税務調査とは、納税の義務のある個人や法人に対し、正しく納税が行われているかを確認する、税務署による調査です。もちろん、キャバクラも売上があり、儲けを得ている以上、税務調査の対象となり得ます。キャバクラのオーナーの中には、他のキャバクラ店に税務調査が入ったというような噂を耳にした経験がある方も多いのではないでしょうか。
実は、キャバクラなどの水商売は税務調査の対象になりやすい業種なのです。では、税務調査が入った場合に備えて、どのような対策をしておくとよいのでしょうか。
今回は、キャバクラオーナーの方にぜひ知っていただきたいキャバクラの税務調査の特徴や指摘を受けやすいポイント、スムーズに税務調査を終えるための対策などについてご説明します。

 

キャバクラは税務調査の対象になりやすい業種

一定の所得のある法人や個人であれば、誰でも税務調査の対象になる可能性があります。しかし、税務署も数ある企業や個人の中から、ランダムに調査対象を選んでいるわけではありません。税務調査は、適正かつ公平に税金を徴収するために行われるものです。したがって正しく納税している納税者を調査しても、適切に納税していない納税者を正し、公平な税金の徴収を行うことはできません。そのため、税務署では不正が行われていることの多い業種や職種の税務調査に力を入れるケースが多いのです。
もちろん、全てのキャバクラ経営者が正しく確定申告を行っていないわけではありません。しかし、全体的な割合でみると、キャバクラを初めとした水商売を営む法人や個人事業主は、不正を行い、正しく納税を行っていないケースが多いのです。
そのため

不正を暴きやすいキャバクラやバー、ホストクラブなどの水商売のお店は、税務調査に選ばれるケースが多く
なっています。

 

税務調査の流れとキャバクラの税務調査の特徴

税務調査はどのような流れで実施されるのでしょうか。税務調査の一般的な流れをご紹介します。また、キャバクラのような飲食店の場合、通常の税務調査とは異なる流れで調査が進められるケースがあるため、キャバクラの税務調査の特徴についてもご説明します。

 

税務調査の2つの種類

税務調査は大きく分けると

「強制調査」と「任意調査」の2つ
に分けられます。強制調査とは、裁判所の令状を持った国税局査察部の調査官によって強制的に実施される調査です。いわゆる「マルサ」と呼ばれるもので、強制調査は、脱税の疑いが強い場合などに実施されます。一方、一般的に税務調査と呼ばれるものは、税務署の調査官によって行われる任意調査です。任意調査という名称ではあるものの、任意だからと言って納税者が調査を拒否することはできません。
悪質な不正が疑われる場合に実施される強制調査では、突然、査察官が現場を訪れ、調査が始められます。しかし、税務調査による任意調査の場合には原則として、調査を実施する前に税務署からの通知がなされます。

 

税務調査の流れ

一般的な税務調査の場合、電話で税務署から税務調査に入る旨の連絡が入ります。その際、税務調査の日時や調査対象期間、準備すべき帳簿類などの説明があり、業務の繁忙日などで日程の都合が悪い場合には調査日時を調整してもらうことも可能です。この連絡を事前通知と言います。
事前通知を受け、税務調査の日時が確定したら、指定された期間の帳簿などの書類を準備しておきます。調査当日、店舗や事務所などに調査官が訪れ、事業内容や経営状況などについての質問が行われます。また、各種帳簿などを確認しながら、不明点があれば質問がなされ、回答を求められます。
税務調査の調査期間は、一般的に2日程度です。税務調査には税理士の立ち会いが認められているため、税理士がいる場合には、難しい質問がなされたときでも税理士のサポートが受けられます。
調査終了後、調査結果が伝えられます。調査の結果、何も問題がなければ税務調査は終了です。一方、間違いや不正を指摘された場合は、指摘内容を受け入れて修正申告を行うか、更正処分を受けることとなります。

 

キャバクラの税務調査の2つの特徴

ここまでご紹介してきたのは、一般的な税務調査の流れです。キャバクラの場合には、通常とは違う方法で税務調査が行われるケースがあります。キャバクラの税務調査の特徴を2つご紹介しましょう。

 

事前通知なしで税務調査が行われる場合がある

税務調査では、原則として事前通知がなされ、予め決められた日時に調査官が現地を訪れて調査を行います。事前通知を行う理由は、突然税務調査を始めようとしても必要な書類がどこにあるのか分からず、効率よく調査を行えない可能性があるからです。
しかし、飲食店のように現金のやり取りが多い業種の場合、事前通知なしで税務調査が行われるケースがあります。銀行振込等で仕入代金を支払ったり、顧客から売上の入金を受けたりといった業種は、お金の流れを把握しやすいものです。しかし、現金をメインとした取引をしている業種では、入出金の証拠が残りにくいため、お金の流れを把握しにくくなります。そのため、事前通知をすると、証拠の隠滅や書類の改ざんなどが行われた場合、正しい売上額や経費の額などを掴みにくくなるのです。
したがって、キャバクラを初めとした飲食店の場合、事前通知なく調査官が店を訪れ、税務調査が開始される可能性があります。

