
キャバ嬢は、夜のお仕事です。そのため、大学生や専門学校生が、学校が終わった後にキャバ嬢として働くケースも少なくありません。キャバ嬢はコンビニなどのアルバイトに比べると時給が高く、効率よくお金を稼げるため、お小遣いや生活費のためにキャバクラで働くケースが多いのです。
就職する前の学生の場合、親の扶養に入っているケースがほとんどです。しかし、扶養家族であるためには、収入が一定以下である必要があり、時給の高いキャバ嬢の仕事をしていると扶養から外れてしまう可能性があります。では、扶養内でキャバ嬢として働くことはできるのでしょうか。
今回は、キャバ嬢が扶養内で働く際のポイントや扶養から外れた場合のデメリットについてご説明します。
扶養の仕組みとは
扶養という言葉を耳にしたことがある人でも、実際に扶養がどういう仕組みであるかをしっかり理解している人は少ないかもしれません。まずは、扶養の仕組みから確認していきましょう。
扶養の定義
扶養とは、自分の収入で生計を立てられない家族や親族を経済的に支援することです。例えば、まだ学生の子どもがいる場合や妻が仕事を辞めて家事や育児を担っている場合などは、親が子を、夫が妻や子どもを扶養します。扶養する側を扶養者といい、扶養される妻や子は被扶養者となります。また、扶養者の収入によって養われている家族を扶養家族という場合もあります。
税法上の扶養と社会保険上の扶養
扶養という言葉を耳にする場合、明確に区分されるケースはあまりありませんが、扶養には税法上の扶養と社会保険上の扶養の2種類があります。
税法上の扶養家族となる場合、扶養者は扶養控除や配偶者控除、配偶者特別控除などの所得控除を受けられます。所得控除とは、所得から一定の金額を差し引く制度のことで、所得控除が適用されると、課税所得額が低くなるため、扶養者の税負担が軽減されます。
一方、社会保険上の扶養とは、一定の要件を満たす家族や親族も社会保険(厚生年金・健康保険)に加入できる仕組みです。社会保険の扶養の場合、被扶養者は保険料を負担する必要がありません。
キャバ嬢のアルバイトは扶養内でできる?
ご説明したように、扶養には所得税法上の扶養と社会保険上の扶養の2種類があります。いずれの場合も、扶養に入るためには一定の要件を満たさなければなりません。では、キャバ嬢としてアルバイトをする場合、扶養内で働くことができるのでしょうか。
キャバ嬢が所得税法上の被扶養者になるためには
キャバ嬢が所得税法上の扶養内で働くことは可能です。所得税法上の扶養に入る際には、扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除のいずれかの控除が適用されますが、適用を受けるためにはそれぞれ次の要件を満たす必要があります。
キャバ嬢が親の扶養に入る場合
「扶養控除」とは、扶養者に控除対象扶養親族がいる場合に受けられる所得税と住民税の軽減制度です。扶養控除の対象となるのは、16歳以上の子どもや親、親族となります。扶養控除の適用を受ける際に求められる要件は次のとおりです。
・16歳以上である
・配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)または、都道府県知事から養育を委託された児童や市町村長から養護を委託された老人である
・納税者と生計を一にしている
・年間の合計所得金額が48万円以下である(給与所得のみの場合は給与収入が103万円以下である)
・青色申告の事業専従者として給与の支払いを受けていない、または白色申告者の事業専従者ではない
したがって、親の扶養に入っている人がアルバイトとしてキャバ嬢の仕事をする場合は、年間の所得を103万円以下に抑える必要があります。
キャバ嬢が夫の扶養に入る場合
キャバ嬢の中には、結婚をしている人もいるでしょう。結婚をしているキャバ嬢の場合、夫の扶養控除の対象となることはありません。配偶者の場合、適用できる控除制度は配偶者控除または配偶者特別控除です。
「配偶者控除」が適用できるキャバ嬢は、次の要件を満たす場合です。
・内縁関係ではなく婚姻関係にある配偶者である
・納税者と生計を一にしている
・納税者の年間の合計所得金額が1,000万円以下である
・配偶者の年間の合計所得金額が48万円以下である(給与のみの所得の場合は給与収入が103万円以下である)
・青色申告の事業専従者として給与の支払いを受けていない、または白色申告者の事業専従者ではない
配偶者控除の適用を受けられない場合でも、キャバ嬢の所得金額が一定以下であれば、所得金額に応じた所得控除を受けられる場合があります。これを「配偶者特別控除」といいます。
配偶者特別控除を適用できるキャバ嬢が満たすべき条件は、次の要件を満たす場合です。
・内縁関係ではなく婚姻関係にある配偶者である
・納税者と生計を一にしている
・納税者の年間の合計所得金額が1,000万円以下である
・配偶者の年間の合計所得金額が48万円以上、133万円以下である(給与のみの所得の場合は給与収入が103万円超201万5,999円以下である)
