
スナックは、派手な内装やたくさんのキャストを集めなければならないキャバクラなどに比べ、比較的少ない資金で開業できるお店です。これまで水商売のお店で働いてきた方が初めてお店を持つ場合や接客業が好きな方がお酒を提供するお店を開く場合などは、比較的開業のハードルが低いスナックの経営から始めるケースが少なくありません。
では、スナックの開業手続きはどのような手順で進めればよいのでしょうか。
今回は、スナックの開業手続きの流れや開業手続きをスムーズに進めるコツについてご紹介します。
スナックの開業手続きの流れ
スナックの開業手続きは、次のような流れで進めます。
- 開業したいお店のコンセプトを決める
- 出店エリアを絞り、店舗を探す
- 店舗の内装工事の依頼をする
- スナックの開業手続きに必要な資格を取得する
- スナックの開業に必要な許可や届出を申請する
- 設備や備品を導入する
- 仕入れ先を選定する
- スタッフを採用する
- 集客をする
- 営業開始と開業届の提出
1.お店のコンセプトを決める
スナック開業時にまずやらなければならないことが、お店のコンセプト決めです。どのような雰囲気のお店を開きたいのか、どのようなお客様をターゲットとしたいのかを決めなければ、出店エリアも決められません。
例えば、会社帰りのビジネスマンが訪れるお店を作りたい場合には、オフィス街に近い場所にスナックを開いた方が集客しやすくなるでしょう。反対に地域の人々が集うようなお店を作りたい場合には、繁華街ではなく、住宅地に近いエリアにお店を開いた方がターゲットとなるお客様を呼び込みやすくなります。
また、ラグジュアリーな雰囲気に仕上げたいのか、ほっとするようなアットホームな雰囲気に仕上げたいのか、コンセプトにより内装のデザインも変わります。
スナック開業を検討する場合には、最初にコンセプトを明確に決めておくと、その後の手続きがスムーズに進みます。
2.出店エリアを絞り、店舗を探す
コンセプトに基づき、スナックを出店するエリアを絞っていきます。スナックの営業形態によっては、風俗営業許可の取得が必要になったり、深夜酒類提供飲食店営業開始届の提出が必要になったりする場合があります。風俗営業の1号営業の許可を取得する場合、住居専用地域や住居地域に出店することはできません。また、学校や大学、図書館、病院、有床診療所、児童福祉施設などからは一定以上離れた距離でなければ、出店できない点にも注意が必要です。
また、深夜酒類提供飲食店営業として届出を出す場合も原則として住居専用地域や住居地域に出店はできません。ただし、商業地域の周囲30メートル以内の住居地域であれば営業が認められます。
さらに、カラオケを導入し、深夜以降もお客様にカラオケを勧めたり、合いの手を入れたりといった行為をする場合などは特定遊興飲食店営業の許可が必要になる場合もあります。特定遊興飲食店営業についても出店できる範囲が決められています。
お店のコンセプトに基づき、出店できる地域であるかどうかも確認したうえで、エリアを絞り、物件を探すようにしましょう。また、物件を選ぶ際にはライバルとなるお店の出店状況や周辺の人の流れ、最寄り駅などの利用者のデータなども確認しながら、集客できる可能性が高い場所を選ぶことも大切です。
3.店舗の内装工事の依頼をする
物件の契約をしたら店舗の内装工事を進めます。自分の理想のスナックを開業したいという気持ちが強いと内装にもこだわりたくなるものですが、理想をすべて叶える場合、工事費用が高額になる恐れがあります。まずは、どのような内装にしたいのかを考え、デザインに対する希望がまとまったら、内装工事業者に相談してみるとよいでしょう。
スナックの開業には、飲食店営業許可の取得が必要になり、営業スタイルによっては風俗営業許可の取得も必要になります。お店の内装は、それぞれの許可要件を満たす必要があるため、内装工事を依頼する際には、スナックなど、水商売の店舗の施工実績を持つ業者を選ぶと安心です。
希望条件を伝え、工事の見積もりを取得しますが、予定よりも工事費が高くなることもあるでしょう。お客様に選ばれるスナックになるためには他店との差別化も必要です。そのため、どうしてもこだわりたい部分については妥協せず、優先順位をつけて、コストをかける部分、できるだけコストを抑える部分を上手に選択するようにしましょう。
