スナック経営では、ほかの商売と同様にお客様からいただく売上がそのまま利益になるわけではありません。お店で出すお酒やおつまみなどの仕入れ代、光熱費など、さまざまな支出が発生するため、手元に残る利益は売り上げよりも少ない額になります。スナック経営者としてお店を順調に運営していくためには、しっかり経費を把握し、利益を管理していくことが大切です。

また、スナックを経営している場合には、確定申告を行い、税金を支払いますが、経費をしっかり管理していないと税負担が大きくなり、本来よりも得られる利益が少なくなる可能性もあります。経費の適切な管理は、スナック経営において重要な意味を持つのです。

では、スナック経営ではどこまでの支出を経費として扱うことができるのでしょうか。

今回は、スナック経営者が知っておきたい経費の範囲についてご説明します。

 

スナック経営で経費の計上が重要になる理由

なぜスナック経営では経費の計上が重要になるのでしょうか。経費をしっかり計上すべき理由についてご説明します。

 

所得は売上から経費を引いて算出する

前述のように、スナックの売上がそのまま利益になるわけではありません。お店を運営するうえではさまざまな支出が発生します。売上から支出を差し引くことで、お店の利益(所得)は計算できます。

 

法人税や所得税は所得額によって変わる

個人事業主としてスナック経営をしている場合には、スナックの所得額に応じた所得税の納付が必要です。また、会社を立ち上げ、法人としてスナックを経営している場合には、お店の所得額に応じた法人税の納税が必要になります。

所得税と法人税の税率は異なりますが、いずれも所得額に税率をかけて税額を算出するため、所得額が高くなるほど納める税金の額は高くなる仕組みです。

 

経費を正しく計上できれば節税できる

所得額に税率をかけることで、納税額は決定しますが、所得額は「売上-経費」で算出します。したがって、経費として扱うことができる経費を計上しなかった場合、差し引ける額は低くなるために所得額は高くなり、反対に経費を正しく計上すれば所得額を抑えることができるというわけです。つまり、スナック経営にかかった経費を確定申告時にしっかり申告しないと、本来よりも多くの税金を支払うことになってしまうのです。この点から、経費の管理は非常に重要な意味を持つといえます。

しかしながら、納税額を抑えようと経費として計上できない支出まで経費として計上すると、不正に税金を逃れる行為となります。税務調査で不正が発覚すれば、税務署による詳しい調査が行われ、正しい申告のやり直しと不足分の税額の納付、さらには不正をしていたことに対するペナルティ分の税金の納付が求められます。したがって、スナック経営者は、どのような支出を経費として扱うことができ、どのような支出は経費計上ができないのかをしっかり理解しておく必要があるのです。

 

スナック経営で経費にできるものとは

スナック経営で経費として扱うことができる支出は、事業の運営のために支払った費用です。スナックの場合は、次のような支出を経費として計上することができます。

・お酒やおつまみ、食材の仕入れ代

・おしぼりなど備品の購入代やレンタル代

・お皿やグラスなどの購入費用

・お店の家賃

・お店の水道料金やガス代、電気代

・カラオケ設備のリース代

・内装のリフォーム費用

・ノベルティグッズの作成費用

・お客様へのプレゼント購入費用

・スタッフへの給与や報酬

・経営者の給与(法人の場合)

・スタッフの採用にかかった費用

・広告宣伝費

・税理士など、専門家への報酬

・クレジットカード会社に支払う手数料

 

スナック経営で経費に含めることができないもの

スナック経営で経費として扱える支出をご紹介しましたが、次のような支出は経費として扱うことはできません。

・自宅の家賃

・プライベートで使用する食品の購入代金

・自宅の水道光熱費

・友人のために購入したプレゼントの代金

・自宅のリフォーム費用

・経営者の給与(個人事業主の場合)

基本的に、スナックを経営するために必要となった支出は経費計上が可能です。また、それ以外のスナック経営に関係のない費用は、経費として計上することはできません。

 

確定申告時の経費計上に関する注意点

スナックの経費を計上する際、注意しなければならない点がいくつかあります。たとえ、知識がないために誤った処理をしてしまった場合でも、正確に税金を納めていなければ税務調査で指摘を受けることになってしまいます。不要なトラブルを避けるためにも、経費計上をする際には次の点に気を付けるようにしましょう、

 

個人事業主と法人の経費の取り扱い方の違いに注意

スナック経営で経費として扱える支出、扱えない支出についてご説明しました。その中で、経営者の給与に関しては、会社としてスナックを経営する場合と個人事業主としてスナックを経営する場合で取り扱いが変わります。

まず、個人事業主としてスナックを経営している場合、スタッフに支払う給与や報酬は、経費として計上して問題ありません。しかし、個人事業主の場合は、売上から経費を差し引いた所得額は、そのまま事業主の利益となります。したがって、事業主に給与を支払うという概念はないのです。個人事業主の場合に経費として扱える人件費は、スタッフに支払う給与や報酬に限られます。

一方、会社を設立し、法人としてスナックを経営している場合は、スタッフに支払う給与や報酬だけでなく、経営者に支払う給与も経費計上が可能です。ただし、経営者の給与を経費計上するためには、定期同額給与として支給しなければなりません。定期同額給与とは、一定期間ごとに事前に決めた同一の額を支給するものです。「スナックの売上が好調だから今月の給与は多めにしよう」、「売上が下がっているから今月の給与は低くしよう」といった行為は認められません。一定期間ごとに同額を支払うというルールを守らなかった場合、経営者の給与は経費計上できなくなってしまうのです。

スナックの経営形態が個人事業主であるか法人であるかによって、経営者が受け取る報酬の扱い方に違いがある点を覚えておきましょう。

 

スナック経営に必要な経費であることを証明するには領収書が必要

スナックの経営に必要な支出として、経費に計上した場合でも、確実に支払いをしたという証拠がなければ経費として認められません。そのため、経費として計上する際には、領収書を保管しておくことが大切です。もし、領収書がなくても経費計上が認められるのであれば、実際に支払っていない費用まで自由に経費にすることができ、不正に納税額を低く装うケースがでてくるでしょう。

税務調査の対象となった場合には、過去にさかのぼり、複数年分の調査が行われます。そのため、経費であることを証明するために領収書も過去5年分については保管しておくようにしましょう。

 

スナック経営者の給与を経費にできるなら法人化した方がよい?

