ホステスとして働いていると、お客様からさまざまなプレゼントを受け取ることがあります。羽振りの良いお客様やよりホステスとの関係を良くしたいと思っているお客様からは、高額なプレゼントが贈られるケースもあるでしょう。お店から受け取る報酬には、所得税が課せられますが、お客様から受け取ったプレゼントにも贈与税が課せられる可能性があることをご存じでしょうか。
今回は、ホステスがお客様からもらうプレゼントと贈与税の関係についてご説明します。
贈与税とは
まずは贈与税とはどのような税金なのか、贈与税の概要から確認していきましょう。
贈与とは
個人が保有する財産を、他者に無償で与える行為を贈与といいます。贈与は、受け取る側が承諾しなければ成立しません。例えば、お客様がホステスに対し、高額な車をプレゼントすると申し出ても、車も運転しないし、駐車場もないから要らないと拒否すれば、贈与は成立しないのです。一方、お客様から高額なジュエリーのプレゼントを渡され、ホステスが受領した場合は承諾したとみなされ、贈与が成立したと考えられます。
贈与税とは
贈与税は、個人間で贈与された財産に対して課せられる税金です。贈与税を納めなければならない人は、贈与を受け取った人になります。前述した例で考えると、お客様からプレゼントを受け取ったホステスが贈与税の納税義務を負うこととなるのです。
贈与税の対象となるのは、個人から個人へ贈与された財産となるため、親から子に財産を贈与した場合はもちろん、血縁関係がなく、他者から贈与された場合も贈与税の対象となり得る可能性があります。
贈与税の対象となる金額
子どものときに、親や親せきなどからお年玉をもらった経験がある方も多いでしょう。では、お年玉も贈与税の対象となるのでしょうか?
子どもに贈られる常識の範囲内の額であれば、お年玉が贈与税の対象になることはありません。なぜなら国税庁では、贈与税がかからない場合として「個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物または見舞いなどのための金品で、社会通念上相当と認められるもの」と示しているからです。
また、贈与税の対象となるのは、1月1日~12月31日までの1年間に110万円を超える贈与を受けた場合です。110万円を超えた部分が課税対象となります。
プレゼントも贈与税の対象になる?
財産とはお金のことだけではありません。プレゼントも贈与の対象になります。したがって、年間、110万円を超えるプレゼントをお客様から受け取った場合、ホステスは贈与税の申告をしなければならないのです。
また、贈与税の対象金額は、プレゼントをしてくれた人ごとに計算するわけではありません。例えば、1年間に、Aさんから50万円相当のバッグをプレゼントされ、Bさんから80万円相当のジュエリーをプレゼントしてもらった場合、2人からプレゼントされた金品の合計額は130万円となります。年間110万円を超える贈与を受けた場合は贈与税の対象となるため、この場合、贈与税の申告をしなければならず、130万円から110万円をひいた20万円に対し、贈与税が課せられます。
ホステスが受け取ったプレゼントでも贈与税の対象にならない場合
ホステスがお客様から、年間110万円以上のプレゼントを受け取ったら、贈与税を支払わなければなりません。しかし、110万円以上の高額のジュエリーを受け取っても、贈与税の対象とならないケースがあります。それは、結婚の申し込みをされ、受諾した場合に受け取るエンゲージリングなどのプレゼントの場合です。エンゲージリングの場合、110万円以上の価値をもつものもありますが、前述のように社会通念上、相当と見られるお祝いの品であれば、贈与税の対象とはなりません。
プレゼントの贈与税の計算方法
ホステスが年間110万円を超えるプレゼントを受け取った場合、どのくらいの額の贈与税を納めなければならないのでしょうか。
贈与税の計算方法をご説明します。
贈与税の2つの税率について
贈与税の税率は、2つに区分されています。1つは「一般税率」と呼ばれるものです。一般税率は、父母や祖父母などの直系尊属以外から財産の贈与を受けた場合や贈与を受ける人が贈与を受ける年の1月1日において18歳未満である場合に適用される税率です。したがって、の方がお客様からプレゼントを受け取った場合、お客様とは血縁関係にないため、一般税率が適用されます。
贈与税のもう1つの税率が「特例税率」です。特例税率は、父母や祖父母などから財産の贈与を受け、かつ、贈与者が贈与の年の1月1日において18歳以上である場合に課せられる税率です。
贈与税の一般税率
贈与税の一般税率は次のように定められています。
また、贈与税は贈与を受けた財産の額が110万円を超えた場合に課せられると説明しましたが、これは贈与税の基礎控除額が110万円だからです。
ホステスの方がお客様から1年間で合計300万円のプレゼントをもらったと仮定し、贈与税の額を計算してみましょう。この場合、贈与税は次のように計算できます。
(300万円-110万円)×10%=190,000円となり、贈与税の額は、19万円です。
贈与税の申告方法
贈与税は、次のような手続きで申告します。
贈与税の申告期間