・青色申告の事業専従者として給与の支払いを受けていない、または白色申告者の事業専従者ではない
・配偶者が配偶者特別控除を適用していない
・配偶者が別の親族の扶養家族として控除の対象となっていない
・配偶者が公的年金等の受給者の扶養親族として控除の対象となっていない
配偶者控除と配偶者特別控除の違い
配偶者控除と配偶者特別控除の場合、まず、配偶者の年間の合計所得金額に違いがあります。
配偶者控除の対象となるのは、年間の給与所得が103万円以内の場合です。また、配偶者特別控除の対象となるのは、103万円を超え、201万5,999円以下の所得額の場合です。
そのほか、控除される金額にも違いがあります。
配偶者控除の場合、控除額は次のようになります。
控除を受ける納税者本人の 合計所得金額 |
控除額 |
一般の控除対象配偶者 | |
900万円以下 | 38万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 |
配偶者特別控除では、控除額は次のようになります。
控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | ||||
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 |
950万円超 1,000万円以下 |
||
配 偶 者 の 合 計 所 得 金 額 |
48万円超95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 | |
100万円超105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
105万円超110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
110万円超115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
115万円超120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
120万円超125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
125万円超130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
130万円超133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
キャバ嬢が社会保険上の被扶養者になるには
扶養控除や配偶者控除、配偶者特別控除は、扶養者の税負担を軽減する仕組みです。一方、社会保険上の扶養に入る場合は、キャバ嬢自身の社会保険料の負担を軽減することができます。
社会保険の被扶養者になる場合も、収入の基準を満たさなければなりません。まず、キャバ嬢が親や夫と一緒に暮らしている場合は、キャバ嬢の年間収入が130万円未満であり、その額は被保険者である親や夫の1/2未満であることが条件です。また、親元を離れて一人暮らしなどをしている学生がキャバ嬢として働く場合は、年間収入が130万円未満であり、親からの援助による収入額より少ない場合に、被扶養者となることが可能です。
つまり、キャバ嬢が社会保険の被扶養者になるためには、年間の収入を130万円未満に抑える必要があるのです。
キャバ嬢が個人事業主として働く場合は扶養の条件が異なる
ここまで、アルバイトとしてキャバ嬢で働く場合の所得税法上の扶養と社会保険上の扶養についてご説明してきました。しかし、キャバ嬢の場合、お店と雇用契約を結ぶアルバイトではなく、個人事業主として働くケースも少なくありません。個人事業主として働く場合、キャバ嬢は扶養範囲で働くことができるのでしょうか。
個人事業主のキャバ嬢が所得税法上の扶養になる場合
アルバイトの場合、扶養控除の対象となるためには、年間の所得が103万円以下であることが条件でしたが、個人事業主の場合は、年間の所得が48万円以下であれば、扶養控除の対象となります。親の扶養に入っている場合は、キャバ嬢の所得を48万円以下に抑えることで扶養内で働けます。
一方、結婚をしているキャバ嬢が個人事業主として働く場合、年間所得額が48万円以下であれば、配偶者控除が適用されます。また、年間の所得が48万円を超える場合でも所得額が133万円を超えなければ、配偶者特別控除の適用が可能です。
親の扶養に入る場合も、夫の扶養に入る場合も、所得税の場合は、個人事業主として働く方が所得の上限額が厳しくなる点に注意しなければなりません。
社会保険の扶養の条件はアルバイトと変わらない
社会保険の被扶養者になる年収の条件は、個人事業主として働く場合もアルバイトとして働く場合も、変わりません。個人事業主としてキャバ嬢で働いている場合も年間収入が130万円以下であれば、社会保険の被扶養者として、社会保険料を払うことなく、社会保険に加入することができます。
キャバ嬢が扶養の要件を外れるとどうなる?
