
スナックは、お客様にお酒やおつまみを出す飲食店の1つの形態です。小さな店舗で営業するケースが多いため、スナックの場合、他の飲食店に比べて比較的開業費を低く抑えられます。そのため、自分のお店を開きたいとスナックを開業する女性も少なくありません。
では、スナックの開業にはどのようなものや手続きが必要になるのでしょうか。
今回は、スナックの開業を目指す方のために、開業に必要なものや開業時の手続きの流れについて分かりやすくご説明します。
スナックの開業に必要なものとは
スナックといってもお店のコンセプトによって、必要なものは変わってきます。ここでは、一般的にスナックに必要とされているものをご紹介します。
店舗
当たり前のことですが、スナックを開業する際には店舗を準備する必要があります。どのようなスナックを開きたいかによって、開業すべきエリアも変わってくるでしょう。また、お店の大きさによっても、スナックの開業のために準備が必要なものや必要な設備が変わってきます。
開業資金
開業資金もスナックの開業時に必要なものの1つです。スナックの開業時には、物件を借りるための費用、内装工事の費用、設備の購入費用、消耗品の購入費用、広告宣伝費用などが必要になります。また、開業してからすぐにお客様を獲得できるわけではありません。そのため、当面の運転費を確保しておかないと、お酒や食材などの仕入れが難しくなったり、家賃や光熱費などの支払いに窮してしまったりする可能性があるでしょう。
開業資金として必要な額は、お店の大きさによっても変わってきますが、スナックの開業費用の目安は、一般的には500万円程度からといわれています。
スツールやテーブル、照明などのインテリア
カウンターだけのお店の場合はカウンターに置くスツール、テーブル席も用意するお店の場合はテーブルとソファーなどが必要です。お店のコンセプトと予算に合わせ、壁紙などの内装と合わせて、雰囲気に合ったものを選ぶとよいでしょう。
また風俗営業許可などを取得する際には、店内の照度が定められています。照明を選ぶ際には基準の照度以上の明るさを保てるものを選ぶようにしましょう。
キッチン関連の設備
お酒や食材を保管する冷蔵庫や氷を作る製氷機、コンロ、シンク、電子レンジなど、キッチン関連の設備もスナックの開業時に必要なものです。軽食を提供する際、お店のオリジナルのメニューを用意したい場合などは、コンロが必要になりますが、おつまみ程度のスナック類だけを提供するのであればコンロの準備は要りません。
グラスや食器
お酒を提供する際には必ずグラスが必要になります。ビールを飲む際に使うグラスとワイングラス、ウィスキーグラスは異なるように、お酒の種類によって必要となるグラスは変わります。お店に置くお酒の種類に合わせて、適切なグラスを揃えなければなりません。また、軽食のメニューに合わせて食器も揃える必要があります。
そのほか、氷を入れるアイスペールやワインクーラー、ボトルキープ用のホルダー、栓抜き、灰皿、メニューブックなども必要なものになるでしょう。お店の席数に合わせて、適切な数を揃えるようにします。しかしながら、一人のお客様が数種類のお酒をオーダーする場合も考えられるため、グラスは余裕を持たせて発注することが大切です。
レジなどの会計システム
お会計をする際に必要となるレジなどの会計システムや伝票などの準備も必要です。クレジットカードやQRコード決済など、キャッシュレス決済に対応する場合には、決済に必要な機械の導入も必要になります。
カラオケ
必ず必要なものではありませんが、スナックの中にはカラオケ機器を導入しているところも少なくありません。ただし、お客様がカラオケを楽しむだけでなく、経営者やスタッフがお客様と一緒に歌を歌うような場合は、接待行為に該当するため、風俗営業許可が必要となります。風俗営業許可を取得せずにスナックを開業したい場合は、カラオケの使用方法について考えておいた方がよいでしょう。
おしぼりや割りばしなどの消耗品
お客様にお渡しするおしぼりは、レンタルするケースが多くなっていますが、夏には冷やして、冬には温めて提供できるよう、おしぼりの温蔵庫や冷蔵庫なども必要になるかもしれません。また、衛生面を考えて使い捨てのおしぼりを使用するケースも増えています。