贈与税は、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までの間に、住んでいるエリアを管轄している税務署に申告します。
申告期限を過ぎるとペナルティが科せられるため注意が必要です。
贈与税の申告方法
贈与税の申告は、申告書の作成と提出をもって行います。贈与税の申告書は、税務署で入手できるほか、国税庁のウェブサイトからもダウンロードが可能です。また、マイナンバーカードがあればスマートフォンやパソコンからe-Taxで申告することもできます。
紙の書類を作成し、提出する場合には、税務署に持ち込むか郵送で提出をします。
確定申告と同時に贈与税の申告も
ホステスの方で、お店から給与という形ではなく報酬としてお金を受け取っている方は、確定申告をし、所得税を納税しなければなりません。確定申告も1月1日から12月31日までの1年間の所得を2月16日から3月15日までに最寄りの税務署に申告するものです。確定申告の期限と贈与税の申告期限はほぼ同じ時期に設定されているため、お客様から年間110万円以上のプレゼントを受け取った場合は、確定申告書と一緒に贈与税の申告書も作成するとよいでしょう。
ホステスがプレゼント分の贈与税の申告をしない場合のリスク
ホステスの方がお客様から年間110万円以上のプレゼントを受け取った場合、贈与税の納税が必要です。しかし、高額なプレゼントを受け取っているにもかかわらず、贈与税の申告をしていなかった場合はどのようなリスクがあるのでしょうか。
無申告加算税が課される
プレゼント分の贈与税を納めていなかった場合、無申告加算税が課されます。無申告加算税は、申告すべき事項を期限までに申告しなかった場合に課せられる税金です。
無申告加算税の税率は、50万円未満の部分については15%、50万円超300万円以下の部分については20%、300万円超の部分については30%となります。
先ほど、お客様から1年間で合計300万円のプレゼントをもらった場合の贈与税の額は19万円になるとご説明しました。この場合を例に考えると、もし、期限までに贈与税の申告をしなかった場合、無申告加算税15%が加算されるため、納税額は次のようになります。
190,000円×1.15=218,500円
期限内に申告していれば19万円だった贈与税の額は21万8,500円となり、28,500円も納税額が増えるのです。もちろん、より高額なプレゼントをもらっていたにも関わらず贈与税の申告をしていなかった場合には、さらに無申告加算税の税額は高くなります。
延滞税も加算される
贈与税の申告をしていないと、申告が遅れたことに対するペナルティとして延滞税の支払いも求められます。延滞税は納付期限の翌日から、納付される日までの日数に応じて課されるものです。令和6年の延滞税の税率は、納付期限の翌日から2ヶ月を経過するまでは年2.4%、それ以降については年8.7%となっています。
贈与税の申告と納付が完了するまで延滞税は加算され続けるため、贈与税の納税をせず、放置している時間が長くなればなるほど延滞税の額は高くなる点にも注意しなければなりません。
重加算税が課されるリスクも
さらに、高額のプレゼントを受け取っているにも関わらず、事実を隠蔽するような行為が見られる場合は脱税とみなされ、重加算税が課せられる場合もあります。重加算税の税率は、無申告の場合は40%とさらに高く設定されています。
高額なプレゼントを受け取っているホステスは税理士への相談を
お客様から年間110万円を超えるプレゼントを受け取っている場合、贈与税の課税対象となります。今年からホステスを始めた方や今年から高額なプレゼントを受け取り始めたという方は、来年の期限までに贈与税の申告を忘れずに行いましょう。
また、これまでにも高額なプレゼントをもらっていたものの贈与税の申告をしてこなかったというホステスの方は、税理士への相談をおすすめします。前述のように贈与税の申告をしていなかったことが税務調査で発覚すれば、本来納めるべき税額よりも高額の贈与税を納めなければなりません。また、長年にわたって贈与税の申告を怠っていたとなると、延滞税の額だけでもかなりの負担になるはずです。
税務調査が入る前に自主的に申告を行い、贈与税の納税を行えば、無申告加算税の税率は軽減されます。税務署では、公平な納税を目指し、さまざまな方向から正しく納税をしていない人や会社を見極めようとしています。高額なプレゼントを受け取っているホステスの方が税務調査の対象になっている事例も少なくありません。少しでもリスクを減らすためには、税理士に相談し、早めに申告をすることをおすすめします。
まとめ
年間110万円以上の贈与を受けた場合、贈与税の申告と納税が必要です。贈与税の対象はお金だけに限らないため、ホステスの方がお客様から受け取るプレゼントも年間の合計額が110万円を超えれば贈与税の対象になります。
贈与税の申告を怠っていた場合、無申告加算税や延滞税、重加算税などが課される恐れがあります。特に、数年にわたって贈与税の申告をしていなかったホステスの方などは、納税額が高額になる可能性があるため注意が必要です。
贈与税の申告方法等が分からない場合には税理士に相談し、できるだけ早く申告するようにしましょう。
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