ホストをはじめ、ナイトワークで働く人は、働いた分の報酬を銀行振込ではなく、手渡しで受け取るケースが少なくありません。企業に勤める人が会社から受け取る給与の場合、税金を差し引いた分が支払われるケースがほとんどです。では、ホストの方がお店から手渡しで受け取る報酬からは税金が引かれているのでしょうか。
今回は、ホストが手渡しで受け取る報酬にかかる税金や納税の方法、納税を怠った場合のリスクなどについてご説明します。

 

なぜホストの報酬は手渡しが多い?

一般的な企業の場合、給与は銀行振込で支払われるケースが多くなります。しかし、ホストの場合、働いた分の報酬は手渡しで渡されるケースが多くなっています。なぜ、ホストの報酬は手渡しが多いのでしょうか。

 

ホストの報酬に手渡しが多い理由

まず、報酬を現金で支払うことは全く問題のない行為です。そのため、小規模な事業を営むケースや短期の雇用契約などの場合は、手渡しで報酬を支払うケースが多くなっています。それは、銀行振込を行う場合、必ず手数料が発生することに関係します。1回あたり数百円の手数料がかかれば、店側ではスタッフ分の手数料の負担が必要になります。ホストは、シフト制で働くケースが多く、人の入れ替わりが多いため、口座の管理も煩雑になり、手数料も高額になることから手渡しで報酬を支払うケースが多いと考えられています。

 

ホストの報酬と給与の違い

報酬の支払い方法以外にも、会社員が受け取る給与とホストが受け取る報酬には違いがあります。それは雇用契約の違いです。会社員は会社と雇用契約を結んでいますが、ホストの場合、多くは雇用契約を結ばずに業務委託契約を結んでいるケースがほとんどです。つまり、ホストはお店の社員ではなく、個人事業主としてお店で働いていることが多くなります。
会社には源泉徴収義務があり、従業員に給与を支払う際に給与から税金を差し引き、従業員の代わりに国や自治体に所得税や住民税を納めなければなりません。しかし、お店と雇用契約を結ばず、個人事業主としてホストとして働いている場合は、給与に該当しないため、お店側はホストに支払う報酬から税金を徴収する必要がありません。

 

ホストが手渡しで受け取る報酬にかかる税金とは

ホストの方が手渡しで受け取る報酬も、税金がかかります。ホストの報酬にかかる税金は、所得税と住民税です。

 

所得税

所得税は、個人の所得に対してかかる税金です。所得は、収入から経費を差し引いて計算し、所得税の額は、所得額に税率をかけて算出します。
ホストの仕事の場合、お客様に渡すプレゼントの購入代、ホストとして働くために購入した衣装の代金、お店まで通う交通費、お客様に営業電話をするために保有している仕事用の携帯電話の料金などは経費として扱える支出です。

 

住民税

住民税とは、公共施設や上下水道、ごみ処理などといった行政サービスの活動費に充てる目的で徴収される税金です。住民税も所得金額を基に計算されますが、所得税は国に納める国税であるのに対し、住民税は1月1日時点に居住している自治体に納める地方税となります。

 

ホストの手渡し報酬にかかる税金は確定申告で納付

ホストの方が手渡しで受け取った報酬からは、税金が徴収されていないことが多くなります。そのため、個人事業主としてホストクラブで働くホストの方は、確定申告を行い、税金を納めなければなりません。

 

確定申告とは

確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間に得た所得額と、所得額に応じた所得税の額などを計算し、納税する手続きのことです。確定申告では、2月16日から3月15日までの間に前年分の申告をし、納税する決まりとなっています。
確定申告の提出方法は、手書きや国税庁のウェブサイトにある確定申告書作成コーナーで申告書を作成し、税務署に持参、郵送する方法のほか、e-taxを利用してオンラインで申告する方法があります。

 

確定申告の対象となるホストとは

ホストとして働く方が全員、確定申告をしなければならないわけではありません。まず、お店の社員として働き、給与から源泉徴収をされている方は、確定申告は不要です。
手渡しで報酬を受け取っているホストの方のうち、確定申告が必要となるのは次の条件に該当する方です。
・個人事業主として働き、年間48万円を超える所得がある人
・副業として年間20万円を超える所得がある人
お店と雇用契約を結んでいないホストの方は個人事業主となり、年間48万円の所得がある場合、確定申告が必要です。ホストを本業としている方の場合は、どんなに経費がかかったとしても年間48万円以上の所得が発生するケースがほとんどではないでしょうか。そのような場合、確定申告をし、税金を納めなければなりません。
また、昼間は会社員などの仕事を持ち、副業でホストをしている方の場合は、副業で得た所得が20万円を超えた場合に確定申告が必要になります。

 

手渡しで報酬を受け取っているホストが確定申告をしない場合のリスク

年間48万円以上、または副業として年間20万円以上の所得を受け取っているホストの方が確定申告をしない場合、次のようなリスクが発生します。

 