4.スナックの開業手続きに必要な資格を取得する
スナックは、お客様にお酒や軽食を提供するお店であり、飲食店に該当します。飲食店を開業するためには、飲食店営業許可の取得が必要です。また、飲食店には店舗に1人以上食品衛生責任者の資格を持つ人を置かなければなりません。食品衛生責任者の資格がなければ、飲食店営業許可の申請もできないため、まずはスナック開業準備として先に食品衛生責任者の資格を取得しましょう。食品衛生責任者の資格は、各都道府県の食品衛生協会が実施する講習会を受講することで取得できます。また、集合研修のほかeラーニングで資格を取得することもできるため、都合のいい方法を選び、早めに準備を進めておくようにしましょう。
そのほか、お店の収容人数が30人以上の場合は、防火管理者の配置が必要になります。契約した店舗の収容人数が30人を超える大きさの場合には、防火管理者の資格も取得しておきましょう。防火管理者の資格は、都道府県などで実施されている防火管理講習を受けることで取得できます。
5.スナックの開業に必要な許可や届出を申請する
前述のように、スナックの開業に必要な資格は複数あります。1つは、飲食店営業許可です。飲食店営業許可は、保健所に必要書類を提出し、保健所の審査を受けることで取得できます。しかしながら、飲食店営業許可を取得するためには満たさなければならない店舗の条件があるため、内装工事の設計図が完成したら、工事着手前に一度、保健所に相談をするようにします。工事完了後に申請をし、その際に飲食店営業許可が下りなかった場合、工事をやり直さなければならなくなってしまいます。工事のやり直しが発生すれば、スナックの開業コストもかさむと同時に、開業できる日も遅れてしまうでしょう。スムーズにスナックの開業手続きを進めるためには、工事着手前に必ず、設計図を持って保健所に相談することが大切です。
飲食店営業許可が取得できたら、お店の営業スタイルに合わせた許可や届出の申請をします。まず、お客様の横に座ってお酌をしたり、お客様とカラオケでデュエットをしたりするような営業スタイルを考えている場合、接待を伴う飲食店としてみなされます。そのため、接待をするスナックを開業する場合には、風俗営業許可の取得が必要です。風俗営業許可は、管轄の警察署に必要書類を届け出、審査を経て認可されることになります。
風俗営業許可では、午前0時から午前6時までの間、お酒の提供ができません。深夜と呼ばれる午前0時以降もお酒を提供したい場合には、風俗営業許可ではなく、深夜酒類提供飲食店営業開始届の提出が必要です。ただし、深夜酒類提供飲食店営業として営業する場合には、接待行為は認められません。したがって、開業時には、接待を伴うスタイルのスナックを開業するのか、接待はせずに午前0時以降も営業するスナックを開業するのかをしっかり考えたうえで、許可や届出を行うことが重要になります。
また、カラオケ機器を導入する場合で、午前0時以降もお客様にお酒を提供し、カラオケを勧めたり、お客様が歌うカラオケを盛り上げたりするような行為をする予定がある場合、遊興飲食店営業に該当します。その場合、風俗営業許可や深夜酒類提供飲食店営業開始届ではなく、遊興飲食店営業の許可申請が必要です。遊興飲食店営業をする場合は、接待は禁止されている点にも注意しましょう。
風俗営業許可の申請、深夜酒類提供飲食店営業開始届、特定遊興飲食店営業の申請は、いずれも管轄の警察署へ申請や届け出をします。風俗営業許可については、申請後、審査が行われ、結果がでるまでに55日ほどの時間がかかるとされています。そのため、スナックの開業予定日に合わせて早めに手続きを進めることが大切です。
6.設備や備品を導入する
飲食店営業許可の認可が下りたら、内装工事を進めます。スナックを開業する場合には、シンクや冷蔵庫、冷凍庫、コンロ、製氷機など、調理に必要な設備の導入も必要です。また、お客様が座るスツールやソファー、テーブル、装飾品などの準備も必要になります。
そのほか、お酒を入れるグラスや食事を載せるお皿などの備品も購入しましょう。
7.仕入れ先を選定する