 

覆面調査がなされるケースがある

覆面調査とは、調査官が客を装ってお店を訪れ、客の入り状況やメニューの価格、客単価、店の広さ、椅子の数などを調べ、どのぐらいの売上になっているのかを調べる調査です。覆面調査の際、客の入りや椅子の数、メニューの価格などを調べれば、1日の売上を予測することができます。覆面調査を行った際に確認したお店の営業状況とキャバクラ側が申告している申告書の売上内容を確認したときに、大きく金額が乖離していれば、売上を低く装っている可能性があるのです。また、税務調査当日には、調査官が飲食した日の売上が計上されているかどうかもチェックします。調査官が飲食をした記録が残されていなければ、売上を正しく計上していない証拠となるのです。

 

キャバクラの税務調査で指摘を受けやすいポイント

キャバクラの税務調査では、主に次のような点を指摘されるケースが多くなっています。

 

売上が正しく計上されているか

納税額は、お店の利益に応じて変わります。利益が低ければ納税額も低くなるため、売上を低く装い、納税額を抑えるという不正を行っているケースがあるのです。キャバクラなどでの飲食店では売上伝票を抜き、売上をなかったことにするといった不正が行われる場合もあります。
税務調査では、仕入の額などから売上のバランスをチェックし、申告されている売上が正しいかどうかを確認します。

 

経費を水増しして計上していないか

利益は、売上から経費を差し引くことで算出します。そのため、利益を少なく装うためには、売上を本来よりも低く申告する方法以外に、経費を本来よりも多く計上するという方法を用いるケースがあります。そのため、おしぼりなどの在庫と領収書などの額を確認したり、領収書が偽造されていないかなどのチェックが行われます。

 

人件費を水増ししていないか

人件費の水増しもキャバクラなどでよく行われている不正です。人件費も経費に充当できるため、支払う人件費が多い方が納税額は抑えられるのです。そのため、本来は支払っていない報酬を上乗せして支払っているように装ったり、架空の人物を採用したように見せかけて人件費を計上しているケースもあります。
税務調査では、スタッフの履歴書等も確認しながら、人件費が正しく支払われているのかチェックがなされる場合もあるのです。

 

キャバクラの税務調査をスムーズに終えるための対策

税務調査の対象になった場合、調査が長引けば、営業にも支障が出る恐れがあります。税務調査をスムーズに終えるためには次のような対策が有効です。

 

日頃から正しく経理処理を行う

税務調査は、正しく申告を行い、納税しているのかをチェックする調査です。そのため、ルールに則って帳簿を作成し、しっかりと申告を行っていれば、細かいミスを指摘される可能性はあっても大きな問題を指摘される可能性はありません。したがって日頃から正しく売上や経費を計上し、正しく申告を行うことが税務調査をスムーズに終えるために、何よりも大切なことになります。

 

税務調査の事前準備をしっかりする

事前通知を受け、税務調査が行われる場合、実地調査の日までに書類や帳簿などの準備をします。内容を確認しながらミスが見つかった場合には、自ら申告するとよいでしょう。隠蔽しようとした場合、より大きな不正を隠しているのではと疑いをもたれる可能性もあります。
また、想定される質問などについては回答を準備しておくとよいでしょう。

 

税理士に対応を依頼する

税理士は、税務調査の立ち会いが認められている税の専門家です。また、納税者に変わって納税者側の意見を述べることもできます。税務調査では、解釈の違いによって判断が分かれるケースがあります。そのような状況に陥った場合でも、税理士であれば、なぜそのような処理を行ったのか、税務の知識を活かし、主張することができるのです。
税務調査の経験が豊富な税理士の場合、調査の落としどころも把握しているため、調査官と納税者の双方が納得できる着地点を目指した交渉ができ、無駄に税務調査を長引かせることなく、終了させることも可能です。

税務調査に不安がある場合には、税理士に相談し、対応を依
することをおすすめします。

 

まとめ

キャバクラは税務調査の対象になりやすい業種です。なぜなら、キャバクラなどの飲食店や水商売の店では、売上の隠蔽や経費の水増し計上など、不正をしている店が少なくないのです。また、キャバクラの税務調査では、覆面調査が行われているケースもあります。税務調査をスムーズに終えるためには、日頃から売上や経費は正しく計上し、しっかりと納税・申告を行っておくことが大切です。
しかし、何らかの事情でこれまで正しく申告をしてこなかった場合などは、早めに税理士に相談することをおすすめします。ただし、税理士の中にも得意分野があるため、キャバクラの税務調査対応を依頼する際には、水商売の税務調査の立ち会い経験を豊富に持つ税理士を選ぶことが大切です。

 

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