税務調査が行われる

税務調査とは、税金を正しく納めているかどうかを調べる税務署による調査です。税務調査は、納税の義務のある法人や個人を対象に実施されるものですが、調査の対象者はランダムに選ばれるわけではありません。税務調査は、調査対象者のオフィスや店舗、自宅などを訪れ、帳簿などの書類や所得を証明するもの、領収書などを細かくチェックする調査です。
調査には時間も手間もかかるため、税務署では納税を怠っている可能性が高い法人や個人を税務調査の対象に選びます。実は、ホストの方を含め、ナイトワークに携わる仕事をしている方は、税金を正しく納税していない業種として知られています。そのため、ホストの方は税務調査の対象に選ばれる確率が高いのです。

 

無申告加算税が課される

税務調査によって、手渡しで受け取っていた報酬の確定申告をしていなかったことが発覚すれば、無申告加算税の納税が求められます。無申告加算税とは、確定申告をする必要があったにもかかわらず、期限までに申告を行わなかった場合に課せられる税金です。
無申告加算税の税率は、50万円以下の部分については15%、50万円を超え300万円以下の部分については20%、300万円を超える部分については30%となっています。確定申告をせず、税金を適切に納付しないと、本来納めるべき税金に加え、無申告加算税分の税金も納めなければならないのです。

 

延滞税が課される

延滞税は、納税が遅れたことに対して課せられるペナルティとしての税金です。無申告加算税を課される場合、延滞税の納付も同時に課されます。延滞税の税率は、令和6年1月1日から令和6年12月31日までは、納期限の翌日から2月を経過する日までについては2.4%、それ以降については8.7%です。
延滞税は、税金の納期限の翌日から納付が完了する日までの日数に応じて課せられます。したがって、確定申告が遅れ、納付が遅れれば遅れるほど、延滞税は課せられ続ける点に注意しなければなりません。

 

複数年分の追徴課税額は高額になる恐れがある

税務調査では3年前の分までさかのぼって調査が行われるケースが一般的となっています。ただし、高額な申告漏れが発覚した場合には5年分の調査が実施されるケースもあります。複数年に渡って確定申告をしていなかった場合、無申告加算税と延滞税を加えた額は相当な額になる可能性があるでしょう。追徴課税が高額になり、支払えなかった場合は強制執行により財産の差し押さえが実施される恐れもあります。

 

重加算税の対象となり脱税罪の容疑が科される

重加算税は最も重い税率の加算税です。無申告加算税に代えて重加算税が課せられる場合、税率は不足している税額の40%ともなります。
重加算税は、多額の報酬を得ていたにもかかわらず、報酬を得ていないかのように装ったり、証拠を隠滅していた場合など、仮装隠蔽があった場合に課せられるものです。
また、重加算税の対象となる場合は、所得税法違反、つまり脱税の罪に問われる恐れもあります。脱税の場合、刑事事件として扱われ、裁判で有罪が確定した場合、行政処分である無申告加算税や延滞税の納付に加え、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科されます。

 

ホストの所得隠しが発覚した事件も

2024年10月には、ホストクラブを経営するグループ9社とホスト約30人が架空の経費を計上して所得を少なく見せかけていたとし、東京国税局から合わせて20億円の所得隠しを指摘された事件が発生しています。
売上トップクラスとされるホスト約30人は、店から支払われた報酬の記録を破棄するなどして、正しく確定申告をしなかったとされています。この事件では店側とホスト側それぞれに重加算税も含めた追徴課税が課せられました。

 

ホストが手渡しで受け取った報酬も確定申告を

手渡しで受け取った報酬にも税金がかかります。税金を納付しなかった場合、高額の追徴課税がなされる恐れや脱税の罪に問われる可能性もあります。
ホストをして1年間に48万円以上の所得を受け取った場合には、正しく確定申告をし、税金を納付することが大切です。しかし、確定申告の必要性が分からずに確定申告をしてこなかったホストの方もいらっしゃるかもしれません。その場合は、少しでも早く期限後申告をすることをおすすめします。自主的に期限後申告をした場合、無申告加算税の税率は5%に軽減されるのです。ご自身での確定申告が難しい場合は、税理士への相談をおすすめします。

 

まとめ

ホストの方がお店から手渡しで受け取った報酬は、税金が徴収されていないケースがほとんどです。そのため、ホストの方は1年間に手渡しで受け取った報酬の分を計算し、翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告をし、納税しなければなりません。確定申告をせず、納税の義務を怠っていた場合、税務調査で無申告であることを指摘されると、多額の追徴課税を課される恐れがあります。リスクを最小限に抑えるためにも、確定申告をしてこなかった場合は、税理士に相談しながら早急に自主的な期限後申告を行うことをおすすめします。


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