そのほか、割りばしやペーパーナプキンなどの消耗品も準備が必要です。
スナックの開業に必要な届出や資格
スナックを開業する際には、届出や資格などの準備も必要です。スナック開業時に必要な届出や資格をご紹介します。
食品衛生責任者資格
スナックは、お客様にお酒や食べ物を提供する飲食店です。そのため、スナックを開業する際には店舗に一人、必ず食品衛生責任者を置かなければなりません。食品衛生責任者は、各都道府県に設置されている食品衛生協会が主催する講習会を受講することで取得できます。また、会場での研修だけでなく、eラーニングでの受講も認められています。
飲食店営業許可を取得する際には必ず食品衛生責任者の資格が必要になるため、スナックを開業する場合は早めに食品衛生責任者の資格を取得しておきましょう。
飲食店営業許可
飲食店営業許可もスナック開業時に必ず必要なものです。飲食店営業許可を取得するためには、お店が施設基準を満たしていなければなりません。そのため、内装工事が完了した後に飲食店営業許可の申請をしても、施設基準に合致していない場合、工事のやり直しが発生します。したがって、飲食店営業許可の申請をする際には、工事を開始する前に、設計図が届いた時点で保健所や自治体の衛生科などに相談をすることが大切です。
相談後に工事を開始し、工事完了の10日くらい前には申請書類を提出しましょう。申請に必要なものを次にご紹介します。
・営業許可申請書
・施設の構造及び設備を示す図面
・水質検査の結果を証する書類の写し(水道水、専用水道、簡易専用水道以外の水を使用する場合)
・許可申請手数料
・食品衛生責任者の資格を証明するもの
・法人としてスナックを開く場合は法人の登記事項証明書
申請後に、調査日程を相談し、実地調査・審査が行われます。その結果、問題がなかった場合に営業許可申請書が交付されます。
防火管理者
スタッフを含め、30人以上の収容人数のスナックを開業する際には防火管理者の配置が必要です。防火管理者の資格は、1日または2日の講習を受けることで取得できます。
防火対象物使用開始届
スナックは、不特定多数の人が利用するため、特定防火対象物に該当するものです。そのため、スナック開業時には、防火対象物使用開始届を管轄の消防署に届け出なければなりません。防火対象物使用開始届の提出期限は、スナックを開業する日の7日前までです。提出時には、建物の平面図や立面図、断面図、室内仕上表、建具表などの添付が必要になります。
風俗営業許可
お客様と一緒にカラオケを歌ったり、お客様の隣に座ってお酒を注いだり、接待を伴う接客をするスナックを営む場合は、風俗営業許可を取得しなければなりません。風俗営業許可を取得するために必要なものは次のとおりです。
・許可申請書
・営業の方法を記載した書類
・営業所に係る賃貸借契約書(使用承諾書)及び建物に係る登記事項証明書等
・営業所の平面図及び営業所の周囲の略図
・営業者の本籍記載の住民票の写し、市区町村長の身分証明書、誓約書
・管理者の写真2枚
・申請手数料
風俗営業許可は、管轄の警察署に申請します。申請書を受理後、審査と調査が行われ、問題がない場合に許可証が発行されます。許可が下りるまでには55日程度の時間がかかります。そのため、スナックを開業する際には余裕を持って申請することが大切です。
深夜酒類提供飲食店営業開始届
午前0時を過ぎてもお酒を提供したい場合には、深夜酒類提供飲食店営業開始届を開業の10日前までに提出しなければなりません。深夜酒類提供飲食店営業開始届は、管轄の警察署に提出する書類です。
接待を伴う接客が可能になる風俗営業許可を取得する場合は、深夜0時を過ぎてアルコールを提供することはできません。また、深夜酒類提供飲食店営業開始届を出して営業する場合には、接待は禁じられています。そのため、スナックを開業する際には、どのような営業スタイルのお店にするのかを十分に考えたうえで許可申請や届け出を行うことが大切です。
特定遊興飲食店営業許可