お店で提供するお酒や食材の仕入れ先を選定します。仕入れ先を決定する際には、価格はもちろん、注文から配達までの期間や取り扱っているお酒の種類など、サービス全般を確認する必要があります。複数の業者から話を聞くと、仕入れ値の相場も知ることができるでしょう。納得できる価格・サービスを提供している業者を選択することが大切です。
8.スタッフを採用する
1人でスナックを営業するのであれば、スタッフを採用する必要はありませんが、一緒に働く人を募集する場合は、求人募集をしなければなりません。勤務時間や勤務日数、時給などの条件を決め、求人サイトや求人広告などで募集をしましょう。応募があった場合、面接をして採用者を決定します。
スナックといっても風俗営業許可を取得して営業するのかどうかで接客方法が変わります。採用が決定したら、基本的な言葉遣いや接客時のマナーを教えるとともに、お店のルールについても理解してもらうようにしましょう。
9.集客・宣伝をする
お店のオープンに合わせて集客をします。まずは、お店の看板を設置し、オープン予定を告知するポスターなどを貼っておくとよいでしょう。また、オープンイベントを実施し、イベントを告知するチラシを配布するのもよいでしょう。そのほか、昨今ではホームページやSNSを使ってオープンを告知するスナックも増えています。
10.営業開始と開業届の提出
風俗営業許可や遊興飲食店営業許可の申請をしている場合は、許可が下りたらスナックの営業を開始できます。お店をオープンさせ、開業から1ヶ月以内に税務署に開業届を提出するようにしましょう。また、アルバイトやパートとして従業員を雇用するのであれば、就業時間数などに応じて社会保険や雇用保険などの加入手続きも行います。
スナック開業手続きをスムーズに進めるコツとは
スナックを開業するまでにはさまざまな手続きが必要です。開業手続きをスムーズに進めるためには次の2つのポイントに注意するようにしましょう。
最初にコンセプトを明確にしておく
最初の段階でお店のコンセプトをはっきりさせておくと、ターゲットとなる層も明確になるため、エリアや物件の選定もしやすくなります。また、内装デザインのイメージもしやすくなるため、内装業者と相談をする際にも話を進めやすくなるでしょう。さらに、接待を伴う営業をしていくのか、接待をせずに午前0時以降もお酒の提供を続けるのかという点がはっきりすることで、スナック開業までに必要な許可や手続きも明確になります。
スナックのオープン予定日から逆算して開業手続きを進める
スナックの開業時には、飲食店営業許可を必ず取得しなければなりません。また、飲食店営業許可を取得するためには、食品衛生管理者の資格取得も必要です。さらに、飲食店営業許可の取得にあたっては、内装工事を始める前に図面の段階で保健所に相談しなければなりません。順番を誤ると、工事のやり直しが必要になる可能性もあるため、開業手続きの順番に気を付ける必要があります。
加えて、接待を伴う営業を予定している場合には風俗営業許可の取得が必要です。風俗営業許可を得るためには、必要書類を準備して管轄の警察署に申請をし、調査と審査を受けなければなりません。許可が下りるまでには55日ほどの時間がかかりますが、許可を得る前に営業すると違法行為となってしまいます。したがって、スナックの複雑な開業手続きをスムーズに進めるためには、スナックのオープン予定日から逆算し、計画的に準備を進めることが重要です。
まとめ
スナックを開業するためには、お店を探したり、内装工事をしたりといった準備のほか、営業に必要となる許可や資格取得の手続きも進めなければなりません。そのため、スナックの開業を考えているときには、スナックの開業手続きの流れを理解し、計画的に開業の準備を続けることが大切です。
また、どのようなお店を開きたいのかが定まっていない場合、出店場所や内装工事、取得する許可などの決断時に迷いが生じ、スムーズに手続きが進まない可能性が高くなります。スナックの開業を決意したら、まずはどのようなお店を開きたいのか、コンセプトを明確に決定することから準備を始めましょう。
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