キャバ嬢は、ほかの仕事と比べても時給や報酬の高い職業です。そのため、ある程度の時間、キャバ嬢として働くと、すぐに所得税や社会保険の扶養の年収条件を超えてしまうケースは少なくありません。もし、扶養の要件を外れてしまった場合、どのようなことが起こるのでしょうか。
キャバ嬢が扶養の年収要件を超えて働く場合に起こりうるリスクについてご説明します。
親や配偶者にキャバ嬢の仕事について報告が必要になる
扶養控除や配偶者控除、配偶者特別控除を受ける場合、年末調整が行われる前に、親や夫が勤務先に対し、「給与所得者の配偶者控除等申告書」などを提出し、申告しなければなりません。この際、親や夫は勤務先に対し、子どもや妻の年収を伝える必要があります。万が一、扶養控除や配偶者控除、配偶者特別控除の適用要件以上の所得を得ていたにも関わらず、偽りの所得金額を申告した場合、税務調査が実施される可能性があります。その場合、親や夫も不正に所得控除を受けたこととなり、キャバ嬢として働く本人も不正に税金を逃れたとしてペナルティが科せられます。また、親や夫は勤務先からも不正を追及され、罰則を受ける可能性もあるでしょう。
親や夫の扶養控除や配偶者控除、配偶者特別控除を受けており、親や夫に黙ってキャバ嬢の仕事をする場合には、年間の所得が控除の要件を上回らないように注意しなければなりません。また、気が付いたら年間所得が要件を上回っていた場合などは、親や夫に事情を説明し、扶養控除や配偶者控除、配偶者特別控除が適用されないことを説明する必要があります。その際、なぜ高額な収入を得ているかの説明が求められ、キャバ嬢として働いていることを告白しなければならない事態になる可能性もあるでしょう。
自分で社会保険に加入しなければならない
1年間の年収が130万円を超える場合、社会保険の被扶養者になることはできません。万が一、脱退手続きを取らないまま被扶養者として加入を続けていた場合、被扶養者の資格を失ったタイミングまで遡り、被用者の資格が取り消されます。その間、保険証を使って病院などを受診した場合、健康保険組合が負担した分の医療費は、全額返還を求められることになるため、年間収入が130万円を超える場合は、直ちに社会保険の脱退手続きを取らなければなりません。
アルバイトとしてキャバクラに勤務している場合は、一定条件を満たすと、お店から社会保険に加入が可能です。また個人事業主の場合は、自身で国民年金と国民健康保険への加入手続きを行う必要があります。いずれの場合も、扶養の場合と異なり、社会保険料はキャバ嬢自身が負担しなければなりません。
まとめ
親や夫に内緒でキャバ嬢の仕事をしているという人やこれからキャバ嬢の仕事を始めたいという人もいらっしゃるでしょう。親や夫の扶養に入りながら、キャバ嬢として働くことは可能です。しかしながら、所得税法上の扶養も社会保険上の扶養も年収の上限が設定されています。年収の上限を上回る収入を得る場合、親や夫に事情を話し、扶養控除や配偶者控除などの対象とならないこと、社会保険の脱退手続きを取らなければならないことを説明する必要があるでしょう。扶養の範囲を超えて仕事をしているにもかかわらず、正しい手続きを行わなかった場合、親や夫にも追徴課税がなされ、勤務先にも事情説明を求められるといった迷惑をかける恐れがあります。キャバ嬢として扶養内で働きたい場合には、しっかり年間の収入を管理することが大切です。
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