これからガールズバーの開業を考えている方の中には、営業のためにどのような届出が必要になるのか、悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。昨今では、ガールズバーが風営法に違反したとして、経営者や従業者などが逮捕されるニュースも目にします。では、ガールズバーは風俗営業に該当するのでしょうか。

今回は、ガールズバーの開業時に必要な届出や風営法違反になってしまうケースなどについてご説明します。

 

ガールズバーとは

ガールズバーとは、バーテンダーを始め、女性を中心としたスタッフで構成されているショットバーのことです。女性はカウンターの中でお酒やおつまみを用意し、カウンター越しに接客をします。したがって、キャバクラなどのようにお客の横に女性が座り、接待行為をすることはありません。

 

ガールズバーとキャバクラの違い

ガールズバーと混同しやすい業態にキャバクラがあります。ガールズバーでは、女性はバーテンダーとして、カウンターの中からお客にお酒を提供しますが、キャバクラでは女性はお客の隣に座って、接客をします。したがって、ガールズバーよりもキャバクラの方が、お店で働く女性とお客の距離は近くなります。キャバクラのこのような接客行為は接待にあたり、キャバクラを営業する際には風俗営業許可を取らなければなりません。

風俗営業許可を取得すると、接待行為は認められますが、原則として深夜0時以降の営業は禁止されています。深夜にお酒を提供するためには深夜酒類営業開始届の提出が必要ですが、深夜酒類営業開始届を提出した場合には、接待行為を行えません

ガールズバーとキャバクラはいずれもお酒を提供するお店であるものの、接客スタイルや必要な届出、営業スタイルに違いがあるのです。

 

ガールズバーの営業に必要な届出とは

ガールズバーを営業するためには、次のような届出が必要になります。

 

飲食店営業許可

ガールズバーは、アルコールやおつまみなどの飲食物を提供するお店であり、飲食店としての営業許可申請が必要です。飲食店営業許可を取得すると、店舗で調理した食品のほか、深夜0時までアルコールの提供が可能になります。

 

食品衛生責任者

飲食店営業許可を申請する際には、食品衛生責任者の資格を証明する書類の提出が必要です。

食品衛生責任者は食品の衛生管理についての責任を負う人で、食品衛生責任者は次のいずれかの要件を満たさなければなりません。

・食品衛生監視員または食品衛生管理者の資格を持つ

・調理師、製菓衛生師、栄養士、船舶料理士の資格を持つ

・と畜場法第7条に規定する衛生管理責任者または作業衛生責任者

・食鳥処理衛生管理者

・都道府県知事等が行う講習会または都道府県知事等が適正と認める講習会を受講した人

各地の食品衛生協会では、食品衛生責任者の養成講習会を開催しており、必要な講習を修了すれば、食品衛生責任者の資格を得ることができます。

飲食店営業許可を申請する際には、食品衛生責任者の証明書を提出しなければならないため、飲食店営業許可の申請前に食品衛生責任者の資格の準備が必要です。

 

防火管理者

一定の大きさの建物で防火管理者が必要な建物に入るガールズバーの場合、テナントにも防火管理者の設置義務があります。防火管理者は消防庁や消防局の防火管理者講習会を修了すると付与される資格です。

防火管理者には、甲種防火管理者と乙種防火管理者の2つがあり、テナント部分の収容人員によって必要となる資格が変わります。スタッフとお客を含めた収容人数が30人以上の場合は甲種防火管理者、30人未満の場合は甲種または乙種防火管理者の資格が必要です。甲種と乙種では講習の時間にも違いがあり、甲種防火管理者の場合は2日間、乙種防火管理者の場合は1日、講習を受ける必要があります。

 

深夜酒類提供飲食店営業開始届

深夜酒類提供飲食店営業開始届とは、深夜0時以降にアルコールの提供をメインに行う飲食店を営業する場合に必要となる許可です。例えば、ファミリーレストランのように、食事の提供をメインに行っており、付随してアルコールの提供をするようなケースであれば、深夜営業であっても深夜酒類営業開始の許可は不要となるケースが一般的です。しかし、お酒の提供がメインとなるガールズバーであれば、深夜0時以降もアルコールの提供を続けるために、深夜酒類営業飲食店の届出を出しておいた方が良いでしょう。

深夜酒類提供飲食店営業開始届を提出すれば、深夜0時から午前6時まで、アルコールの提供が可能になります。

深夜酒類提供飲食店営業開始届は、公安委員会に提出する書類で、警察署が窓口になっているため、警察署に届出を行います。

 

風営法とは

風営法の正式名称は「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」です。風営法が対象とする風俗営業とは、性風俗関連の業種だけでなく、幅広い業種を指します。風営法の対象業種は、大きく分けて「風俗営業」と「性風俗関連特殊営業」の2つに分けられます。

 

風営法の風俗営業とは

ガールズバーのように、お酒を提供するお店の中には、風営法の対象業種となるものがあります。風営法が対象とする風俗営業の業種は、次のように分類できます。

 

