため、副業を禁止していない会社であっても、できれば本業の会社には副業をしていることを知られたくないという方もいらっしゃるでしょう。その場合には、確定申告をする際、住民税の納付方法を特別徴収ではなく「自分で納付」するという方法を選べばよいのです。
自分で納付を選択すると、副業分の所得に課される住民税については、本業の会社ではなく、自宅に納付書が送付されるようになります。会社に送付されるのは、給与所得の分に関する、住民税の通知のみです。したがって自分で納付を選択すれば、本業の会社に、副業をしていることや副業で稼いでいる金額も知られる心配はなくなります。
税金を納めないことで副業がバレるケースもある
税金を納めたことが理由で会社に副業がバレるケースはありません。しかし、税金を納めないことで女風の仕事をしていたことが会社にバレる可能性はあります。それは、女風の所得を申告せず、税務調査が入った場合、脱税の罪に問われる恐れもあるからです。
納税の必要があることを知っていたにも関わらず、税金を逃れようとする行為を脱税といいいます。女性用風俗の所得があることを隠蔽し、所得がないように見せかけていたことが発覚すれば、脱税の容疑で告発され、刑事事件として捜査を受ける可能性もあるのです。検察から取り調べを受けるようになれば、本業の仕事にも影響が生じるでしょう。取り調べを受けることで、脱税の話が会社にも伝わり、結果、女性用風俗の仕事をしていたことが会社にバレる可能性が出てくるのです。
女風の仕事の税金を納めていなかった場合にするべきこととは
女性用風俗でセラピストの仕事をしてきたけれど、お小遣い稼ぎという軽い認識だったため、税金を納める必要があることを把握していなかったという方もいらっしゃるかもしれません。しかし、知らなかった場合であっても、税金を納めないという行為は認められません。そのため、税務調査が入ると、追徴課税を受けることとなります。しかし、税務調査が実施される前に自主的に期限後申告を行えば、追徴課税の負担を軽減することが可能です。
事前通知の前に期限後申告をする
税務調査が実施される前には、税務署から税務調査を実施する旨の電話連絡が入るケースが一般的です。この連絡を事前通知といい、事前通知を受ける前に、納税者が自主的に期限後申告を行った場合、無申告加算税の税率を軽減する措置があります。
税務調査の事前通知の前に自主的に期限後申告をした場合の無申告加算税の税率は、一律5%にまで軽減されます。50万円を超える部分に関しても税率が高くなることはありません。
税務調査で無申告が発覚した場合の無申告加算税の税率は、50万円までの部分が15%、50万円超300万円以下の部分が20%、300万円超の部分が30%です。したがって、税務調査の事前通知前に期限後申告をすると、かなり税率が低くなることがお分かりになるでしょう。
女性用風俗の仕事をしてきた、また今も女性用風俗の仕事をしているけれど、確定申告をしてこなかったという方は税務調査の事前通知を受ける前に、できるだけ早く期限後申告をした方がよいでしょう。
事前通知を受けた後に期限後申告をした場合も軽減措置がある
税務調査の事前通知を受けた後であっても、自主的に期限後申告をした場合には、無申告加算税の税率は軽減されます。事前通知後の期限後申告の場合に課される無申告加算税の税率は50万円までの部分については10%、50万円を超え300万円まで部分については15%、300万円超の部分については25%です。事前通知を受ける前に比べると、課される税率は重くなるものの、自主的に期限後申告をしない場合よりは、負担の軽減につながります。
まとめ
女風でセラピストの仕事をしている場合、セラピストの仕事が本業であれば年間48万円以上、副業として仕事をしているのであれば年間20万円以上の所得を得ている場合、確定申告が必要です。確定申告をせず、税金を正しく納めてこなかった場合には、税務調査で詳細な調査が行われ、不足分の税金だけでなく、無申告加算税や延滞税の支払いも求められます。最悪な事態に陥った場合には、重加算税が課される場合もあるでしょう。
これまで女性用風俗の仕事をしてきたけれど確定申告をしてこなかったという方は、今からでも遅くありません。できるだけ早めに期限後申告をするようにしましょう。また、確定申告のやり方が分からない場合などは税理士に相談し、できるだけスピーディーに期限後申告を行うことをおすすめします。
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