個人事業主としてスナックを経営している場合、スナック経営者の給与は経費として扱うことができません。そのため、スナック経営をするのであれば、経営者の給与も経費として扱えるよう、会社を立ち上げた方がよいのでしょうか。

 

スナック経営を法人化するメリット

スナック経営を法人化することで得られるメリットには次のようなものがあります。

 

・節税につながる可能性がある

スナック経営を法人化すると、まず、経営者の給与を経費として計上することが可能です。経営者の給与を経費として扱えれば、売上から差し引ける経費の額が高くなり、所得額を圧縮できるため、納税額を抑えられる可能性があります。

また、法人化した場合、スナックの所得に課せられる税金は、所得税ではなく法人税です。所得税は、所得額が高くなるほど税率も高くなる仕組みですが、法人税の場合は所得額に比例して税率も高くなることはありません。そのため、一定以上の所得額を得ている場合は、会社を立ち上げてスナックを経営した方が、納税額を抑えられる可能性があります。

 

・社会保険に加入できる

法人化すると社会保険への加入義務が生じます。厚生年金の保険料は国民年金の保険料よりも高額になりますが、将来受け取れる年金額が高くなります。また、保険料は法人と個人が折半するため、国民健康保険よりも個人が負担する保険料の額を抑えられるケースもあるでしょう。特に扶養家族がいる場合などは、社会保険に加入すると、世帯の保険料負担額を減らすことが可能です。

 

・赤字の繰越期間が長くなる

個人事業主としてスナック経営をし、青色申告を選択している場合、最大3年に亘って赤字を繰り越すことができます。しかし、法人化すると赤字を最大10年に亘って繰り越すことが可能です。そのため、経済状況や災害などによって大きな赤字が発生した場合などは、長期間黒字になった年の税負担を抑えられるというメリットがあります。

 

スナック経営を法人化するデメリット

スナック経営を法人化する場合、メリットだけでなく、デメリットがある点もあります。メリットだけを考えて法人化した場合、後悔する可能性もあるため、スナック経営の法人化を検討する際には、メリットとデメリットの両方の側面から考えることが大切です。

 

・法人化にはコストと手間がかかる

まず、会社を立ち上げる際にはお金がかかります。個人事業主としてスナック経営をする際には税務署に開業届を提出するだけで、費用がかかることはありません。しかし、会社を設立するとなると、定款を作成し、法務局で法人登記をするといった手続きが必要になります。また、定款の種類や会社の形態によっては、定款に貼付する収入印紙代や公証役場での定款の認証にかかる手数料が発生し、法務局で法人登記をする際にも登録免許税の支払いが必要です。さらに、法人登記完了後は、社会保険の加入手続きや税務署での手続きなどが必要になります。

個人事業主としてスナックを開業する場合とは異なり、会社設立時には煩雑な手続きが必要になり、費用も発生する点に注意しなければなりません。

 

・社会保険料など、経営維持に必要な費用の負担が増える

法人化すると、従業員を雇用した場合、従業員も社会保険に加入させる必要があります。従業員分の社会保険料についても法人が保険料の半分を負担するため、従業員が増えるほど法人が負担する社会保険料も高くなります。

また、個人事業主の場合、スナックの経営が赤字であれば負担する税金はありません。しかし、法人化した場合には、たとえスナック経営が赤字であっても住民税の均等割り分の負担が必要です。

加えて、法人化すると法人税の申告手続きは非常に複雑になるため、多くの法人は税理士に申告の代行を依頼しています。税理士に申告を委託することで手間や負担は軽減できますが、税理士には報酬を支払わなければなりません。

 

・必ず節税できるわけではない

スナック経営者の給与を経費として扱えるのであれば、法人化してしまった方が節税できてよいのではと思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、法人化したからといって必ず節税できるわけではありません。スナックの所得額によっては、法人税よりも所得税の税率の方が低くなる場合があり、その場合は法人化しない方が納税額は低くなるのです。また、法人化に伴って必要となる費用や法人化後に負担する社会保険料などの費用負担を考えれば、個人事業主として経営を続けた方がよい場合もあります。

したがって、スナックを法人化して経営すべきかどうかは、経費の観点だけでなく、売上や所得額、法人化によって生じる費用負担などを総合的に考えて判断することが大切です。

 

まとめ

事業のためにかかった費用を漏らさず経費計上すれば、必要以上に税金を納めることはありません。しっかり領収証も保管しておくと、確定申告時にも漏れなく経費計上ができるでしょう。また、スナック経営に関係のないプライベートな費用まで経費として計上すると税務調査の対象になり、ペナルティを科せられる恐れがあるため、経費は正しく計上することが大切です。

スナック経営時に経費として認められる支出は、お店の経営のためにかかった費用に限られます。しかし、個人事業主としてスナック経営をしているのか、会社を設立して法人としてスナックを経営しているのかによって、経営者の給与の扱いが変わってくる点に注意が必要です。法人化すべきかどうかは、税理士などの専門家に相談し、慎重に判断することをおすすめします。


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