カラオケを設置するスナックを開業予定の場合は、特定遊興飲食店営業許可の取得が必要になるケースもあります。特定遊興飲食店営業許可は、次の条件をすべて満たす場合に必要となる許可です。
・深夜(午前0時から午前6時まで)営業をする場合
・お客様に遊興させる場合
・お客様にお酒を提供する場合
スナックにおけるカラオケの場合、お客様に歌うよう勧めたり、お客様の歌に合わせて合いの手を入れたりといった盛り上げるための行為は遊興に該当すると考えられます。したがって、午前0時を過ぎてお酒を提供しながら、お客様にカラオケを勧める場合には、特定遊興飲食店営業許可の申請が必要になります。
しかしながら、午前0時以降でもお客様が自らカラオケを歌う場合で、お店からカラオケを勧めたり、盛り上げるような行為をしたりすることがなければ、深夜酒類提供飲食店営業開始届のみで営業が可能です。
特定遊興飲食店営業の申請をする際に必要なものは次のとおりです。
・許可申請書
・営業の方法を記した書類
・営業所に係る賃貸借契約書(使用承諾書)及び建物に係る登記事項証明書等
・営業所の平面図及び営業所の周囲の略図
・営業者の本籍記載の住民票の写し、市区町村長の身分証明書、誓約書
・管理者の本籍地記載の住民票、市区町村長の身分証明書、誓約書
・管理者の写真2枚
・申請手数料
開業届
スナックを開業する際には、税務署に開業届を提出する必要があります。開業届の提出期限は、開業から1ヶ月以内です。また、スナックの開業から2ヶ月以内に青色申告承認申請書も提出すると、確定申告の際に青色申告ができるようになります。青色申告の場合、申告方法が複雑にはなるものの最大で65万円の所得控除を受けられるため、節税につながる可能性があります。スナックの開業を検討する際には、青色申告の届出も同時に行うとよいでしょう。
スナック開業時に必要なその他の準備
スナック開業時にはそのほかにも必要な準備があります。
内装工事
コンセプトを決め、物件を選定し、契約を結んだら内装工事を進めなければなりません。内装によってお店の雰囲気は大きく変わります。そのため、自分が開きたいスナックのイメージに合った内装デザインを採用するようにしましょう。ただし、図面が出来上がった時点で保健所に相談し、飲食店営業許可の申請に支障がないかを確認しておくことが大切です。
また、自分のお店を持つからには内装にこだわりたいという方も少なくないでしょう。しかし、内装にこだわりすぎるとその分、工事の費用も高額になります。開業資金の予算も考慮し、工事の業者とも相談しながら、こだわる点にはこだわり、妥協できる点は妥協するなどして、バランスを見ながらデザインを決めるようにしましょう。
仕入れ先の確保
スナックで提供するお酒やおつまみ、おしぼりなどの仕入れ先も決めておかなければなりません。価格はもちろん、お店に置きたいものを取り揃えているか、小ロットでの注文にも対応しているか、注文から配達までどの程度の時間がかかるかなど、サービスの内容についても確認が必要です。複数業者のサービス内容を比較し、検討するとよいでしょう。
スタッフの確保と教育
スナック開業にあたってスタッフを募集する場合には、人材募集の活動も必要です。求人サイトなどに広告を出すなどして、オープンまでに人材を確保しましょう。また、スナックのような水商売で働いた経験がない人を採用する場合には、基本的な挨拶や接客の方法などを教育する必要もあります。そのほか、お店のコンセプトを説明し、接待が必要になるのか、接待は不要なのか、しっかりルールを伝えることも大切です。
まとめ
スナックを開業する際に準備が必要となるものや資格、届出、許可などについてご説明しました。スナック開業時にはさまざまな準備が必要です。加えて、どのようなスタイルで営業したいのかによって必要な許可や届出が変わってきます。
許可によっては申請から許可が下りるまで、時間がかかるものもあるため、まずはコンセプトを明確に定め、お店の営業スタイルを決めてから、順を追って手続きを進めるようにしましょう。
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