【接待飲食等営業】

・1号営業 料理店、社交飲食店

キャバレー、待合、料理店、カフェ、その他、客の接待をし、遊興または飲食させる営業

・2号営業 低照度飲食店

喫茶店、バー、その他、客に飲食をさせる営業で照度を10ルクス以下として営業するもの

・3号営業 区画席飲食店

喫茶店、バー、その他、客に飲食をさせる営業で他から見通すことができず、広さが5㎡以下の客席を設ける営業

 

【遊技場営業】

・4号営業 マージャン店・パチンコ店等

客に射幸心をそそる恐れのある遊技をさせる営業

・5号営業 ゲームセンター等

スロットマシンやテレビゲームなど、射幸心をそそる恐れのある遊技に用いられる設備を備える営業

 

【深夜酒類提供飲食店営業】

また、バー、酒場などの深夜酒類提供飲食店営業も風営法の対象業種です。

 

風俗営業の許可が必要な業種と届出が必要な業種

上にご紹介した業種のうち、風俗営業に該当する1号営業化から5号営業までを営む場合には、公安委員会の許可が必要です。一方、深夜酒類提供飲食店営業を営む場合には、公安委員会への届出が必要となります。

一般的に許可とは、禁止されている行為を特定の場合に限って許す行為のことを指し、届出は特定の行為についてあらかじめ行政に通知することを指します。したがって、届出の場合は、条件を満たしていれば届出を出すことで問題が生じないものである一方で、許可が必要な業種の場合は、許可されない可能性もあるということを認識しておく必要があるでしょう。

 

ガールズバーが風営法違反になるケースとは

ガールズバーが風営法違反になってしまうケースには、いくつかのパターンがあります。主な違反のパターンをご紹介します。

 

接待行為が含まれている

カウンターの中からお酒を提供するだけのガールズバーであれば、風営法の許可は不要です。しかし、ガールズバーでも、お客の隣の席について話をするなどの接待に該当する行為をしている場合は、キャバクラと同様に風俗営業の1号営業に該当します。したがって、接待飲食をする場合は、風俗営業許可を取らなければなりません。

接待行為をするガールズバーであるにも関わらず、風俗営業許可を申請していない場合には、風営法違反となります。

 

深夜酒類提供飲食店営業の届出をしていない

深夜0時を過ぎて、アルコールの提供を中心とした営業をする場合には、深夜酒類提供飲食店営業の届出を出さなければなりません。深夜0時以降も営業を続けるガールズバーであるにもかかわらず、深夜酒類提供飲食店営業の届出を出していない場合は、風営法違反となります。

 

風俗営業許可を受けながら深夜営業をしている

接待行為を伴う業態として風俗営業許可を取得しているガールズバーは、深夜0時を超えて営業することはできません。風俗営業許可を取得しているにもかかわらず、深夜0時以降も営業する行為は、風営法の規定に違反しています。

 

18歳未満の女性に接待をさせている

風営法では18歳未満の者に接待をさせてはいけないと規定しています。したがって、風俗営業の許可を取っているガールズバーであっても、18歳未満の女性に接待をさせている場合は、風営法違反となります。

また、風営法だけでなく、労働基準法や児童福祉法などの法律にも違反する行為となるため注意が必要です。

 

風営法違反になった場合のリスク

2024年5月にも無許可でガールズバーを営業したとして、風営法違反の疑いで男3人が逮捕される事態が発生しています。3人は、風俗営業の許可を取得せずに、接待を伴うガールズバーの営業を行っていたとして、風営法違反の容疑で逮捕されたのです。

風俗営業許可を取得せずに営業した場合は2年以下の懲役、もしくは200万円以下の罰金、または両方の刑罰が科せられます。また、深夜酒類提供飲食店営業の届出を提出していなかった場合は、50万円の罰金が科せられます。18歳未満の従業員を接待させた場合は、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、または両方の刑罰が科せられることになります。

風俗営業許可を取得せずにガールズバーの営業をする場合には、接待を伴う営業を行わないよう徹底し、深夜0時を過ぎて営業をする場合には深夜酒類提供飲食店営業の届出を提出することを忘れないようにしましょう。

 

まとめ

ガールズバーは、女性バーテンダーがカウンターの中でお酒やおつまみを用意し、提供するスタイルの飲食店です。この場合は、風俗営業許可は不要です。しかし、お客の横に座って接客をしたり、カラオケを一緒に歌ったりといった接待行為を伴う場合は、風俗営業許可を取得しなければ風営法違反となってしまいます。また、深夜0時を過ぎてアルコールの提供を行う場合には、深夜酒類提供飲食店営業の届出を出さなければなりません。

風営法に違反した場合、罰金や懲役が科せられる恐れもあります。ガールズバーを運営する際には、接客のスタイルなどを徹底し、風営法違反とならないよう、業態に合わせた営業を行うことが大切です。

 

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